表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

転んでもいいんですよ。

作者: 小波


 転びそうな子供についつい声をかけて静止させる。

雨上がりの苔の上は滑る。まして角度のついた地面で転んではみ出しそうな先は道路。私はいつも通り、雨上がりは濡れてて滑るからやめな、と止める。だけどやめなかったし滑らなかった。物思いに耽りながらそれ以上は言わなかった。


もっと転んでいいんです。


私の言うことを聞いていると失敗(とこちらが思ってるだけ)の経験値は下がる。擦り傷は減る。ズボンは破れない。私は同じ色の糸を探して眠い目擦って縫わなくていい。イライラしながら。擦り傷が無いのだから泣かない。泣かなければ家までおんぶしなくて済む。イライラしながら。

転んで学ぶと自分の経験値になる。お母さんの言うこと聞いたから転ばないし泣かなかった。それじゃつまんないだろう。


赤ん坊なんで死ぬぎりぎりまでほっといて良いんです。と育児書関連で目にした記憶がわずかにある。その言葉は一人目の子供と向き合いおろおろうろたえる赤ちゃんお母さんをほっとさせる目的なのだ。

ぎりぎりまでほっておく。助けるのは命の危険差し迫るくらいの時で十分。勿論手を貸すのも愛情だ。だけど泣きっぱなしでもなんの問題もない。

私が二人目を産んだ時に同日に初産を終えた人と仲良くなれた。その人は年上で教師だった。赤ちゃんを目の前にしたらみんなそこから赤ちゃんお母さんになる。

優しい方で旦那様も優しい様だった。二人はいつもかわいい赤ちゃんに目を向けていて愛情をかけていた様だった。


ある日、泣かせてみようか‥?とおふたりは気持ちが一致した。泣きやませすぎじゃない?とふたりとも気づいたらしい。なんとも微笑ましいなと思った。きっとおっとりした子に育つだろう。


もしかしたら我が子がわんわん泣く姿を見てみたかったのかも。赤ちゃんの方ももっと泣きたいと消化不良を起こしている様に見えたのかも。今、赤ちゃんがうちにいないので想像する。


小さい子のお世話は面倒くさいことだらけだ。

今、転ばなければ楽に家まで帰れると私は目論んだ。

毎回親に納得させられて親の作ったルールを守らされていたら人間とはいえない気がする。自ら全て守っていたら尚一層恐ろしい。


いつも先のことばかり考えてる。寒くならないうちに家に連れ帰り何時までにご飯を終えたい。などと。



私は転んだら痛いという経験値を先に得たから知っている。そんなのいやでしょ?と言える。

だけど相手は未経験だ。結果や情報だけ与えられて体感というものを奪われたら。


頭でっかちの私みたいになってしまう。



私があぶないからだめよっと後ろ手に隠したもの。




あたしもあなたもそれが欲しいのよ。










ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