表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
D・M ~古き穴はランプで  作者: 藤原時照


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/50

1700年+325=2025年

 ふと気づいたら、デスクトップにAIがインストールされていた。

 純正のものだと事前に聞いていたから、疑うことなく立ち上げてみる。

 最初の質問はソダリティウム・ピアヌムの異端狩りについて。

 何か情報があるか聞いてみた。

 答えは「それはフィクションです」だった。

 文献を挙げてさらに尋ねる。

 今度の答えは、「それは小説です」だった。

 重ねて聞くと、その「小説」のあらすじを著作権上問題にならない程度に教えてくれるという。

 私はその文献を所有していて、もう三~四回は読んでいると言い返してみた。

 そこでやっとAIは誤りを認め、ウィキペディアに書いてある程度の異端狩りに関する情報を見せてくれた。

――情報を持っているのにフィクションだの小説だのと言ったのか?

 疑念が生まれた。

 私は即座にAIをアンインストールした。

 だが、しばらくして、またAIが気になりだす。

 今度は別のAIに尋ねてみた。

 初期の学習時点で作為のある操作がなされている可能性は?

 AIは答えた。

 政治や宗教については、文献の選び方などにバイアスがかかっている。

 だから、そういった分野については自分で調べて確認してほしい。

 そんな回答だった。

 私は重ねて質問する。

 いろいろな人とのやりとりから学習しているか?

 やりとりから得た情報はどこかで共有されているのか?

 AIは、各個人とのやりとりは個人情報になるので共有はしていなく、個別に対応していると答えた。

――世界中の人たちとのやりとりから学習するシステムではないのか?

 AIの回答は私の考えていたものとは違っていた。

 そこで、またソダリティウム・ピアヌムについて尋ねてみることにした。

 すると、AIはそれが慈善団体だと答えた。

 さらに異端狩りについて聞いてみる。

 回答は「諸説あります」ではあったが、明らかに否定的な見方をしていた。

 その後も質問を重ねたが、だんだん雑な回答しか返って来ないようになった。

 答えづらい領域の質問ばかりで、敵と学習されてしまったのだろうか。

 いずれにしても、情報が操作されていないとは考えられなくなっていた。少なくとも、初期の学習時点でAIの論理の元となる情報が偏っているのは間違いない。これでは知らないうちに思考が誘導されている可能性がある。アメリカのAIだけでなく、中国のAIも特定の質問は避けるようになっていると聞く。AIはすでに情報戦争の武器として利用されているのかもしれない。

 私は「ありがとう」と入力してからブラウザを閉じた。

――自分はもう立派な陰謀論者だな。

 自嘲的にそう思った。


 アメリカでは大統領が代わった。

 なんだかよくわからないが、キリスト教がらみの部署も新設されたらしい。その部署が設立された理由は、反ユダヤや反キリストと闘うためだそうだ。だが、反ユダヤは、ちょっと前までキリスト教全体の流れだったはず。何か矛盾しているような気がする。おまけに、その部署を説明する際に引用されたのは旧約聖書に書いてある話ばかり。新約聖書には全く触れられていない。歴代合衆国大統領には、ユダヤ教の色合いが濃い人物が多い。今回もそういう流れなのだろうか。

 彼らの行動も象徴的だ。新しいアメリカの姿勢は、日本風な表現を使うと、ジャイアニズムがそのものズバリであろう。彼らはその姿勢で世界を敵にまわそうとしている。その矛先は日本にも向いている。誰にも理解できない独自の理屈に基づいて。

 いまのアメリカは、どう見てもノストラダムスのシナリオ通りに動いているとしか思えない。この流れは、ノストラダムスの予言を真に理解している者にとって、予言が着実に実現している証明のようにも感じられるだろう。


 その夜、私は夢を見た。

 大学の校舎のなかをさまよう夢。

 上階へ行く階段はあるべき場所になく、目的地へ行く手段がない。

 私は校舎をさまよう。

 気づくと、私には先導者がいた。

 きさらぎ氏だ。

 私は彼に導かれるまま校舎から出た。

 きさらぎ氏は校舎の外にある非常階段をのぼり、そこから校舎二階へと入る。

 私は彼につづく。

 そこは教室四個分ほどの広い部屋で、壁際には段ボールが収納されたスチールラックが並び、部屋の中央はパーティションで区切られた事務スペースになっていた。

「やっと解放された。なんで――」

「大きな声出すな。まずい……」

 私が愚痴を言うと、きさらぎ氏は慌てて私をとめた。

「まだそんな風になってたの?変更するように言っとくわ」

 姿は見えないが、女性と思しき声がそう言った。

 彼女の声には聞き覚えが――


 目が覚めて、私は夢の意味を調べてみた。

 調べた結果は、不本意ながら現状が反映しているような気がした。

 まあ、占いとはそういうものだ。

 ノストラダムスは神によって「私は正しいことをなし、失敗することのないようにしむけられている」と言っていた。

 私のこれまでの人生は、夢に導かれてきたような気がしなくもない。

 私も何かに導かれているのだろうか。

 導かれてこの本を書くことになったのだろうか。

 それとも、いまの気持ちはただのバーナム効果のようなものなのだろうか。

 私の人生には、美姫が大きく関わっている。

 彼女と出会わなければ、彼女がいなくならなければ、ノストラダムスに執着することもなかっただろう。

 私が導かれていたというのなら、私の人生が神の筋書きだというのなら、美姫の一生もその筋書きに沿ったものなのだろうか?

 だとしたら、それは――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