2、王都脱出
光が消えると僕は広場に立っていた。
その周囲には僕と同じ魔物を選んだプレイヤーが集められていて、広場から出ようにも透明な壁が有り出る事が出来ない。
少し離れた場所では剣を持った人や緑色の髪をした耳の長い女の人、周りの人より背が小さい髭を生やしたお爺さん、動物の姿をした人達がいて周囲の建物に入ったり話しをしている。
「そうだった。ステータスを確認しないと」
ティスカ様に言われていた通りに先ずはステータス確認をする。
名前:ジョン
種族:スケルトン(ミノタウロス) Lv1
職業:漁師 Lv1
HP 115/115 MP 5/5
STR:30
VIT:5
AGI:15
DEX:20
INT:0
《装備》
【無し】
《スキル》
【槍術Lv1】【大盾Lv1】【怪力Lv1】【疾走Lv1】【投擲Lv1】【水上戦闘Lv1】【漁Lv1】【死炎Lv1】【言語学Lv1】【魔法脆弱Lv10】【打撃半減Lv10】【状態異常半減Lv10】
《称号》
【無し】
「問題無いね」
ティスカ様と考えたステータス通りになっているのを確認する。魔物のプレイヤーはスキルの殆どが決まっていて、魔物の弱点もスキルとして付いてくるがやり方によっては消す事が出来るとティスカ様に説明された。
更に最初にステータスに割り振るポイントの1部を捧げるとスキルを1つ多く付けられるという事で、30ポイントを捧げてティスカ様におすすめされたスキルを2つ選択した。
「次は装備だね」
メニューの装備欄を開き初心者装備を選択する。
武器は木で出来た大きな銛で魚を突く道具らしい、投げた後も無くさない様に縄が付けられている。盾も木で出来た大きな物で体の大きい僕でも覆い隠せる程だ。
防具は黒いボロボロのローブと皮のボロボロのズボンに皮のサンダル、見た目は少し怖い感じで周囲の人も少し僕から離れていた。
「君、かっこいいね」
鳥の姿をしたプレイヤーが近付いて来て話しかけてくる。
「俺はジェット、よろしく」
「僕はジョン」
「ジョンか。君の種族はスケルトンなの?」
「うん。ミノタウロスのスケルトンだよ」
ジェットと話しをしていると他の魔物の話しを聞けて面白かった。
「ジェットは鳥人の中でも烏なんだ」
「そうだよ。鳥人は弓矢を扱うのに優れた種族で、魔法が得意なのは烏か梟だけでね。烏の見た目が格好良くて選んだよ」
ジェットは他のゲームでも魔法を使う職業や種族を選んでいたようで、ジェットの担当は空と旅の女神様だったそうで飛びながら魔法を使いたかったジェットには相性が良かったそうだ。
「それにしても魔物プレイヤーを広場に集めて何をするんだろうね」
「結構、増えて来たけど」
広場は既に大勢の魔物プレイヤーが集まっている。
これから何が起こるのかと思っていると突然空から音楽が鳴り響く。
『プレイヤーの皆さん、future worldをプレイ頂きありがとうございます。我々運営は皆さんが快適に楽しんで貰える様に努力していくつもりです。
それではこれよりオープニングクエストの開始でございます!』
男性の声が宣言した瞬間、僕の目の前にプレートが現れる。
『これより魔物プレイヤーの皆さんにはレイバラン王国の王都から脱出もしくは制限時間が過ぎるまで生き残ればクリアです。クリア後にはそれぞれの出発地点に転移され、報酬も有るので頑張って下さい』
その瞬間、一斉に魔物プレイヤーは準備を始める。
「ジョン、俺はフレンドに呼ばれたから行くよ」
「また会おうね」
ジェットが走って去って行く。
僕は正面を向いて走る構えを取る。
『5、4、3、2、1………スタート!』
カウントダウンが終わり僕は出口になっている大門に向けて走り出す。
「通りますよ!」
盾を前に構え襲って来るプレイヤーや鎧を着たNPC達を吹き飛ばして進む。
「お兄さん、強いですね」
「登って置いて正解でした」
「いつの間に?君達は誰?」
「私はプチスライムのスイです」
「銀リスのチャイです。よろしくね」
スイとチャイと言う小さな魔物プレイヤーが肩に乗って挨拶して来る。
「お兄さん強そうだったので、守って貰おうとスタート前に内緒で登っていたんです」
「私達みたいな小さい魔物や戦闘スキルを持って無い子達は弱いので、戦闘の出来るプレイヤーに守って貰っているんです」
「そうなんですね。あっちを助けた方がいいかな」
僕は銛を構え投げる。
銛は凄い速さで飛んでいき、4人のNPCもプレイヤーを突き刺して止まる。そのまま銛の縄を掴み力いっぱい引くと4人の内3人が光の破片となって消え、残り1人を僕の前まで引き寄せる。
「ごめんなさい」
僕は謝りながらその人の顔を殴ると光の破片へと変わる。
スイとチャイに襲われている魔物プレイヤーを教えて貰い助けていると僕の後ろを大勢の魔物プレイヤーが着いて来ていた。
「今はどんな風になってるの?」
「魔物プレイヤーは3つの群れに別れて出口に向かってるよ。今の所は中央を走ってる私達の群れが1番多いみたい」
「暴れたお陰でプレイヤーもNPCもジョンくんを狙っているみたいだけどね」
「だから僕に攻撃が集中しているんですね。あれは何ですか?」
大門まで残り半分の地点で杖を構えた人達が立っている。
「あれは魔法使いの兵士NPCね。大量の魔法で私達を倒そうという作戦ね」
「僕、弱点で魔法には弱いんだよね」
「それは困ったね。どうしようかな?」
「よし、なら俺達の出番だぜ!」
突然、石で出来た人型の魔物プレイヤーが先頭に立って壁の様になり並走を始める。
魔法使い達が魔法を放つが当たっても気にした様子がなく、そのまま魔法使い達を踏み潰してしまう。
「凄いね」
「俺達は防御スキルが多い魔物だからな!あんな攻撃は効かないぜ!」
「攻撃を防ぐのは任せてもいい?」
「おう!任せろ!」
その後も襲って来るプレイヤーやNPCを倒して僕達は大門まで辿り着く。既に2つの魔物プレイヤーの群れが辿り着いていて大門の扉に攻撃をしていた。
「ジョン、無事だったか」
「ジェット」
「あの扉を破壊すれば脱出出来るけど、これで終わりでは無いよな」
「危ない!」
僕は盾でジェットを庇う。
巨大な剣を持った怖い顔の男の人が驚いている。
「怖いおっさんだ。動いてたのが見えなかったよ」
「この人、強いね」
「ジョンくん、よく攻撃されるのが分かりましたね」
「プレイヤーじゃなくてNPCか」
怖い顔をしたNPCの男性は距離をとると再び剣を構える。
「不死よ。お前の名前はなんという?」
「僕はジョン。あなたは?」
「私はレイバラン王国第十騎士、『老骨』のセバスである。貴様の首を貰い受ける!」