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D・M ~古き穴はランプで  作者: 藤原時照


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32/50

ラメンタビリ

712: まおん

 最近人が少ないねー

713: ザビエ

 ホントにね

714: 平次

 まあ、しかたないよ。

 いろいろあったし。

715: まおん

 うちは身内に警察官が何人もいるし

 少林寺拳法やってたし

 トラブルどんとこいなんだけど

716: ザビエ

 私のところもそれなりに伝手があるし

 対処できるって自信はあるよ

717: 平次

 自分もきさらぎさんやキョウさんほどじゃないけど

 ある程度はいけるかな。

718: まおん

 ということで

 みんな待ってるよ

719: きさらぎ

 そんなに期待されたら出てこないわけにもいかないな。

720: キョウ

 うん、いかないな。

 で、真打登場?

721: 鶴千代

 はい。

 ご紹介にあずかりました真打です。

722: まおん

 ん?

 だれ?

723: 平次

 あー、幼名っていうやつですね。

724: きさらぎ

 道灌さん、はずしたね。

725: 道灌

 じゃ、もどす。

726: ザビエ

 おかえりなさい

727: 道灌

 ザビエちゃん、やさしい。



 まおん氏の発案で、襲撃が起こり難くなるように残りのメンバーも面倒な相手だとアピールしておこう、ということになった。それでこんなコントのような真似をしていたわけだ。ちなみに、ここまではほぼ事前の打ち合わせ通りだ。鶴千代を除いて。

 その上で――

 


728: 道灌

 こいつらが東南アジア出張中にずっとあとをつけて来た二人。

 墜落した飛行機の搭乗手続きの時だけいなかった。

 だから身の危険を感じて搭乗をとりやめた。



 道灌氏は写真を投稿した。

 搭乗前に撮影した二枚の写真。墜落しなかった二便に搭乗する前の写真だ。

 そこには、サングラスをかけた白人が二人写っていた。

 この日の書き込みは、またまとめサイトに転載された。

 写真とともに。

 そして、こちらの目論見通り、まとめサイトで反応があった。


『この人たち知ってる。横浜の教会で見た。写真撮ってるのにうろちょろしてすっごい邪魔だったんだよ』


 そこには、そのとき撮った写真へのリンクも貼られていた。

 写っていたのは茶色の教会。

 その前にいる二人の白人。

 間違いなく道灌氏の写真と同じ人物だ。

 その教会は少し古ぼけた感じだが、一見してペンションのようにも見える。それは山手西洋館エリアにあるような教会らしい教会ではない。教会だと言われてもわからないようなごく普通の建物だ。

 門にはアメリカと日本の小さな国旗が掲げられている。国旗を掲揚するのは政治色が強いことの表れだと思うが、自国の国旗を掲揚するだけで抗議が来る日本という国にはそぐわないように思う。

 私はその写真をデスクトップに保存して調べてみた。

 写真のプロパティで詳細タブをチェックする。

 すると、そこにはGPS欄があり、緯度経度が表示されていた。

 ほかの個人データもそのままになっている。

 投稿者は自分が目をつけられる可能性を考えていないようだ。

 とりあえず、私はまとめサイトの掲示板で個人情報が流出している旨を警告した。

 それを見たのか、投稿者はすぐに投稿を削除した。

 投稿削除を確認してから私は教会の調査を始める。

 まずは地図アプリに緯度経度を入力。

 だが、そこには何も表示されていなかった。

 ストリートビューに切り替えて映像で見る。

 すると、そこには写真どおりの茶色い教会があった。

 だが、ちょうどいい位置の画像を見ることができない。ストリートビューにはステップがあり、真正面はステップの中間になっていた。試行錯誤の末、辛うじて塀にはめ込まれているプレートが写し出せた。解像度のせいで小さな文字は判別できないが、一部だけはなんとか読むことができる。


 LAMENTABILI


 どこか聞き覚えのある単語。

 それをウィキペディアで検索してみる。

 

『Lamentabili sane exitu ("with truly lamentable results") is a 1907 syllabus, prepared by the Roman Inquisition and confirmed by Pope Pius X, which condemns what it deems to be errors in the exegesis of Holy Scripture and in the history and interpretation of dogma. 

(ローマ異端審問所が1907年に作成し、教皇ピウス10世が承認した教義書で、聖書の解釈と教義の歴史および解釈における誤りと思われるものを非難している。)』


 これは懐古館でも話題になったことがある。

 二十世紀の異端狩りだ。

 ピオ十世、英語読みでピウス十世と言われる法王によるもの。

 秘密結社の名はソダリティウム・ピアヌム。

 懐古館で話題になったあと、私はザビエ氏おすすめの本を買った。

 その本の中に詳しく書かれている。

 彼はしきりに大戦争を予言した。

 そして戦争を拒絶した。

「戦争や戦争を欲する人を祝福することはできない」 

 これは彼の言葉だ。

 第一次大戦をはじめるまえ、オーストリア軍への祝福を求められたときのものだ。

 ここで気になるのは予言。

 彼には超能力でもあったのだろうか。

 それともノストラダムスの予言もしくはそれに類するものを解読したのか。

 私はさらにピオ十世/ピウス十世を調べる。

 日本ではあまり知られていない人物なので、ネットで拾った記事は、だいたいが英語のものだった。

 長丁場になりそうだ。私は英文を読むのが面倒になり、翻訳ツールに任せることにした。訳があやしいときだけ原文を読めばいい。

 調べ始めて数分後、私は、彼がアメリカに多大な影響を与えていることを知った。

 

『1908年、ピウス十世はアメリカ教会の成長を認めて、アメリカを宣教師の地位から解放した。教皇在任中にアメリカに十五の新しい教区が設立され、教皇は二人のアメリカ人枢機卿を任命した。彼はアメリカのカトリック教徒の間で非常に人気があり、神によって教皇の座につけられた貧しい家庭の平凡な男性として描かれることが多かった。』


 これがウィキペディア英語版の”Pope Pius X”に書かれていた記事だ。ちなみに、なぜかこの記事は日本語版からは検索できないし、リンクも貼られていない。

 この記事を読み進めると、彼の行った治療に関する記事が見つかった。それは超能力治療と言っても良いものだった。麻痺を治した事例は何件もみつけられた。ほかにも、少女の傷を消した事例、不自由な足を治した事例など、いろいろな情報があった。もっとも、こうしたことがフィクションだという見解もある。

 しかし、こうした聖人としての行いと異端狩りは結び付かない気がする。その裏に何かあるのだろうか。それは彼がピオの名を継いだことと関係があるのだろうか。

 先代のピオ、ピオ九世を調べてみる。彼が法王を務めたのは十九世紀。彼についての印象はあまりよろしくない。彼は極端な反ユダヤで知られている。そしてもうひとつ。彼はユダヤ人の家族から男児を誘拐して手元に置いていた。どう考えてもまともではない。そんな人物の名をなぜ継ごうと思ったのだろうか。

 ピオ九世は教会の教えに関するシラブスを公布した。それをもう一歩進めたのがピオ十世のラメンタビリだ。ピオ十世は個人的には反ユダヤでなかったそうだが、周囲が反ユダヤであったため反ユダヤ的態度をとっていたようだ。彼は政治と宗教を完全に一体化させていたと言われている。政治の世界というものはドロドロしたもの。周辺の動きに合わせざるを得ないこともあったはずだ。その流れで、秘密結社ソダリティウム・ピアヌムは政治色の強い動きもしていたのだろう。あの教会に日米の国旗が掲げられていたのはその表れなのかもしれない。


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