クラスカーストSランクのグループを追放されたので悠々陰キャ生活を送る~クラスの聖女もギャルも付いて来たからって今更帰って来いと言われてももう遅い~
「絢斗、お前もう要らねーやバイバイ」
「……は?」
昼休みの2年B組。
俺はいわゆるイツメンにグループ追放を言い渡された。
しかも俺がつるんでたのはクラスカースト最上位の奴ら。
安心してくれ、これは現実の世界での話だ。
……悲しい事にな。
俺の目の前にはリーダー格である言いたくは無いが美形の奥田誠とそのツレである男が2人。
天然パーマのおもしろ枠相田哲也と、いじられ役の田村陸。
本来ならここに女子2人が揃って6人のグループだ。
しかし一人は委員会、一人はサボりで今は教室に居ない。
ニヤニヤと笑いやがって……
一体どういうつもりだ。
俺として結構仲良くやれてたつもりなんだけどな……
クラス替えで友人関係がリセットされて3ヵ月、最初に喋りかけてきた奥田と、奥田の友達だったこいつらとは毎日クラスでは一緒だったのに。
「……悪い、俺なんかしたか……?」
訝しむように俺が訊ねると、3人はクラス中に響く声量で笑い出した。
「ぎゃははは!!絢斗ぉ~お前まだわっかんねぇの??」
俺を指差して腹を抱えているのは天パの相田。
「お前はさ、俺らがあの2人と仲良くなる為にグループに入れただけだって!お前が何故か学校でトップクラスの女子と仲良いって聞いたからな!」
あの2人──今は席を外している沖山舞香と仙道真冬の事だろう。
「ケケッ、そうとも知らずに俺をいじりやがって……いやーでもその表情、傑作だわ!!」
「……田村まで……」
いつもなら下っぱっぽく周りの空気を見ている田村までもが俺に強気の態度を見せていた。
ってか俺お前の事いじった事ねーし。
なんならあんま直接は喋った事もねぇ。
「ま、そういう訳だ。それに俺、真冬と付き合う事になったしもうお前は要らねーって事、OK?」
「え、待ってよ誠くん~俺聞いてねーよ!?舞香ちゃんは残しといてくれよー!?」
「わりぃ、2人とも俺が貰っちまうかもなwww」
「ケケッ、さすが誠くんだなぁ!どっかのアホとは違うや!」
……ヤバい、この中で田村が一番ムカつくかも知れん。
けどそれより一つ疑問がある。
「……真冬と付き合ったって本当か?」
「あん?本当だよ、なにお前真冬の事好きだったのか?はっ、だったら尚更お前とはもう一緒に居れねーわ。それと真冬って名前呼ぶのも止めてくんない?」
……マジかよ。
真冬……いや、仙道と呼ぶべきか。
なんでこんな平気で人を貶めるような奴と……
「大体さ、お前みたいな陰キャと俺らが仲良くするわけねーじゃん!ほら、クラスの誰か!これからこのカースト最底辺の陰キャ君と仲良くしてやってくれよハッハッハ!!!」
「誠くん~ちょ、やりすぎww」
クラスの奴らはこんな憐れな俺を見ても当然声は掛けない。
皆見て見ぬ振りをする。
こそこそと、絶対に聞こえないように何かを囁きながら。
当たり前の反応、か……
俺がお前らの立場でもそうして空気を読みに読んでモブでいてるよ。
仕方ない、これ以上クラスの奴らに迷惑を掛けるのもなんだな。
「……分かったよ、今まで楽しかった。真ふ──いや仙道の事、よろしく頼むよ」
「お前に言われるまでもねーっての。さっさと消えろよ。どうせ陰キャ君は昼休みが終われば戻って来るんだろうけどな!」
……ちっ、誰が戻るかよ。
今日はもうこのまま帰るさ。
さすがにきついわ。
「ケケッ、惨めな背中だなぁ~w」
俺は睨み返す事もせず教室を後にした。
※
カースト最底辺の陰キャ。
つい先程教室で言われた言葉が胸に刺さる。
とぼとぼと昼抜けする足取りは重い。
俺の家は学校から少し歩いた所にある河川敷を抜けた先だ。
覚束ない足で河川敷に着いた俺は、雑草の整備された坂道に腰を掛けた。
少しここで川を見ながら心を静めたい。
「……はぁ」
あいつら──奥田達とは本当にそれなりに良い関係だった筈なんだ。
それがまさか仙道と沖山目当てだったなんてな……
なーんで気付かなかったんだろうな。
