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隣のルームメイト(2)

低い声が携帯の中から聞こえる


私は慌てて携帯をとった


「アキ?聞いてる?」


「あ、うん。聞いてる聞いてる」


聞いてないよ?


悪い?


リモコン探しててそれどこじゃなかったのよ


「ホントか~?なんか上の空っぽかったぞ?」


電話の声の主はタカ


さっき電話かかってきて色々と話をしてたのだ


主な内容は、トモとのデートについて


私としてはホントどうでもいいのだけど、聞かせようとしてくるんだから聞くしかないでしょ?


ちょっと、いや...かなり面倒だけど...


「ありがとな?やっぱお台場で正解だった」


「でしょ?私の忠告は素直に聞いとくもんなのよ」


「だな。やっぱ誘う前、アキに聞いといてよかったわ」


「感謝なさい?できれば物でね」


「はははっ。ああ、考えとくよ」


タカも、こうしてよく私に相談してくる


内容は主にトモのことだ


デートの場所


トモへのプレゼントは何か


今、トモが自分のことをどう思ってるのか


その他色々だ


こう考えると、トモとタカは実にお似合いだ


この二人の優柔不断さは、見ててイライラするほどに気が合っていると思う


タカにして見れば、トモのことなら私に聞くのがいい。という考えもあるのだろうけど...


「で...聞いた?今度みんなで遊ばないか?って話」


「うん、トモから聞いてる。今度の土曜でしょ?」


「そうそう。時間は空いてた?」


「空いてた事は空いてたけど...どうしようっかな~」


「え?何かあんの?」


「ほら、タカの友達の人。私ああいうタイプの人苦手なんだよね~。自分の話し始めたら周りが興味ないのに問答無用で勝手に喋るでしょ?」


「ああ...確かにそんなとこあるかもな」


「でしょ?」


「......じゃあ、来ないのか?」


「それを迷ってるとこ」


「でも、土曜は暇なんだろ?遊ぼうぜ一緒に」


「そうね~...」


「............」


心なしか、タカが固唾を飲み込んでいるような気がした


(あ、期待してるよこの人。おもしろ~い)


「ま、いっか」


「そっか?よかった。なら土曜な」


「うん、了解」


楽しそうなタカを心の中で面白がりつつ、その後、適当な話をして電話を切った


「ふふふ...もてる女はつらいよね~」


携帯を置きながら、誰とは無しにそう呟いた


言っちゃ悪いけど、私はトモよりも可愛いと思う


これは決して自分を過大評価しているわけじゃない


客観的に見た紛れも無い真実だ(ちょっとナルシスト入ってる?)


それに何より、性格も明るくて面倒見もいい


決断力もあるからリーダーシップも取れる(つか、周りに取れる人いなさ過ぎ)


だからだろう


タカは、私を意識してしまっているのは


「って、あ゛」


ふと気づくと、時間はすでに11時過ぎになっていた


まずい


レポートが終わらない








タカとはトモに紹介されて始めて会った


見た目、今時の若者(自分もだが)


でも顔は地味目


多分、いい加減な奴


それが私のタカに対する第一印象


その印象は今も変わっていない


ま、そんなこんなで、私、トモ、タカの三人はよく一緒に遊ぶようになった


でも普通、彼氏彼女の二人に混じって一緒に遊ぶなんて事そうそうないと思う


少なくとも私は二人っきりの方がいい(普通そうでしょ?)


でも、トモはあの通り自己主張の弱い子だから私と一緒だと安心するとのことだ


私としては、それは直したほうがいいと思う


じゃないときっと将来苦労するに違いないからだ


それに、トモは物事を楽観的に考えているとこがある


就職に関してもテキト~なとこがあった


大手にしか勤めたくないというトモは、名前の聞かない中小企業になんて見向きもしなかったのだ


悪いとは言わないが、考えが甘いと思う


現に、今彼女には内定が出ていない(あ、ちなみに私は大手の化粧品会社から内定もらってる)


それに挙句の果ては、専門学校行ってファッション関係の勉強するとの結論に至っていた


その考えは変わらないらしい


でも、トモに厳しいと言われるアパレル業界で生きていけるとは到底思えない


いや、その前に専門学校だけで諦める可能性すらある


トモはそういう子だ


トモの親は本気でかわいそうだと思う


ま、私には関係ないんだけど


とまぁ、トモがそんな子だからなのか、そうじゃないのか...


タカは私の事が気になっているらしい(仕方ないよね?)


タカ自身はそれを隠せていると思っているようだが、分からない私じゃない


...というより、分からない方がおかしい


最近、やけに電話の回数が多くなってるし


話す内容もトモじゃなくて私のことを聞き出そうとしてくるし


この前から何度か、意図的なワン切りで、私から電話をかけさせようとさえ企てていた(ストーキング入ってるよね?)


