18. 稽古・中編
一度目の練習・顔合わせから幾日か経ち、また舞姫の四人に召集が掛かった。
ほぼ毎日ある稽古のうちに、感心するべきことに、早くも今回は衣装が用意できたとのことで四人とも衣装を着た状態での稽古となった。
「今回の五節の舞の御衣装です。それぞれの後見人の方達からの援助が手厚く、良い出来栄えになりましたよ」
舞の教官の一人は、そういうと、豪華に飾られた衣装が丁寧に入れられた桐箱を開けてみせた。
「おぉ…!」
つい四人の口から感嘆の声が漏れ出る。
本番用の衣装を今着てしまうと汚したり破損したりする恐れがあることから、今回は仮の衣装を着てみることにしたようで、衣装係であろう女房たちの補助もありながらやっと着替え終わることができた。
何度目ともなると、振りや動きに多少慣れが出てくるのだが、やはり衣装を着た状態だとかなり動きに鈍りが出てしまう。特に元々動きに若干の違和感のあった白雪は、教官によく指導される上に、一度踊るだけでもかなり息切れを起こしていた。
それに対して若く元気溌剌な伊予は、一度目の練習こそ疲れを顔に出していたが、それ以降は全くそんな気配なく、午前中の稽古は一度も弱音を吐くことのなくやり切っていた。
「うまくいかないなあ」
白雪は俯いてそう言う。今回もいつものように昼食反省会が開かれていた。
伊予や紀伊も問題ないというが、白雪の心の隅の心配がどんどん強くなっていっていたのは事実だった。
白雪は他三人の会話に入ることなく、早々に昼食を食べ終わったのちに、一人でまた練習を始めていた。
「大丈夫かな?」
紀伊は、一人奥で練習を繰り返す白雪を見つめながらそう言った。
「心配だよね、白雪ちゃん」
伊予は大口で食べていた米を頬張りながら答える。若苗は白雪を遠目に見つめながら、昼食を食べ進める。
若苗が昼食に目を落とした瞬間、大きく鈍い音が鳴った。
「白雪ちゃん!!」
顔を青ざめさせて倒れ込んだ白雪に、伊予と紀伊が駆け寄っていく。
発作のように強い息切れを起こした彼女は、ヒューヒューと音を立てながら必死に息をしていた。
「教官を呼んでくる!」
若苗は咄嗟に声を張り、「ここから動かないで」と小さな二人に言い聞かせた。
若苗は無事に教官を呼ぶことができ、白雪は医療部屋に運ばれていった。
教官もつきっきりになってしまい、三人は練習部屋に取り残されてしまった。若苗は、白雪の健気な夢が崩れてしまうのではないかと思えてしまう自分が恐ろしくて、無駄に考えないようにしようと目を瞑ってその場を凌いでいた。




