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おはなしでてこい

出版済「おはなしでてこい」その1 タケちゃんとうさぎさん

作者: 空色の雀

過去に文芸社様より出版済の作品です。

タケちゃんは5才の男の子です。日曜日の朝、ご飯を食べ終わってやることを思いつかなくて、ゴロゴロしていました。お父さんは、今日はお仕事に行ってしまいました。


「あーあ、つまんない。」


タケちゃん、思わず大声で言ってしまいました。

するとお母さんが、


「お掃除したいから、下の公園であそんできたら?昼ごはんができたら、そこのベランダから『ご飯できたよー』って、呼んであげるから。」


と言いました。そこでタケちゃんは、おうちのそばにある公園で遊ぶことにしました。


タケちゃんの住んでいる3階建てのアパートのすぐそばに公園はありました。大きなクスノキが真ん中にあって、木から少し離れたところに水飲み場があります。公園の入り口近くには砂場があります。ちょっと離れて、すべり台とブランコとシーソーがあります。


(ジャングルジムがあると、もっと楽しいのに。)


と、タケちゃんはいつも思っています。

公園の入り口外側には金木犀が二本、まるで門のように立っています。そしてその花が良いにおいをさせています。周りの花壇には今は鶏頭の花が風でゆらゆら揺れています。入り口から一番遠い所に芝生が生えているところとベンチとがあります。


公園の周りは、タケちゃんのアパートのほかにも二階建てや平屋の普通のおうちがたくさんと、狭いけど車の通る道路と、線路と遮断機がみえます。


ちょっと狭い公園です。一番外側をぐるっと歩いても、タケちゃんの足でも3分かかりません。


「マサアキくんたちと、鬼ごっこでもしようかな?」


と楽しみに公園に行ってみると、今日はマサアキ君の姿が見えません。それどころか、ブランコ大好きなツトムくんや、いつもすべり台をすべってばかりいるユリちゃんも、いません。

今日は公園には誰一人来ていません。


「来るのがちょっと早かったかな?」


と、タケちゃんはひとりごとを言いました。


「そうだ!もうすぐ熊本のばあちゃんがお手伝いに来るから、きなこだんごのれんしゅうしようかな」


あと何日かすると、弟か妹かわからないけれど赤ちゃんがうまれるので、お手伝いのためにおばあちゃんがはるばるやってくるのです。タケちゃんの大好きなおやつ、きなこだんご。一緒に作れたらたのしいなあ。と、泥でだんごを作っている時、


「急がないと、電車に遅れる~!」


と、言う声が聞こえました。

タケちゃんが声のする方を見てみると、なんと、タケちゃんと同じくらいの大きさのウサギさんが、探偵みたいな服を着て茶色っぽい帽子をかぶって、靴まで履いて走って来ていました。

とっても慌てていて、今にも転びそうです。このウサギさん、白くて長い耳が垂れていて、白っぽいけど顔と手は薄い茶色で、目は黒です。


(どうしたんだろう?)


と思ってタケちゃんがじーっと目を凝らして見ていると、そのウサギさんは、タケちゃんの所へ寄って来て、


「早くしないと、遅れるでしょ」


と、手を引っぱります。


(えっ?)


と、タケちゃんは、びっくりして、目がテンになりました。わけも解らず手を引っぱられて、すぐ近くの鉄道の遮断機の前まできました。頭の中は?マークでいっぱいです。


カーンカーンカーン…


遮断機が下りてきます。


「ああ良かった間に合った。」


と、ウサギさんはほっとした顔をしました。


(なーんだ、ウサギさんは僕と一緒に電車を見たかったのか。)


と、タケちゃんはそう思って、ポンっと両手を打ちました。

そして、電車大好きなタケちゃんはどんな電車が来るのかなと、ドキドキワクワクしました。

目はらんらんと光っています。


そのとき、今までに見たこともない電車がやってきました。

よくよく見ると、なんだかウサギさんの形のような…?


