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32. 蟠り

頭中将が大宮邸へ到着した。息子たちを大勢引き連れて入ってくる様子は、堂々としていて貫禄もある。背丈も随分すらりとして高く、貴族らしく良い体格をして威厳がある。


「お久しゅうございます、源氏の君」

花菖蒲のような薄紫の指貫(さしぬき)に桜の下襲を着て、裾を長く引いてゆっくりと参る様子は、雅で立派である。

それに対して、桜色の唐織の直衣に、濃い紅梅の袿を何枚も重ねて、くつろいでそれを着こなす源氏は、なんとも美しい皇子らしい見掛けだ。

「ああ、元気そうで嬉しく思います」

二人がお互いの目を懐かしむように見ると、頭中将はゆっくりと座った。

頭中将の息子たちも続々と現れ、その従者たちも入ってくる。

皆がその場に着いた時、十余人ほどになっていたので、それはまさに堂々たるものであった。


「では、まず」

「乾杯!」

盃が持ち、杯が何度も座に回る。皆が酔い、大宮の幸いなる生涯について語り合った。大宮も非常に体調の調子がいいと言うわけではなくとも、その顔には笑顔が浮かんでいた。


「参上しなければ失礼になりますのでお招きがありませんでしたので憚っていました。知っていて参じないのは、お叱りが増すでしょう」

「私こそ、貴方にお叱りを受けそうなことがあるのですよ」

頭中将は話すと、源氏が少しかしこまったように言う。頭中将は、夕霧と雲居の雁の話かと構える。


「昔は包み隠さずなんでも話していた仲であったのですから…」

源氏は、一口酒を口に運んで話し出す。

「歳を取ってからは、やはり距離があると政敵として競い合う気持ちになってしまうけれど、私の気持ちはずっと変わらないのだから、親しい者同士の間ではその威儀も控えめにして訪ねていただければ、と恨めしく思う折もありましたよ」

若い頃は、朝廷に仕える高い身分を賜ってからも公私共に翼を並べて笑い合っていた旧友に、源氏はそう打ち明ける。

「昔は…。仰るようによくお会いして、身分もわきまえず大層失礼なほど親切にしていただき、ご一緒させていただいていました」

頭中将は、もう戻れない若い頃を懐かしむように、絞り出すように話す。

「ありがたいお引き立てもいただき、このように才のない身でありながらこのような地位にいられるのも、貴方のおかげだと存じますが、歳を取ってからだとつい締まりがなくなることも多いのです」


「私のもとで育てていた玉鬘ですが、実は貴方と夕顔との娘であることがわかったのです。貴方のところには子供も多いですから、私のところで育てて、然るべき時にお知らせしようと思っていたのですが、遅くなってしまいました」

源氏は折を見て、実の父である頭中将についに玉鬘のことをやんわりと告げた。

「なんと、…あまりに嬉しくて…。不思議な話を承ります」

と頭中将は驚きを見せた後、幾年も探していた実の娘の居所を見つけたことに歓喜してひとしきり涙をこぼした。

「ずっと昔…。あまりに寂しくて貴方と一緒にその話をした気がします。私も最近、散らかった私の子が気がかりで、拾い集めていたのですが、見つからないあの娘がずっと恋しくて…」

昔の雨夜、友と集まって色々女定めをした時、頭中将は「娘と一緒に姿を眩ませてしまった女」の話をしていた。玉鬘を通して二人にもその思い出が蘇り、それはそれは泣きも笑いも冷めやらぬ夜であった。

そして、彼は玉鬘の裳着の腰結の役も快く受け入れた。



深夜になってから、皆はついに別れることになった。

「こうして一緒になっていると、昔を思い出してどうも帰る気になれないものです」

大して気の弱くないはずである源氏は、珍しく酔い泣きなのか涙をこぼす。

この夜に、源氏は夕霧の話を出さなかった。好意の欠けた内容であることもわかっていたから、口に出すことも見苦しいと考えたのであった。

頭中将の方も、向こうから言われない限り進んで口を切ることもできず、なんだか少し蟠りも残った。

「今晩ご一緒にするべきなのでしょうが、騒ぎになりますので、お礼はまた後日にさせていただきます」

「ええ、では宮の御病気も良いようですので、申した日程を間違えなさらないようにお越しなさってください」

申し訳なさそうにする頭中将に、源氏は上機嫌に返した。


「何があったのだろう、滅多にないご対面だし」

「また何かを譲られたのかな」

機嫌の良い二人に、従者たちはこの対談で何があったのかを伺っていた。

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