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■ 偽善者
不治の病に苦しむ僕は、安楽死を模索した。だが日本では法律が許さない。かといって、海外で実行するお金もない。また、安楽死に反対の団体もあの手この手で僕を止めたし、ネットでも多くの励ましを受けた。
しかし、それで苦痛が収まるわけではない。
そんなある日、何度目かの絶望に打ちひしがれている僕の前に、一人の悪魔が現れる。
「命の総数は決まっているので、あなたを直に助ける事は出来ません。でも……」
と、彼は囁いた。
僕は、悪魔と契約する。
それは、
「病を誰かに移動する事が出来る。だが、相手の同意が必要」
というものだった。
僕は事情を話し、安楽死反対団体をはじめ世界中に呼びかける。しかし、応じる者は誰一人としていなかった。
今、僕は自らを死へといざなうボタンに指をかけている。窮状を見かねた人が、密かに装置を用意してくれたのだ。秘密の場所からネットで中継もしているが、それを止める者は誰一人としていない。
「偽善者たちめ」
それが、僕の遺言となった。




