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なろうラジオ大賞4

殺人犯はポーカーフェイスを崩さない

 くそっ。

 最悪の目覚めだ。


 金槌で殴られるような頭痛。

 飲みすぎて効果が薄れた痛み止めをミネラルウォーターで流し込み、着替えを済ませて車に乗る。

 今日もクソったれな職場で、クソ上司の叱責に耐えつつ、顧客のクソな要求を聞き流し、いつも通り適当に仕事を済ませる。


 退屈な日常にフラストレーションがたまる一方。

 たまにはガス抜きが必要だ。


 仕事を終えた俺は以前から目を付けていた一軒屋へと向かった。

 薬中のクソ野郎が住んでいる家だ。


 少し離れた場所に車を止め、手袋をつけて、使い捨ての靴に履き替える。

 ひと気がないのを確認したら忍び足でその家へ近づいて行く。

 懐のナイフも忘れずに。


 裏口をそっと開いて中へ入ると……妙な気配。

 もしかしたら――


「おじさん?」


 そこには一人の少年がいた。

 足元には血だまりができている。


「フリック……まさか……お前……」


 その少年には見覚えがあった。

 近所に住む悪戯好きの忌々しクソガキだ。


「ちっ、違うよ! 僕じゃない!」


 慌てて否定するフリックだが、ただのガキがこんなところにいるはずがない。

 家主を殺したのはコイツだろう。


「おい、貴様ら何をしている?」


 そこへ一人の男が現れた。

 トレンチコートを着た中年の男。

 警官のアンカーソンだ。


「おい、ジミー。それにフリック。

 ここを紹介したつもりはないが?」


 アンカーソンは苛立ったようすで眉を寄せる。


 奴は俺に獲物を紹介してくれる。

 少しばかりの手数料を支払えば、殺してもいいヤツを紹介してくれるのだ。


 彼の指示に従いさえすれば安全に殺しが楽しめる。


「すまない……魔が差したんだ。

 でも俺はやってねぇぞ、まだ」

「ぼっ、僕もだよ!」

「ふむ、二人とも嘘をついているようには見えないな。

 久しぶりに私も楽しもうと思ったのだが……まぁいい」


 アンカーソンは悩まし気に顎をさすりながら言う。


「それにしても、この人を殺したのは誰なの?」

「さぁなぁ。俺たちの知らない誰か、だろ」

「ああ、私の顧客名簿に載っていない、

 よそから来たご新規さんの犯行かもしれない」


 ご新規と聞いて、フリックは口元を釣り上げる。


「つまりは新しい仲間ってことだね」


 その言葉を聞いて、俺も少しばかり口元が緩んだ。


 ここは殺人犯が住む地獄のような街。

 住んでみたら意外と快適。

 誰もがポーカーフェイスで日常をやり過ごし、闇夜に紛れて牙をむく。

 最高にクールでエキサイティング。


 どうだい?

 アンタも俺たちの仲間にならないか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお怖い! 少年まで殺人鬼とは。 きっとフリックの両親も……。
[良い点] なるほど、シリアルキラーが一堂に会する町ですか。 シリアルキラーはそれぞれ特有の美学や趣味を持っていそうなので、殺し方にも様々な個性が出てきそうです。 確かに殺人鬼からすればスリリングで退…
[良い点] うわー、かっこいい!! この殺伐とした世界観めちゃくちゃ好きです!! 私も住んでみたい……かも?(*´∇`*)でも怖いなぁ
2022/12/30 11:40 退会済み
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