勝負の行方(3)
「ふ~ん。で?あの子がこの前言ってた新人の子なわけか」
「...ああ」
アパートへの帰り道
何の因果か、同じアパ-トなもんだから道筋は一緒
いっそ引っ越してしまおうか
「うわヒドっ!何その気の無い返事。態度違い過ぎない!」
「それもう止めろ」
「ひっど~い。ひっど~い。スケベ~。ヘンタ~イ!スケコマシ~!」
「そこでそれ言うのマジ危ねぇから」
「ははは~っ」
「笑って誤魔化すな」
「ははっ。う~ん、でもさ。ホントかわいい子だったね。カイが惚れちゃうのも分かるよ」
「はいはいはい」
「...本当に酷い。キミはもっと愛想よくしなよね?」
「余計なお世話だ...ん?お前それ何持ってんだ?」
アキの持っているビニル袋を指差す
「あ、これ?ちょっとビールが足りなくなっててね」
そう言って、ビール数本とおつまみの入ったビニル袋を掲げた
「駅前のコンビニで買ったの。そしたら何かヘンなバカップルみたいのがいてさ。ついからかってみたくなった、ってわけ」
「誰がバカップルだ!」
「いいじゃない。そう見えたんだから」
「よくねぇよ。第一まどかちゃんとは付き合ってもいないんだし」
「あ、まどかちゃんって言うんだ。かわいい名前だね。何年生?見た目は高校生っぽかったけど」
「...マジ新聞記者にでもなる気か?」
「情報収集は社会を生きてく基本なのだよ?カイ君。少しは私を見習いたまえ」
「......知らねぇよ」
ぶっきらぼうに言って、そっぽを向く
いいかげん付き合い切れん
ったく、何だってコイツはいつもいつも...って、ん?
「んだよ?人の顔ジロジロと」
「......うん。まぁ」
「あ?今度は何だ?まだ何か言いたいことが?」
「...あのさ?私、今気に障ること言った?」
「ああ言ってる。さっきから何べん何べんもな」
「あ、いや、そうじゃなくて...」
「何だよ。はっきりしないな。らしくないぞ」
「...そう、なんだけど...」
アキは、ちょっと迷って
「うん。気のせい、かな?」
「は?」
「ごめんごめん。あ、どう?これから一緒に?」
またビールの透けたビニルを上げて、軽く揺らす
「実は、今日も寄ってこうか、って思ってたの。ダメ?」
「...お前は」
今日何度目だかの力が抜けた
「ダメって言っても上がりこむ気なんだろう?」
「まね」
よくもまぁ、いけしゃーしゃーと...
「さてと、今日は存分に聞かせてもらうよ~。愛しのまどかちゃんについて♪」
「なっ!お前それが目的か!」
「そりゃね~、おいしいネタは自分で動かないと手に入んないんだから~」
コイツは...
「さぁ飲もう!そして話そうではないか!カイの秘められた想いについて!!」
「俺だけかよっ!」
これが俺の日常かと思うとホント嫌になる
バイトして
アキの相手して
そんな風に時間だけが淡々と過ぎていく
でも、そこに突然、変わるのキッカケがやってくるなんて思っても見なかった