第3話:【DIY】魔法より効く!? 廃材で作る「二重窓」と「断熱壁」
ゼノは管理画面を閉じ、ふぅとため息をつきました。
(……サチ、なのか? いや、もしそうだったとしても、今の俺は異世界の5歳児だ。いきなり『パパだぞ』なんて言っても、気味悪がられるか、なりすましだと思われるのが関の山だ。それに……)
画面の向こうで元気に生きてくれているのなら、まずはそれでいい。今の俺にできるのは、この場所をまともな「現場」にして、その生き様を見せることだけだ。
「よし、身バレは厳禁だ。あくまで俺は『謎のハイテク5歳児・ゼノ』で通すぞ」
翌朝。ゼノが着手したのは、孤児院の**「冬支度(断熱リフォーム)」**でした。
孤児院の夜は冷え込みます。石造りの壁は熱を逃がし、隙間風が子供たちの体力を奪っていました。
「おい、diy_daisuki。見てるか。今日の現場は『防寒対策』だ。この世界の石壁、キンキンに冷えてやがるんだが、安上がりな断熱材のアイデアはねえか?」
ライブ配信を開始すると、すぐに例の常連たちが集まってきました。
@diy_daisuki:「待ってました監督! 断熱なら、空気の層を作るのが一番だよ」 @eco_life:「段ボールがあれば最強だけど、なさそうだね……。羊毛とか、乾燥させた麦わらを壁に貼って、その上から布を被せるのは?」
「麦わらか、悪くねえ。……おい、お前ら! 倉庫に眠ってる古いムシロと、畑から出た枯れ草を集めてこい!」
ゼノの指揮で、孤児たちがキビキビと動き出します。 ゼノはMEtubeで**『【極寒地】サバイバル・ハウスの断熱術』**を視聴しながら、子供たちに指示を出しました。
1. 隙間塞ぎ: 窓枠の隙間に、油を染み込ませたボロ布を詰め込む。
2. 空気層の作成: 壁から少し離して木枠を組み、そこに乾燥させた草を詰め込んだ「断熱パネル」を設置する。
3. 二重窓もどき: 窓に透き通った「魔物の皮(安物)」を二重に張り、空気のクッションを作る。
作業の合間、またあのIDがコメントを書き込みます。
@sachi_papa_love:「その、指先でトントンって叩いて音を確認する癖……私の知ってる人にそっくりです。監督さんは、どこでその技術を習ったんですか?」
ゼノの指がピクリと止まります。
「……あー、これは、その。俺の故郷の、頑固なじいさんに叩き込まれたんだよ。道具は音で聴けってな。……よし、無駄口叩いてねえで、次の角、ツラ合わせろ!」
わざとぶっきらぼうに返し、核心を避けるゼノ。
劇的! ビ○ォーアフター
夕方。作業が終わると、部屋の中の温度は明らかに変わっていました。
「暖かい……! 監督、風が来ないよ!」 「これなら、夜に震えなくて済むね!」
子供たちが歓声を上げる中、院長先生が驚いた顔で部屋に入ってきました。 「ゼノ……あなた、本当に何をしたの? 魔法の火も焚いていないのに、どうしてこんなに温かいの?」
「院長先生、これは『工学』ですよ。熱を逃がさず、外気を入れない。基本です」
@nandemo_miru:「5歳児が『工学ですよ』は草」 @guest_k:「現場監督、今日もいい仕事したな。投げ銭で『高性能タッカー(針打ち機)』代、送るわ!」
《チャリーン! 500ポイント獲得しました》
「おし、資材ゲットだ。これで次は『床下暖房』の設計に入るぞ。……おい、diy_daisuki! 煙突の排気効率について相談がある!」
ゼノは画面の向こうの「顧問」たちと熱い議論を交わしながら、着々と孤児院を最強の要塞(現場)へと作り変えていきます。 自分の正体を隠しながらも、時折見せる「パパの癖」が、サチの心を揺さぶっていることには気づかない振りをしながら。
「……さて、定時だ。全員、道具の手入れをして解散! ご安全に!」