こんなモブっぽくて何の取り柄もない俺に、たまたま仲良くしてくれてる美少女が2人も居たらそういう輩も現れるってさ。
あーだっせー……
明日からどうっすかなぁ。
あいにく一年の頃は陰キャラを極め過ぎて友達なんか居なかった。
二年は二年で奥田達のせいで他に近寄って来る奴も0だった。
ふむ……こりゃ詰みだな。
今日の事が明日になれば学校中に広まり、三年になろうが俺にはもう明るい未来はないだろう。
うわぁ……大学生活にわんちゃん掛けて大人しくイジメられながら過ごすのがありありと想像出来る……
──ま、今までの俺ならな。
ここ3ヶ月、騙されていたとは言え俺は陽キャの空気と言うものを知った。
これは非常に大きな経験だったよ。
自分と言うパーソナリティをさらけ出す方法を俺は知った。
そして俺にはもう失う物は何もない。
「……こうなったら一人でも残りの高校生活を満喫するまでだ」
追放された主人公なんてもの、創作上の話だと思ってたよ。
けれど、だったら俺も創作上の主人公の奴らを見習うさ。
まずはあいつらに復讐をしなければ……!
マイナスな思考に振り切った悲しい陰キャを舐めるなよ……!!
※
次の日。
登校時間ギリギリに教室の前に着き、俺は勢い良くドアを開けた。
そしてその瞬間、クラスが一気にざわつき出した。
へぇ……今日は息を殺して気付かれないようにしないのか。
さすがカースト最底辺の陰キャに対する扱いは酷い。
さて、そんなクラスの中を堂々と闊歩し自分の机を目指す。
その途中、あの天パさんの相田が声を上げる。
「お、お前、その格好……何のつもりだ……!?」
またまた俺を指差して来る相田の方を向く。
仕方ない、はっきり言ってやるか──
「これは俺の大好きなアニメに登場するデンパちゃん応援用のグッズ達だ!!!」
きっと俺が何を言っているか分からないだろう。
解説するとだな、俺は今マジカル少女☆デンパちゃんというロリキャラの勘バッチやら帽子、さらにはカバンなど、様々なアニメグッズをフル装備している。
俺はマジカル☆ステッキをカバンから取り出し、相田に先端を向けた。
「おい、天パ!!良く聞け!!俺は生まれ変わったのだ!!これからはお望み通り堂々陰キャとして生活してやるからそこんとこよろしくぅ!!!」
「て、天ぱ……!?い、いやそんなイカれた陰キャが居るか!!」
「ふっ、お前らのお陰だよ。この学校を陰キャだらけにしてやるぜ……!!」
みんな陰キャになれば俺がカースト最上位さ。
これが真の陰キャの力だ!!
凍り付くクラスの中でも一際青い顔をしている奥田には、俺のマジカル☆ビームを送りながら宣言してやった。
「奥田ぁ!!もしも仙道を泣かす事があったら覚えとけよ!!このマジカル☆ビームでお前も陰キャに──」
俺が続きを口にしようとした時だった。
後頭部を誰かにスパコーンと、気持ちの良い音ではたかれてそのまま首根っこを掴まれてしまう。
「誰だ!?俺の復讐を邪魔するのは!?俺はこの世界を陰キャに染めr……!?」
「絢斗君、ちょっと黙っててね??」
「仙道……!?」
俺の首根っこを掴んでいたのは、その清楚さと可愛いさからクラスで聖女呼ばわりされている仙道真冬だった。
黒髪を靡かせた美少女はその細長い手足を使って俺を教室の外へと引っ張って行く。
俺が教室を出された後、クラスメイトの声が同時に揃った。
『なんだったんだ……』
※
「絢斗君どういうつもり!?」
「ど、どういうって……追放されたから復讐を……」
正座の俺を目の前で腕組んでぷりぷりと怒っている仙道さん。
1限も始まってしまうので、俺を彼女が所属する部室に連れて来たのだ。
「あのね、小説やマンガじゃないんだから追放とか復讐とか言わないの!」
俺は至極真面目に回答したつもりだったのだが、どうやらお気に召さなかったようである。
「大体"この学校を陰キャだらけにしてやる"って……そんな事が復讐なの……?昨日はお昼サボるし、本当どうしたの?」
今度はがっくりと呆れたように見つめられてしまった。
む、これでも一晩じっくり考えたんだぞ。
それに昨日俺は復讐を考えても仕方ない仕打ちを受けたんだ。
こいつ、まさか知らないのか?