タケちゃんが、じーっと電車を見てみると、あれれ??運転手がウサギさん。

タケちゃん大混乱です。頭の中の?マークがますます増えていきます。


電車は、タケちゃんの立っている遮断機のそばでキキキ~~と大きな音を立てて止まってしまいました。  プシューと音がして、ドアが開きました。


「大変お待たせいたしました。ラビット号の到着でございます。足元に十分お気をつけてご乗車願います。」


と、アナウンスが流れます。タケちゃんがあっけにとられてると、


「さあさっ、早く乗ろう。」


ウサギさんが、乗り込みました。タケちゃんもつい、つられて乗ってしまいました。

席に座ると、電車のドアがプシュ~と閉まり、間もなく発車しました。

タケちゃんが、ふと辺りを見回すと、タケちゃんのほかの乗客は皆ウサギさんです。

ウサギさんたちは、立派なスーツを着てシルクハットを被ったり、他のウサギさんは赤いドレスや、ピン

クのひらひらしたドレスを着ておしゃれをしています。タケちゃんは、ついキョロキョロと見回してしまいました。


「僕、うーたんって言うんだ。どうぞ、よろしく。」


一緒に乗ってきたウサギさんは、そう言ってぺこりと頭を下げました。


「ぼく、タケちゃん。よろしく。」


タケちゃんも、ぺこりとお辞儀をしました。


「今日はね、月に行く日なんだよ。この電車に乗らないと行けないんだよ。」


と、うーたんが言いました。


(へー月まで行くのか。すごいや。)


と、タケちゃんが思って感心した顔をしていると、


「皆さま、おくつろぎの所、大変失礼いたします。只今より乗車券を拝見に伺います。」


と、これまたウサギさんの車掌さんがやって来て、お客さんの切符に、パチン、パチン、と、鋏を入れ始めました。


「ぼく、きっぷ、ない。」


タケちゃんは慌てて、真っ赤な顔になっていると、


「大丈夫だよタケちゃん。ズボンのポケットをさがしてごらん。」


うーたんが言いました。


「ポケット?」


タケちゃんが首をかしげながらポケットを探すと、ちゃんと【月の駅行き】と書かれた切符が出てきました。でも、この切符、タケちゃんがさっきおやつに食べたミルク味の飴の紙と同じ模様…。タケちゃんはとっても不思議に思いました。

ともかく、これを車掌さんに見せると、


「はい、ありがとうございます。」


そう言って、パチンと切符に(はさみ)を入れてくれました。

そして、車掌さんはあたりを見回しながら、


「皆さま、この電車は間もなく空へと浮かびます。  たいへん危険ですのでシートベルトをお締めください。」


そう言ってうやうやしくお辞儀をしてから、隣の車両へいってしまいました。

タケちゃんとうーたんと、ほかのお客さんも、しっかりとベルトを締めて、行儀よく座っていると、ガタンガタン、と、大きく電車が揺れて、フワッ…!と空に浮かびました。タケちゃんは思わず、


「うわっ!」


って、言っていっちゃいました。

電車がだんだんと上へ上へあがっていくと、線路が遠くなります。公園も、自動車学校も、団地も。街がだんだん離れていきます。


「あっ、ぼくのおうちだ。おかあさんが洗濯物干してる。」


タケちゃんが指さしました。


「へぇ~、あそこがタケちゃんのおうちなんだね。」


と、うーたんがいうと、


「うーたん、今度遊びに来てください。熊本のばあちゃんが、きな粉だんご作ってくれます。」


と、タケちゃんが誘います。


「本当?僕、きっと行くよ!」


うーたんはとってもうれしそうに頷きました。

もっと、どんどん街が小さくなって、日本列島が見えてきました。


「テレビ見てるみたい。」


タケちゃんが言いました。


「本当だね。」


うーたんも頷きました。

それもまた小さく小さく小さ~~くなって、地球全体が見えてきました。


「宝石みたいだね。」


うーたんが言うと、


「うん、と~ってもキレイだね。」


タケちゃんが頷きました。


「皆さま~。間もなく月、月でございま~す。」


アナウンスが流れました。しばらくゴトゴトと電車は揺れて少しして止まりました。


「月の駅~月の駅~でございます。長らくのご乗車誠にお疲れさまでした。お足元に気をつけてお忘れ物

の無いようにお願いします。」


と、またアナウンスがありました。ウサギのお客さん達はみんな、シートベルトを外してそれぞれに降りてゆきます。


「これからどこに行くの?」


タケちゃんは、自分もシートベルトを外しながら、うーたんに聞きました。


「広場だよ。1ヶ月に1回、お祭りがあるんだ。」


うーたんは、そう答えてくれました。心なしかちょっとほこらしげです。


「さっ、急ごう‼」


うーたんは、タケちゃんの手を取ると、その手をしっかりと掴んで、ピョ~~ンピョ~~ンピョ~~ンと、広場へむかいました。タケちゃんもそれに合わせてピョ~~ンピョ~~ンピョ~ンと、進みます。


