溜息の理由(3)
鬱屈
それが最近の俺の気分
トモと付き合いながら、ある程度楽しみ
その一方で、アキに対しての気になる感が募っていく、そんな感じ
アキのことは、本気で好きというほどではない
ただ、気になる
気になるし、やっぱり楽しい
それは、トモと一緒にいるのとでは少し違う感じ
何て言うかこう...浮遊感のある楽しさなのだ
これは、トモとでは味わえない
トモと一緒にいることでの楽しみは、トモに呆れたり苦笑いしたりする中で、ふとした時に見せるトモの可愛さ
いつもじゃない時々の楽しみ
そんな時のトモは...ホント可愛いと思っている
だからこそ、俺は迷っているんだ
今、もし俺がアキに告白したとして、上手くいく可能性は高くない
でも、ないわけじゃないはずだ
だから、トモと別れる、というのも一つの方法だとは思う
しかし、トモと別れるというのは...
別れる...と言うのは
「はぁ...」
何だかんだ言って、トモには愛着というかその...好きだって感情はある
これは、正直捨て難い
「はぁぁ...」
何やってんだかな、俺
「タカ?どうかした?」
「え?」
突然の声に間抜けな声を出してしまう俺
そんな俺の前にいたのは...
「あ、アキか...」
「...何驚いてんの?」
「ち、ちげぇよ」
驚いてしまったのを悟られまいとぶっきらぼうに言う
今日は、トモとアキそれと俺の友達のカズとの四人で映画を見た
種類はアクション
話題作ってことでちょっと期待していたのだが、内容は微妙って感じだった
最近のアクション映画には当たりがない
ま、とにかく今は小休止ってことでマックに行くことになった
そんで、俺がみんなの注文を受けていたのだ
「で?何か用なのか?」
「ううん、別に」
「え?」
ふとしたことで心拍数が急上昇
「あんた持って来んの遅いからよ」
そして急降下
今日の俺、何かおかしい
「...仕方ないだろ?混んでるし、出来上がるの待ってたんだから」
「そ。だったら出来たらすぐ持ってきなさいよ?席は二階の窓側だから」
「何だよ。一緒に持っていってくれないわけ?」
「何言ってんの?当たり前じゃない。それはタカの仕事でしょ?」
「...そ~すね」
可能性
かなり薄いのかも
なんて弱気になんてなっていられない場面がすぐにやってきた
「タカ?」
「ナ、ナニ?」
「何って...それこっちのセリフ。あんたこそ、さっきから何黙ってんの?」
「いや、そんなことないって。ハハハ...」
「いや、あるから言ってんだけど...」
「何でもないから気にすんなって...」
二人きりだ
何とも都合よく二人きりになるチャンスが訪れたのだ
休憩の後
この後どうするかってことから、カズの案でアミューズメントパークに行くことになった
室内で、ちょい大きめの体感型ゲームがある場所だ
そこで幾らか遊んだ後で、唐突にこの時間がやってきた
当初は乗り気じゃなかったが、こんな状況になってくれるとは、もうカズに感謝だ
そのカズは、例のごとくと言うか何と言うか、一人で勝手に適当にアトラクションに並びに行ってる
ある意味、すごい奴だと思った
トモはトモで例のキッツい微妙メイクを直しに...
どっちもそれなりに時間がかかるはずだから、少なくとも10分以上の時間は見込めるだろう
時間的には、長い時間では無いがで短くもない
このチャンスに...俺の気持ちを
気持ちを...
気持ち...
...ちょっと急ぎすぎだろうか
さっきも思ったけど、可能性はよく見ても内角低め...
低め...なんだよなぁ
どうしよっかな
ふと横目にアキを見る
(うわっ)
何か暇そう
つか、つまらなそう
これはまずい
こうなれば、兎にも角にも話題だ
話題を振って、脳ミソをフル回転して、上手い具合にそういった展開に持っていくのだ
そうと決まれば、えっと~...いつもはトモの話をすることが多かったから
「な、なぁ、今日のトモのメイク、どう思う?」
「え?何よまたそんな話持ち出して」
ありゃ?唐突だったか?
「いやさ、あのメイク、実際きついだろ?そう思わん?」
「そりゃね。肌の白と口紅の赤がコントラスト過ぎてどう見ても変だし」
「だろ?その点、アキは綺麗だよな」
「...はぁ?あんた何言ってんの?」
俺の言葉にあからさまに怪訝な顔をするアキ
まずった!?
「いや、メイクがな?」
「............」
アキは興味を無くしたようにそっぽを向いてしまった
ドツボ!?
「あ、いや、つまりさ。トモにもアキみたいな綺麗なメイクを教えってやってくんないかってこと」
「イヤよ。メイクなんて本人のしたいようにするもんだもの。それに、本気で教わりたいならちゃんとした人に教わった方がいいわ」
「あ、いや。そういうもんなのかもしんないけど...」
まずい
まず過ぎる
話題を盛り上げるどころか、盛り下がった以上に厳しい状態に...