……もしもそうだったら余計な事は言えないな。
仙道の性格だと自分に責任があるとか言って、奥田と別れるとか言いそうだしな。
奥田は気にいらんが仙道が幸せなら俺はそれを守ってやりたい。
「……良いだろ別に。あいつらとちょっと喧嘩しただけだって」
「奥田君達と?それだけで数少ない友達にあんな事を……?」
けっ、もう友達の数は0だよ。
「うるせーな。仙道には関係ないだろ、ほらさっさと授業に戻ろう──」
「……ねぇ」
「え?」
仙道は正座する俺の目の前に座り込んで、真っ直ぐに俺を見つめた。
……寂しそうな顔で。
「……さっきから、何で名字で呼ぶの……?」
「何でって……」
そりゃもう名前で呼ぶような関係じゃないし……
「絢斗君……私の事嫌いになったの──」
「ちゅーっす!およ?あんたら何やってんの?」
「沖山……」
突如バスケ部的なノリで部室にやって来たのは校則フル無視な格好をした白ギャル──沖山舞香。
沖山はその白く深い谷間をチラチラと見せながら俺と仙道の方へとやってきた。
座ってるせいか、パンツが──いや見えんな。てかスカートの扱い上手すぎだろ。マジで見えん。
「……アヤト、ウチのパンツ見たいの?」
「絢斗君!?」
おっと、視線に気付かれてたみたい。
少し顔の赤い沖山は今もチラチラと見えそうで見えないスカートを俺の前で弄んでいる。
俺は澄ました顔を作って首を横に振った。
「いや全然」
「……絢斗君、首動かして見える角度探してるでしょ」
「アヤトが見たいなら……ウチ……良いよ……?」
「マジですか!?」
「ま、舞香ちゃんダメだからね!?」
「ひひーっ冗談♡」
「全く……」
ちぇ、残念。
「絢斗君も残念みたいな顔しない!!」
「し、してねーって!」
なにこいつエスパーなの?
「嘘ばーっかり!今度は舞香ちゃんの胸元ばっかり見てるじゃん!」
「そうなの!?もっと見て良いよ~アヤトー!!」
「わぶっ!!」
「あー!!」
いきなり沖山が俺に抱き付いて来た為、バランスを崩して倒れ込んでしまう。
当然目の前に座っていた仙道も巻き込んで。
「イテテ……──!?」
そしてその結果、夢にまで見た展開が──ラッキースケベイベントが発生していた。
俺の視界は深い谷間に覆われ、後頭部には何か……恐らく仙道の弾力ある胸が倒れた衝撃を受け止めている。
仙道、意外とあったんだな。
「ごちそうさまです……!!」
「わっ、アヤト喋っちゃダメ!なんかこしょばいぃ~」
「てか絢斗君!それどういう意味!?」
言葉の通りだよ。
……それよりそろそろ本当に授業に戻らないと。
「とりあえず沖山、どいてくれるか……?」
「えー。もっとくっついてたーい」
むっ、沖山がむぎゅっと体重をさらに掛けてきた。
や、ヤバいすっげぇ可愛い。
だが一人興奮している俺を他所に、仙道のご機嫌はどんどん斜め方向に進んで行っていた。
「舞香ちゃん?いい加減にしようね?」
「ひぇっ……ま、マフユもうどくからそんな怒んないで……?」
「別に怒ってません。ただそろそろ私も重いからってだけ」
「……怒ってるじゃん。アヤトの事になるとすーぐね」
「何か言った??」
「い、いえ!!」
焦ったように沖山は俺達から離れた。
……仙道さんこえぇ……
まぁそれさておき、俺は下敷きになっていた仙道に手を伸ばす。
「悪いな仙道……彼氏が居るってのに他の男と密着するような事になって」
俺は本当に、何の嫌味もなくそう告げた。
そのはずなのに仙道から返って来たリアクションは驚く程に「不愉快です」みたいな感じだった。
「はい???」
「え?」
「マフユ彼氏出来たの!?」
何故か知らんが沖山は嬉しそうだ。
いや友人に彼氏が出来たと知れば喜ぶのも当然か。
沖山にとって仙道は学校で唯一の友達だしな。
問題は仙道だ。
なんでそんな表情してんだよ。
「あの、よく分からないんだけど私に彼氏ってどういう事?」
「いや聞きたいのは俺の方だけど……お前奥田と付き合ってんじゃねーの?」
「……え、そうなのマフユ……?」
俺が奥田の名前を出した途端、若干表情暗くした沖山。
さっきから2人してどうしたんだろうか。
俺の疑問は続く仙道の言葉でさらに深まる事となる。
「あのさぁ絢斗君?私が奥田君と付き合うわけないでしょ……???」
「え!?て、てかあ、あの仙道さん……笑顔が怖いんすけど……」
「アヤト気を付けて……!あの顔のマフユはブチギレ寸前だよ……!!」
「お……おうっ……!」
だが意味が分からんもんは分からん。
なんなんだ?