広場に着くと、もうそこにはたくさんのウサギさん達が着飾って集まっていました。タケちゃんは、こんなにたくさんのウサギさんがいる所を見たことがなかったのでとても驚きましたが、みんながとてもかっこいいスーツや素敵なドレスを着て、とても楽しそうにしているところをみていて、だんだん楽しくなってきました。


びっくりドキドキ顔から、ルンルン顔になってきたその時、


パンパンパン…


爆竹が鳴り、続いて盛大なファンファーレが高らかに、


パンパカパーン!パパパ パンパカパーンパパパパーン!!!


と鳴り響くと、もう紙吹雪が大変なことになっちゃって、前が見えないくらいキラキラしたものが舞い散っている中、燕尾服とシルクハットと丸いフチなしの眼鏡をした、ちょっと偉そうなウサギさんが、中央の大きなステージに立ちました。


「あのひと、だーれ?」


タケちゃんが不思議に思って尋ねると、


「大統領だよ。」


と、うーたんが答えてくれました。タケちゃんが


「へ~っ」


と感心して、目をくりくりさせました。


大統領は、手を振ってみんなに挨拶をしました。それから


「えへん、」


と一つ咳払いをしてから、マイクの前に立ちました。周りが静かになりました。


「えー、皆さん、お楽しみのお祭りの日がやってまいりました。この後いろいろ催し物もたくさんあるわ

けですが、今日は特別に、お客様をお迎えして共に楽しもう。と、言うわけでございます。ではタケちゃん。どうぞこちらへ。」


「えっ??」


タケちゃんは急に名前を呼ばれたのでとてもびっくりしました。目がテンになりました。


「さあ、こっち。」


うーたんが、優しく手を引いて、ステージに連れて行ってくれました。タケちゃん、緊張して転びそうですが、なんとか転ばずに歩けました。



タケちゃんがステージの大統領の前まで進むと、またファンファーレが高らかに


パンパカパーン。パパパ、パパパ、パンパカパーン。パパパパーン~~!!


と、空高く鳴り響きました。


「今回は、タケちゃんのお誕生日のお祝いと、もうすぐ赤ちゃんが生まれてお兄ちゃんになるお祝いをしたいと思います。」


そう、大統領が言い終えると、かわいい黄色のフリフリドレスの子やピンク色のすらっとしたスーツ姿の女の子のウサギさん達がタケちゃんにキレイで両手では抱えきれないくらいの花束と、大きくてキレイで美味しそうな5段重ねのニンジンのバースデーケーキを持ってきて、ニンジン大好きなタケちゃんにプレゼントしました。ろうそくもきれいです。タケちゃんは大喜びです。みんなでハッピーバースデーをオーケストラの伴奏で豪華に歌いました。


タケちゃんがろうそくの火をフーツと吹き消すと大きな拍手が沸きました。

うーたんがタケちゃんの耳元で言います。


「タケちゃんごあいさつをどうぞ。」


タケちゃんは顔を真っ赤にしながらも、堂々とそして、ニコニコと、マイクの前に立つと拍手は止みました。


「みなさん、ありがとうございます。このケーキは、このあとみなさんといっしょに食べたいです。そし

て、こんどぼくのおうちに来てください。いっしょにきな粉ダンゴ食べましょう。」


と、堂々とあいさつしました。

皆、拍手喝さいです。ピーピーと、指笛を鳴らすものもいます。


大きな花火がたくさんたくさん上がりました。


祭りの夜はこれからです。


おしまい




今創作作業がだいぶ滞っているので、ふるいのを引っ張り出して載せました。お楽しみください。

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