反キリスト
『アドリア海で大いなる不和があり、結合されたものがはなたれたために、ヨーロッパのパンポタンとメソポタミアを包含して1945年に、他の物は41、42、47年に起こるでありましょう。そして、これらの年に、国々は地獄の力でイエスキリストの教会に対抗して立ち上がるのであります。これは第二の反キリストであり、王たちの力によって、教会とまことの教皇を苦しめ、無知な気違いの手にある剣以上の鋭い口調で迷わすことになるのであります。
反キリストの統治は長くは続かず、せいぜいその時代に生まれた人が生きている間で、(中略)そしてしばらくたってから、罪が誇張されるために潔白な人の血が無駄に流され、それで大洪水が起こって、物事の記録も流されるような大損害が北側に発生いたします。かくて神的意思によってサタンはもう一度しばられ、普遍的平和があり、イエスキリストの教会はすべての苦難から自由になるのであります。』
アンリ二世への手紙
これは予言詩ではないから、年数に325を足す必要はない。41年は真珠湾攻撃、42年はホロコースト、47年はCIA発足の年だ。ちなみに、47ではなく37になっている版もあるが、そちらの版では「degree」が挿入され、年ではなく緯度の話にすり替わっている。だが、その緯度では何も特定できない。緯度になっている予言詩は完全に的外れだ。
ただ、よくわからないこともある。「パンポタン」なる記述だ。この言葉は四行詩の方にも使われている。
大帝国はイギリスに
パンポタンはもう300年以上も
軍は陸と海を通りすぎ
ルシテインはそれに満足せず
諸世紀第十章100
大帝国はアメリカを指すものと解釈できる。キリスト教は300年でローマ帝国を征服したと言われる。四行詩前半は、イギリスとアメリカの立場が逆転し、イギリスがアメリカから強く影響を受けるようになると解釈できる。パンポタンについては特定せずとも解釈には差し支えなさそうだ。
後半のルシテインは、ルシタニアから派生した言葉。ルシタニアは古代ローマの属州で、イギリスにとってのアメリカ。前半と同じくアメリカがイギリスに対して影響力をふるっていることを指していると言えそうだ。そして、「満足せず」とつづくわけだから、アメリカの欲望が肥大化していくことを表している。
そして、もうひとつ、イギリスがアメリカの影響下にあることを示す四行詩がある。アメリカに取り込まれてイギリスが反キリストに堕するという予言だ。
ロンドンの市長はアメリカの規則で
スコットランドの島は霜でやわらぎ
王と司祭はあやまった反キリスト者になる
かれらは調和せずに
諸世紀第十章66
ちなみに、この予言詩の時代にアメリカ大陸は発見されていたが、アメリカ合衆国は存在していない。原文はAmerichだ。
もしも国際的に大きな影響力があるアメリカとイギリスが反キリストだと名指しされたたら?ノストラダムスの予言が真実であったら大きなマイナスになる。だから改竄、歪曲、隠蔽の方向に進むしかない。ここで異邦人が必要になるわけだ。
「おろかな批判家にささげる詩」にあるように、第三者的な立場で予言を主観抜きに読み解く人が必要なのだ。そして、日本がその役割を果たす。
20年もの月の統治が過ぎて
他のものが7000年に王国を築くだろう
太陽が記された日々をつかんだとき
すべては満たされて私の予言も終わるのだ
諸世紀第一章48
アンリ二世への手紙にある「まことの教皇」という書き方は、当時の教皇が偽物で、どこかに正統な教皇がいる、というように解釈できる。アメリカが第二なら、その偽物が第一の反キリストなのだろう。最終的に、「イエスキリストの教会はすべての苦難から自由になる」というのだから、彼の予言に隠されたキリスト教の真実が世に示されて、人々が本当のキリスト教に目を向けるようになる。これが予言詩に仕込まれた筋書きなのだ。
それを裏付けるように、つぎのような予言詩もある。
寺々は聖別され初期のローマへの道は
ぐらついた土台をしりぞけ
はじめの人間の方を取り
一部の聖人崇拝をしりぞけるだろう
諸世紀第二章8
「ぐらついた土台」は現在のキリスト教。現代では、キリストの教えが都合よく改変されており、古い信仰を原始キリスト教などと言って区別する。その「原始」が「はじめの」に相当するのだろう。
この「はじめ」との境界が325年のニカイア公会議である。つまり、ノストラダムスの予言にある年数は、世界が誤った方向に進みはじめてからのカウント数なのだ。さらに考えると、「はじめの人間の方」は正統と見なされなかった方。こちらが正しいキリスト教なのだ。これが予言に仕込まれたノストラダムスの意思。彼の言いたかったことは古い時代のキリスト教に回帰せよ、ということなのだろう。