本当は付き合ってないのか?
「一体どこからそんな噂が流れてるの……?絢斗君……??」
「ちょ、ま、待て!俺は奥田から直接そう聞いただけで……」
「あいつそんな嘘吐いてんの?大体マフユが好きなのは──」
「ま、舞香ちゃん!すすすストップ!!」
へぇ、仙道って好きな奴いたのな。
だが何はともあれこれで奥田達が付き合ってないのは確定だ。
……本当にあいつ何のつもりだったんだよ。
「アヤト、どういう流れでそんな話になったの?」
「え、そ……それは……」
『??』
気まずいので目を逸らしてしまう。
何だかんだ言ってここ数ヶ月一緒に居たグループの奴らに追放されたなんて言いづらい……
「絢斗君もしかしてさっき言ってた追放とかって本当に……?」
「追放?なにそれ。アヤト、詳しく教えなさい」
「うっ……」
俺は2人の美少女に詰め寄られ、逃れる術もなく全てを打ち明けた。
俺からの話を聞いた2人の言葉はこうだ。
「良し、あいつら殺してくる」
「うーんちょっとお仕置きが必要かなぁ??」
「ま、待て待て!何でお前らがヒートアップしてんだよ!」
だが俺の制止は2人には届かない。
「なによあいつら。アヤトと仲が良いからこっちが少しつるんでやったら調子乗って……!!」
「私……ここまで人に対して怒りを覚えたのは初めてかも……!!」
や、ヤバい……!
いつになく2人がご立腹だ……!
「あ、あのお2人さんや……?俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけどこれは俺の復讐だから──」
『絢斗君 (アヤト)は黙ってて!!』
「えぇ!?」
おかしいだろ!?
こんなん八つ当たりじゃねぇか!!
俺が固まっていると、「あ、良いこと思い付いた♡」と沖山が嬉しそうに言った。
嫌な予感しかしねぇ……
「ねね、2人ともちょっち聞いて!あのさ──」
部室の中だと言うのにこそこそと小さな声で聞かされた内容は、とてもじゃないが許容出来るものではなかった。
「ま、待てよ!お前らそんな事したら……!」
「はぁ?るっさい。あたしは絢斗が居ないならあいつらと一緒に居ないし」
「私も。そ……そのちょっと恥ずかしいけど、絢斗君の為なら構わないよ」
「お前ら……」
戸惑っていると、仙道と沖山が俺の肩に腕を回して顔を近付けてきた。
「絢斗君、復讐するんだったらこれくらいしないと!」
「そそ!ほら、決行は昼休み!作戦通り動いてよ2人とも!」
「え、ちょ、お前ら本気か!?」
『えいえいおー!!』
「……ま、マジか……」
※
そしてその日の昼休み、俺はいつもなら奥田達と食べる昼食を一人寂しく取っていた。
仙道と沖山には教室から出て行って貰っている。
すると予想通り奴らが俺に絡んで来た。
俺の名前は出さずに遠回しに暗喩した言い回しでな。
「ケケッ、一人寂しくお昼ご飯かよ悲しいなぁ!!」
「おいおい、そんな言い方したら誰の事か分かっちまうって~!ちょっとは考えろって絢村~」
「ちょ、田村だって!混ざってる!カースト底辺と混ざってるから!!」
「お前らやめろ、ハラハラいてぇwww」
本当やめろよ、もっと暗喩の意味調べて来いよ。
くそっ、いい気になってられんのも今の内だからな。
俺が奴らを一睨みすると、それが気に入らなかったのか奥田がこちらへとやって来た。
「お前、なにその反抗的な目。朝は調子乗ってくれたもんなぁ……ちょっとこっち来いよ」
