1.穏やかな日常は突然に
「おはよう!フリージア!今日も眩しいね」
「サンデローニさん!おはようございます!いつものですね。少々お待ちください!」
「フリージアの顔を見ると膝の痛みも吹っ飛ぶよ」
フリージアの家は王都の小さな町医者の娘だ。父は元々王宮に仕える騎士だったが、怪我を機に引退し、医術の道を極め今は王都で細々と町医者をしている。母はフリージアの幼い頃に他界しており、男で一人でフリージアを育ててくれた父に恩返しをしたいとフリージアも医者の免許を取るため、日夜勉強中だ。
フリージアは屈強な父の身体能力と絶世の美女と噂された母の見た目を受け継いでおり、
小さな頃から何かあった時に自分を守れるようにと父に鍛えられ、腕っぷしではそこらの近衛騎士にも負けない。
しかし、月の光をそのまま閉じ込めたような白銀の髪と潤んだようにキラキラと光って見えるエメラルドグリーンの瞳、加護欲をそそられる童顔の容姿に小さなピンク色の唇の容姿のせいでトラブルは数え切れないほどだった。
サンデロー二さんに薬を渡し、父が診察した患者さんの薬の調合や手当を行っているといつの間にかお昼になっていた。
「ジア。もうそろそろお昼だ。今日は父さん、この後王宮へ騎士隊長殿に呼び出されていてね。
店を閉めるから、友人とでも遊んでゆっくりしてきなさい。」
「あら、ラージルおじ様がお父様を王宮に呼び出すなんて珍しいわね。いつもはうちまで来てくださるのに。」
「何やら最近起きてる失踪事件について緊急会議があるらしく、父さんの意見も聞きたいとのことらしい。」
「そうなのね。早くその失踪事件が解決するといいのだけど。」
ラージル騎士隊長は第一騎士団から第五騎士団が存在する騎士団の総隊長をしており、父はその右腕として副隊長をしていたこともあり、こうして騎士団関連で王宮に呼び出されることがたまにあった。
父さんが出かけていくのを見送ってから、フリージアは幼馴染であり、食堂の娘のサーシャの元を訪ねた。
食堂に来るたびに元気いっぱいに駆け寄ってきてくれるサーシャの姿が見えない。
カウンターに座り、水を持ってきたサーシャの母にサーシャはどこかと訪ねてみると、どうやら彼氏に振られて塞ぎ込んでるとのことだった。サーシャのことだから振られた瞬間に診療所に突撃してきそうなものだが、今回はそのような元気もないくらい落ち込んでるらしい。
サーシャのクズを引き寄せる体質もどうにかしないと思いつつ、許可を得て母屋のサーシャの部屋にいくと
そこには目の下に真っ黒な隈を作り、やつれたサーシャがベッドの上に座っていた。
「サーシャ?こんなにやつれてしまって何があったの?ラウおばさんから彼に振られたって聞いたわ。今回はどんなひどい振られ方をしたのよ。」
「ジア・・・・わた、し、私どうしたらいいのか・・・・」
「今日は診療所が休みなの。いくらでも聞くから私に何があったか話して?」
「私ね・・・ベンのこと大好きだった・・・二人でどんな家庭を気付きたいとか、住むならどんな家を建てるとかそんな話をしてたの。でも、私が彼が近衛騎士なこともあって、女性の護衛の任務が多いことに怒って喧嘩してしまって・・・その日以来彼と連絡が取れないの・・・」
枯れ果てるぐらい泣いたはずのサーシャはわんわんとフリージアに縋りついた。
「そんなことがあったのね・・・彼も仕事だからしょうがないと思うけど、サーシャのこと本気で嫌いになったわけじゃないんじゃない?彼の家には行ってみたの?」
「大家さんに聞いたら、しばらく帰っていないって・・・」
そこでフリージアは今朝父が言っていたことを思い出す
(そういえば、最近王都で失踪事件が起きてるって言ってたわね。まさかとは思うけど父さんにも相談してみた方がいいかも・・・)
「わかったわ、サーシャ。唯一の大事な幼馴染のことなんだもの私も彼を探してみるわ!」
「ジア・・・ありがどおおううう!!!」