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D・M ~古き穴はランプで  作者: 藤原時照


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29/50

ノストラダムス

 ノストラダムスの予言ははずれた。

 1999年に。

 世の人々はそう認識している。

 はずれた占いに価値などない。大方の人たちはもう興味を失っているはず。それにもかかわらず、昨今、古本市場での諸世紀の価格相場は大きく変動しているし、出物も少なくなっている。何かがはじまっているのかもしれない。そんなことを考えながら、私は諸世紀を読み進める。

 私が手に入れた版には原文と和訳のほかに研究者数人の注釈が載っている。なかには鋭いと感心するような解釈もあるが、多くは見当違いのように思える。つまるところ、自分で読み解き自分で判断するしかないという結論になる。しかし、それはなかなか面倒だ。後半の予言がずっと前のページの予言詩に関わっていることもあるから、何度も何度も読み返さないと理解することはできない。

 すでにわかっていることは――

 年表示には325を足す。

 鷲はアメリカ、鶏はフランス、月は中国、ライオンはイギリス、太陽は日本。

 月はすべてが中国ではなく、いくつかの詩では、天体としての月、あるいは人ならざる超越者を指しているようにも思える。

 火星や金星が気になるが、いまところ何を指しているのかわからない。

 新たに気になったのは――

 年表記については、1700年(2025年)が複数、そして703年(2028年)が一件あり、このあたりに何か重要なイベントがありそうだということ。


  20年もの月の統治が過ぎて

  他のものが7000年に王国を築くだろう

  太陽が記された日々をつかんだとき

  すべては満たされて私の予言も終わるのだ

  これらのことがなされるずっとまえに

  月の力で 東で何かが起こるだろう

  それは1700年のことで 大群衆が持ちさられ

  全北半球のほとんどを征服するだろう

               諸世紀第一章48―49


  第三の情勢が白羊宮に含まれ

  1700年10月27日に

  ペルシア王はエジプト王にとらえられ

  戦いと死と欠乏がありキリスト教徒への大侮辱があるだろう

               諸世紀第三章77


  多かれ少なかれ570年ころに

  妙な年代で

  703年には天のしるしがあって

  多くの大国は変わるだろう

               諸世紀第六章2


 近い未来についての予言はこの三つ。

 一つ目の詩は八行分。

「太陽が記された日々をつかんだとき」というのは、日本人がノストラダムスの予言を解明する、という意味になる。それは同時に、傲慢な考えだと言われそうだが、日本人以外は自力で正解にたどりつくことができない、と解釈することもできる。

 日本人が予言を解明した結果、はじめてノストラダムスの予言が示す未来が来る。詩の後半は2025年のことで、アジアで何かが起きて北半球が支配される。月が20年ほど支配しているそうだが、現状を鑑みるにコロナのことを言っているのでなければ月は中国ではなさそうだ。

 軍事面で考えると、中国に北半球の国々を長期間に渡って支配する力はない。中国に限らず、特定の国がそれをなし得るようには思えない。支配力だけで考えるなら、月とは天体の月で、我々一般人が知らないうちに宇宙からの介入があったと考える方がまだあり得そうだ。あるいは、経済的なことや文化的なことなのだろうか。レアメタルなどの資源を盾に経済を支配する?だが、類似するほかの予言の様子から、人の生き死にに関わる話に思える。

 7000年は創造論がらみの話だろう。創造論については諸説あるが、六千年期が終わって、現代は新たな千年期に入ったと考えられる。その新たな千年期が7000年と表現されているのだ。

 二つ目の詩はどうなのだろう。ペルシアといえばイラン。イスラム圏だ。それがエジプトに捕らえられてキリスト教の侮辱になる――

 エジプトの隣には、ノストラダムスの時代にはなかったイスラエルがある。そのイスラエルをエジプトと誤認している可能性は?もしそうだとすれば、これはイスラム勢力とイスラエルの戦争の後、そこではキリスト的な展開があると解釈できそうだ。

 三つ目の詩は全くわからない。570年は1895年。世界的なイベントと言えば日清戦争終結くらい。中国が関わるのだから、最初の詩の月が中国であると考え直すべきなのだろうか。703年は2028年。大国が変わる事件が起きる。そして天のしるし。

 ノストラダムスは息子への手紙などで隠喩のないあらすじを示している。そちらにも同じ事柄の記述があるから、両者を比較すれば得られるものがあるかもしれない。


『世界的な大火災がおこる前に、大洪水がおこるであろう。それによって水におおわれない国は少ないだろう。このことは長くつづくだろう。(中略)数世紀にわたる洪水の前後は雨にとぼしくなり、火災がひんぱんになり、焼けた石が天から落ち、焼き尽くされずに残るものはないであろう。これらすべてのことは「大火災」のほんの少し前におこるであろう。(中略)いま我々は、全能なる神の力の周期によって巡りくる月に支配されていて、それが終わるとき、次は太陽に、その次は土星に支配されるのだ。天のしるしに従って、土星の統治はふたたび到来し、すべてが回転し、世界は矛盾のない変革に近づくであろう。』

            息子シーザー・ノストラダムスへあてた手紙


 たしかにいま、大規模な山火事、噴火、洪水などの災害が世界中で起きている。それと同時に、欧米では移民との軋轢が急増して対立が深まっている。その状態は予言にも記されており、「帝国は黒い国民に変わり」とある。帝国とはもちろん彼の国フランスだ。


  世界は終末に近づいて

  サタンはなかなかあともどりをせず

  帝国は黒い国民に変わり

  ナルボンヌは彼の目をえぐりとるだろう

               諸世紀第三章92


 そして、世界中で深刻な災害が発生したあと日本に注目が集まる。


  気味悪くトランペットが鳴り響くだろう

  大衆はばらばらに頭と顔を天に向け

  血まみれの口は、血の中でもがいている

  顔は乳や蜜で聖別された太陽に向けるだろう

               諸世紀第一章57


 

 移民受け入れやLGBT問題など、さまざまな主義主張が世界で対立を生んでいる。戦争も起きている。そして、それらの影響の少ない日本に目を向ける人も増えている。そのおかげか、日本文化は世界に広まり、日本国内はオーバーツーリスムでひどいことになっている。この詩はいまの世界情勢を明確に表していると言えそうだ。


  太陽の法と金星はきそい

  予言の霊を使い

  どちらも聞かれることなく

  大いなるメシアの法は太陽によって残存するだろう

               諸世紀第五章53


 この詩はよくわからない。しかし、世界から失われた何かを日本が守り抜くようだ。

 ここでも日本。これらの詩を読んでいると、ノストラダムスが日本にいる我々に呼び掛けているように思えてくる。

 書かれているのは「大いなるメシアの法」、「残存」だから、日本式のやりかたで、ノストラダムスが予言の中に隠した本当のキリスト教を世に示してくれということだろうか。世界で人気の日本のもの――漫画かアニメにでもするのだろうか?


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