「いてっ!!」
奥田は俺の髪を引っ張り無理矢理立たせた。
本気でいてぇ……
こんな時にでもクラスの奴らは見て見ぬフリ。
盛り上がっているのは天パとケケ野郎だけ。
もうほんとやだこのクラス。
「ほら来い──」
奥田がさらに俺を引っ張って教室から出ようとドアを開けた時だった。
腕を組んだ仙道と沖山が姿を現したのだ。
「ねぇ奥田、あたしの彼氏に何してくれてんの?」
「奥田君、私が好きなのは絢斗君だから、勘違いしないでくれる??」
「…………は?」
奥田の奴、2人のあまりの威圧感に驚いて俺を急に離したもんだから俺は顎から床に落ちた。
「ごふっ!!」
「アヤト!」
「絢斗君!!」
慌てて2人は俺の元へと駆け寄って来る。
「もう、ドジなんだから……」
仙道が優しく俺の顎をさすってくれる。
やはり聖女と呼ばれるだけある。マジ癒しだわぁ。
「奥田……!あんた本当に殺すよ……!!」
沖山の視線に狼狽えた奥田が醜く言い訳を始めた。
「ま、待てって!これは男の喧嘩だって!そ、それに真冬、俺言ったじゃん!付き合ってくれって!」
そうだ。
そこだけは本当に俺には良く分からなかった。
すると、仙道はぽかんとした顔をして言った。
「え?あれって絢斗君の誕生日プレゼントを買いに行くのに付き合ってくれって事じゃなかったの?」
「は、はぁ!?そんな訳──」
仙道は見た目の通り少しおっとりした所のある天然さんだ。
……可哀想に、何か食い違いがあったらしいな……
まぁそれはともかく、奥田が続きを口にしようとした時、2人の美少女は俺の両腕を持って立たせてくれた。
そしてそのまま強く抱き締めて告げる。
「悪いんだけど、奥田君と付き合うとか100%ないから!私は──」
「あたしもうあんたらとつるむことはねーし。あたしは──」
2人は俺に胸を思いっきり当てて口を揃えた。
『絢斗君 (アヤト)の恋人だから』
瞬間、クラスが一気にどよめいた。
「えぇ!?」「あ、あいつクラスのトップ2を2人とも……!?」など様々な声が聞こえてきた。
……これ絶対やり過ぎだろ。
だがここまで来てしまったら俺が出来る事は一つ。
「な、なぁ絢斗!お、俺達が悪かった!お前2人も彼女作るとかさすがにやべぇって!また仲良くしようぜ!だからさ、一人俺に──」
プライドの欠片も無いセリフを吐いた奥田に、俺は仁王立ちで顎を突き出して答えた。
「ハッハッハ!!もう遅いわ!!!羨ましいかこのクソ野郎!!!どう?どうだ?カースト最底辺に超美少女2人も持っていかれる気分は!!!これから思う存分クラスでイチャイチャしてやらぁ!!!ハッハッハーーー!!!」
その言葉に顔を赤くした仙道と沖山は、2人顔を見合わせていた。
俺には聞こえない声量で何かを言っている。
「……このまま本当に彼女にして貰っちゃう?」
「……ダメ。私独占したいもん……」
「だね!あたしもアヤトだけは譲れない!」
『──大好きだから!』
あーあー……さっきまで静かだったクラスが騒がしい事になってる。
ま、良いか。
どうせこれから俺がやる事は変わらない。
悠々自適に陰キャ生活を謳歌してやるだけだ。
……結局この日はくっついてくる2人の美少女のせいで全く陰キャ生活を送れなかったが。
お読み下さりありがとうございます!
【作者からのお願い】
少しでも面白かった、続きがみたい!
そう思ってくださった方が居ればぜひ★★★★★評価や、ブクマ感想いいね等ぜひお待ちしております!