ま、私からは絶対に電話をかけないけどね(当然!)


それに最近は、流石にあのトモでさえ、その事に気づき始めている


遅すぎだよ!とツッコミたくもなるが、そこはトモ


あのぼややんとした夢見がちな子に、シビアな現実は理解しにくいものらしい


タカの浮気?についての相談?も今まで多々あったが、その時も『タカってアキといる時の方が楽しそう...』って程度の物だった


タカのことを疑うっていう考えが全くないらしい


トモってホントにおバカさん


そんなおバカさんの面倒を、これ以上なく見てあげてる私って、ホントいい子よね








ずぞ~


ものが少ない部屋の中に濁った低い音が響く


カップ麺を食べる音だ


でも、それは私の出してる音じゃない


私はカップ麺なんてほとんど食べない


では誰か


カイの奴だ


カイが、今、私の目の前で何も気にすることなくカップ麺を食べているのだ


簡単に言うと、そのカイってのは高校の時の同級生だ


愛想が悪くて


言葉少なめで


人付き合いも嫌い


顔は悪くないけど


服とか見た目はあんまり派手じゃない


つか地味


ま、大学の学費を奨学金を利用して自分で払っているのだから仕方ない面はあるのだけど(それでも服装はどうにかしろ!)


そんな、日々をバイトでしのいで暮らしている貧乏学生だ


ちなみにここは、カイが一人暮らしをしているアパートだったりする


かと言って、別に付き合っているってワケじゃない


普通から見れば妙な関係だと思う


ずぞ~


また麺をすする音が響いた


カイはいつもの仏頂面で黙々とカップ麺を食べている


私の話なんて聞いちゃいませんって感じだ


ムカつく


この私がせっかく友達とその彼氏(要はトモとタカ)のおもしろ話を聞かせてあげてるのに


ま、いつも私が一方的に話してることが多いのだけど...


「ふぅ...」


と、カイがカップ麺を食べ終わる


見ると、空のカップの中には汁さえ残っていなかった


何だか憐れみを覚えてしまう


「で?お前の友達は、男がお前に電話かけてくること知ってんの?」


「まさか、誤解されたくないもん」


「...じゃ、お前はその男をどう思ってんだ?」


「あ、もしかして気になる?」


「いや全然」


「...あ、そ」


ホントにカイって愛想ない


「別に何とも思ってないわよ?タカはトモの彼氏だし、私自身、タカに全く興味ないし」


「ふ~ん。でもさ、その男にコクられたらどうすんの?」


「そりゃ断るに決まってるじゃん。好きでもない人と付き合いたくないもん」


「なるほど。お前らしいな」


「当たり前じゃない。私はこれでも友達想いなやっさし~女の子なんだから」


「............」


「あ、何よその疑ってるみたいな顔は~」


「だって、お前ってその二人の仲を『操って』遊んでんだろ?それのどこが友達想いなんだか」


「仕方ないでしょ?二人とも私に相談してくるんだから。その時にどうすればいいか教えてあげないとやっぱ悪いじゃない」


「...操るってとこを否定しないのな、お前」


「いいじゃない。私の言葉が二人をいい方向に誘導してやって、私はそんな二人を見てるの楽しいんだから」


「うわ、ひっで~奴。悪女だなお前」


「はははっ♪そうかもね」


「笑うとこかよそこ...はぁ、何で俺、お前みたいなの好きになった事あったんだろ?不思議だ」


「それは、ほら。私って可愛いし、明るいし」


「でも、実は魔性の女」


「おほほほほっ。魅力的でしょ?」


「はぁ...」


カイは「アホらしい」と言いながら立ち上がった


「ん?どうしたの?」


「腹減った」


「今食べたばっかじゃん」


「あれだけで足りるかよ...お前、どうせまだ食べてないんだろ?何か喰う?」


「あ、うん♪いるいる」


「じゃ、何がいい?」


「パスタがいいな~」


「やだよ。俺、今麺食ったばっか」


「え~、いいじゃない別に~」


「チャーハンだ。決定な」


「何それ。最初から決まってるなら聞かないでよ」


「うっさい。今からパスタなんて作れるか。時間かかりすぎ。チャーハンの方が安いし早いし簡単」


「この面倒臭がり~。それ直したほうがいいよ?」


「知るか」


そう言っても、カイは私が来る時はこうして何かを用意してくれる


それに、カイはバイト先で厨房に入ってるから料理も上手い


今日出されたチャーハンもやっぱり美味しかった


それを素直に言うと


「そ」


カイはそれだけ言ってやっぱり黙々と食べていた


ホントに反応が少なくてつまんない

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