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21. 冷泉

中堅になるにつれ、日々の仕事もかなり増えてくる中、ついに舞の前々日となった。

この日の夜には舞姫たちは宮中に上り、常寧殿にて帝の前で舞を踊る最終練習、所謂「帳台試(ちょうだいのこころみ)」が行われる。


「帳台試」は、舞の第一日である丑の日に行われる予行・公開練習で、本番と同程度に重要視されている。そして、これまでの練習と変わってくるのは、見物者が多くいるということである。


昨日、主たちに見送られながら、若苗と羽衣は六条院を出発した。移動中、空気はやはり緊迫したものがあり、少しでも羽衣との交友を図ろうとしていた若苗の策略は見事破綻した。

夕方ごろ宮中へ到着した二人は、先に到着していた伊予・紀伊と、専属の数多の女官により、赤を基調とした衣装に着付けられる。

流石の伊予や紀伊も、緊張からか棒立ちで無口になってしまっていて、いつも賑やかな空間が、緊張感の張り詰める空間へと変貌していた。



常寧殿に参上すると、そこには数人の男性貴族、そして奥にはやけに豪華な御簾が見えた。

帝だ、と若苗は本能的にそう察した。


舞が始まると、そこからは四人は必死だった。

慣れた腕の一振りでさえも、自分の意思とは反して震えて曲がってしまいそうなのを抑えた。

今にも逃げてしまいたい緊張感の中、四人は踊り切ったのであった。



「緊張した…」

女官たちの協力もあり、更衣を早くに済ませた四人は、糸が切れたようにその場に座り込んだ。ここまでに緊張することはこれまでの人生、誰一人経験したことがなかった。

だからこそ、この経験を四人で乗り越えたという事実が嬉しくて、本番もまだだというのに四人で慰め合ってしまった。

「ろもちゃんもすっごく良かったよ!これなら絶対大丈夫!」

伊予はそう言って羽衣の手を取る。

「…うん、ありがとう」

すると、普段の羽衣ならあまりしないであろう感謝が、達成感からか漏れ出ていた。



翌日、次は天皇の住まう清涼殿にて「御前試(おんまえのこころみ)」と称された予行練習が行われた。

この予行練習では、青色を基調とした衣装で練習が行われ、天皇の住まう殿だからか、女官も非常に多い状態での準備・練習となる。

「頑張るぞーー!」

四人に昨日のような不安や恐怖は感じられず、そう気合を入れて、女官に案内されるまま清涼殿へ入り、御前試に挑んだ。


「みかど、先日や本日の舞は如何です?」

「立派だったよ、やはり姫の子たちは皆若いのだね」

舞の練習が進む中、今の帝・冷泉(れいぜい)とその付きのものが会話をしていた。


「舞姫は若い娘から選ばれることが基本ですね。気になる娘がいらっしゃいましたか」

「ああ、あの緑の娘…」

「壬生式部大丞の娘ですね、六条院からの選出です」

「成程、源氏の君の所からか」

冷泉帝は、舞から目を離すことなくそう言う。その顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。



「お疲れ様〜!」

伊予は衣装を脱いだ瞬間、その小ぶりな体ごと体当たりするように、三人に飛びついた。更衣が終わると、御前試まで無事に成功させた彼女たちは、昨日と同じようにお互いを慰め、褒めあった。


舞姫に選ばれた若苗、羽衣、伊予、紀伊は、宮中で行われる行事「新嘗祭」の公式晩餐会である「豊明節会」で舞を披露することになっている。

明日に控えた新嘗祭当日を楽しみにしているからか、四人はすぐに眠りに落ちることはなく、少し遅くまでこれまでの練習について語り明かした。

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