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17. 稽古・前編

若苗と光源氏との契約が完了して一週間後、舞姫たちのはじめの稽古が行われた。

稽古に参加したのは、公卿枠の光源氏から夏の御殿・若苗(わかなえ)、冬の御殿・白雪(しらゆき)。受領枠から伊予(いよ)、女御枠から紀伊(きい)の四人であった。

若苗は十六、白雪は十二、伊予は(とお)、紀伊は十二。四人の中では若苗は年長者であり、リーダーとして引っ張っていくことになってしまった。


「私はあまり体が良くないから…」

若苗と同じく六条院から排出された舞姫・白雪が小さな声でそう言う。白雪は病を患っており、普段は曹司(ぞうし)で療養している。

「大丈夫? 無理しないでね」

伊予は小さな体を最大限に大きく使って、心配を表現する。


そこに、舞の教官が入ってきた。伊予は、若苗と頭一つほど違う体を小さく動かしながら横に並ぶ。四人が一直線上に並ぶと、教官は姿勢の訓練を始めた。

「姿勢は舞姫の命、風情ある身のこなしが大切です」

舞姫は本番、普段の(ひとえ)よりもさらに正式で重量のある、袿を何度も重ねた装束を纏うことになる。その衣装の重量は10キログラムを越えるため、華奢で小さな、彼女たち子供の体にはかなり負担をかけることになる。



午前の練習が終わった頃には、四人の足は棒になってしまっていた。

昼休憩に入り、四人は一緒に昼ごはんを食べることにした。

「いやあ、私もうきついかも」

伊予は座って昼ごはんを食べながらそう言う。

「私は今日は大丈夫そうかな、明日は辛いかもだけど」

若苗は上着を脱ぎながらそう返すと、紀伊は「そう?」と疲れを顔に貼り付けて返す。


「私は本番が心配だな…帝の前なんて」

白雪は、少し息を切らしながら言う。

四人が出演する新嘗祭(にいなめさい)では、リハーサルなど含めて天皇の前で三回舞う必要があるため、その緊張感と責任感に三度も襲われる必要があるのだ。

「それこそ本番で倒れたりなんかしたら…」

「大丈夫だよ、そのために練習してるんだから」

紀伊は白雪の背中をさすりながら慰める。若苗も同じく、緊張に弱い人であるからリーダーが崩れるわけにはいくまいと気合を入れ直す。


「白雪ちゃんは、なんで舞姫になろうと思ったの?」

昼ごはんを早々に食べ終わった伊予は、白雪にそう問うた。

白雪は不安そうな顔を見せながらも、息を吐いてその経緯を話し出す。

「私は六条院の冬の御殿にお仕えしてるんです。そこは明石様と言う方が女主人で、総主人の光源氏様はほとんどお尋ねにならないんです。だから、私が頑張れば、源氏様は冬の御殿にも興味を示してもらえるんじゃないかって…そう、思って」


白雪は冬の御殿と、その主人の看板を背負って立候補したのだ。その幼く弱い体を持ってしても、自分の主人と居場所を守るために立ち上がっていたのだ。

その素晴らしい理由を聞いて、若苗は自分の安直な理由に対して、こっ恥ずかしい気分になっていた。


やがて昼稽古が始まり、その日は結局(とり)(こく)まで続いたのであった。

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