いつもならこんなことないのに、何で今日に限って二言三言言葉を交わしただけで...
俺の脳ミソ何てこんなもん?
「ふぅ...タカ?」
「え?あ、何?」
名誉挽回のチャンス!
今度は間抜けなことは言わないぞ!
「何だ?どうした?」
「私もメイク直してくるから、他の二人が先に戻ってきたらテキト~に遊んでて?」
「え゛」
「じゃね」
「あ゛、ああ...ハハハっ」
俺のことなんかほっといて、アキはとっとと行ってしまった
「............」
気のせいだろうか
俺とアキの相性が悪い気がするのは...
「はぁ」
一人で勝手にテンションダウンしてる俺
あの後も、アキとは口も聞けず仕舞い
いいとこゼロ
で、そのままお開きとなった
結局、俺の気持ちは伝えられず、アキの気持ちも昨日までのまんま
はぁぁ...俺って一体...
「タカ、今日は一日中どうしたの?」
「ふぇ?」
思わず、気の抜けすぎた返事が出てしまった
「...タカ」
そんな俺を不安げに見つめてくるトモ
「あ、ごめん」
その視線に居心地の悪さを感じる
何て言うか、自己嫌悪だ...
さすがに、幾らなんでも、気づいたかな?
「...タカ、さ」
きた
「もしかして...疲れてる?」
ツカレテル?
「え?」
どういう意味だ?
突かれてる?
付かれてる?
漬かれてる?
憑かれてる?
...って、何考えてんだ俺
本当に疲れてんのか?
「いや?別に大丈夫だって」
「............」
「ホントだって。トモの気にすることじゃないからさ」
「............」
「俺、23だぜ?んな簡単に疲れるわけねって」
「............」
うっ
視線が痛い
別に疲れているか否かについて嘘をついているつもりは無いが、気持ちには嘘をついているかもしれない
しかし、トモは、本当に疲れているかどうかを心配しているのだ
トモみたく、ここまで、本当に疑うことを知らないと、かなり精神的にキツいものがある
ああ、自己嫌悪が増してく...
「タカ」
「は、はい?」
「今日さ...タカの家、泊まってっていい?」
「い゛?」
「ね?」
「あ...ああ...」
そんなこんなで、まぁ、何と言うか...
そんな展開になった訳で
これ以上は、お話するのは何なわけで
世には据え膳食わねば、なんて言葉もあるわけでありまして
俺だって別に、トモを嫌っている訳でもないのは否定できなくもないわけでして
その手のことに、どうしようもなく抵抗力のないのも、健康な男の子の証明なわけでありまして
はははっ...まぁ何と言うか...ははは...はは......はぁぁぁ...
「なぁ、トモ?」
「ん?なぁに?」
狭いベッドの中のすぐ隣からの声
俺はトモのことを見ずに言った
「ごめんな...」
「へ?何が?」
「いや...別に。何となくだ」
どうも俺は
「ヘンなタカ」
変化ってのが
「うっせ」
苦手のようです
「タ~カ~!!」
「あ゛あ゛あ゛......」
俺はつい眉間を抑えてしまう
この頭痛は、もはや持病か何かなのでないでしょうか
それとも、目の錯覚か何かなのでしょうか?
俺としては、後者を望んでいます
「ごめん...寝坊しちゃったんだ...」
「そ、そうか」
もうそれはどうでもいいっす
それより今日の、その、今日はアンタ、どこ行く気なの的なカッコは...
「あ、気づいちゃった?」
いや気づくも何も...
「へへへ~、カワイイでしょ?」
カワイイ?
「あぁ...いや...何と言うか...」
確かに、カワイイという表現が別宇宙的には適性である可能性を認められないとは言えないかもしれないと、思うのは個人の自由であることを否定できなくはないとは思ったり思わなかったりしなくもないような...
「どうかな?友達に薦められたんだけど」
「友達...に?」
どんなお友達ですかソレ
てか、薦められて着るようなものなんですか?
今俺は、モーレツに叫びたい
どうすれば友達に...こんな...こんな...
『ゴシックロリータ』なカッコをすすめるっつ~んですか―――――――っ!!!
んでもって
『ゴスロリ』を平然と着こなすあんたは何者なんですか―――――――――っ!!!!!!
心で絶叫しつつ、先日のアキとの電話の会話を思い出す
「タカみたいにね?本質ジミ~~~~...な、奴には、ああいったちょっとズレた子がお似合いなのよ。絶対に」
その言葉が、アキの軽口であって欲しいと真摯に思います
はぁぁぁ...
やっぱ俺、色々とミスっていませんか?