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鬼神剣客伝【改訂版】  作者: 春好 優
第1章亡国の王女たち
8/40

第7話

余り変わってないです。

「そのようなことが…」


飯を食いながら自己紹介をして、事情などをあらかた聞いた紫苑はそう声を漏らした。その間にも3人の少女は久しぶりなのか嬉しそうに食事を食べていていつの間にか無くなっていた。

どうやら数日まともな物は食べられなかったようで暖かい食事は久しぶりのようだった。紫苑自身も美味しく食べられている姿に作ったかいがあったと思って硬い表情筋が自然に動き柔らかい笑みを浮かべる。

飯を食いながら事情を聞いた紫苑に最初は言いにくそうにしながらテレスティナが口を開き話し出した。

城がいきなり奇襲を受けて陥落したこと。

クリスティンが抜け道から逃がしてくれたこと。

抜け道の入口がこの森にあったこと。

帝国の皇帝が自分を狙っていること。

などと色々だった。

そこで紫苑はふと、3人の服装を見た。テレスティナ、ルジアーナが来ている服は綺麗に見せるだけの機能性に優れない服でその目的である綺麗さは今では見ることすらできないほどにボロボロで汚れている。クリスティンに関しても守ることに優れた鎧では有るのだが長旅には不向きであるし既にボロボロである。それだげでここ数日の苦労が見て取れる。よくそのような服で持ったものだ。

それ以外にもどうやって帝国の兵士達は気付かれずに城まで移動出来たのか。それ自体が謎である。国境は守られているはずだし連絡もなくいきなり落ちたというのが不自然すぎる。紫苑は傍にいる式を撫でながら考えた。そこで紫苑は3人のこれからに着いて聞こうと質問をした。


「それならここからどうするつもりだったのだ?」


そこで質問に答えたのはクリスであった。


「それは私が話します。私は陛下から隣国のライオネス王国に亡命するように命令されております。ですのでこの森を迂回する形で行こうかと思っていましたが…」


「先回りされて待ち伏せされていたと?」


「えぇ、抜け道を通ったのですが結局はそうなりました」


「ではこの後はどうするつもりだ?」


「……正直何も考えていませんね」


俯きながらそういう姿は本当に先をどうするか迷っているようだった。準備もすることも出来ず最短で行くのが前提で来たため旅をするなど長期の自体に備えられずやろうとしてもこのままでは不可能。このまま進めば帝国兵にまた待ち伏せられていることは確実で引くとこと進むことも出来ない。


「ひとつ聞いても良いか?」


「?…どうぞ」


「行こうとしておったのはこのまま森を回っていく道か?」


「そうですがそれが何か」


「ならひとつ提案をさせてもらおう」


「提案ですか?」


クリスティンは首を傾げていた。


「ああ、まずは街に行って準備をする。そしてこの大森林の中央を通るそれだけだ」


帝国に見つからずに行くならアルゴス大森林を直進するしかない。普通なら迂回する道しかない為に待ち伏せは簡単にされる。なら違う道を行くだけでいい。普通なら使わないような道を。だがアルゴス大森林を抜けるにはテレス達の服装はボロボロすぎる。何かあった時のためにも準備は必要である。しかしクリスはその答えに目を見開き否定の意を示した。


「なっ!大森林を抜けると言いましたか?それは流石に無茶ですよ。貴方がどれだけ強くても危険です。この森の奥に行ったもので帰って来た者はいません!それに街によるですって?無理言わないで下さい。帝国兵達の巣窟になっているはずです!」


クリスの言う通りアルゴス大森林は中心に行くほど危険で浅い部分ならまだしも中部からは未開の地で多くの者が挑んだが誰もが帰って来なかったと言うぐらいである。しかも帝国兵はこのような場所まで迫ってきている。近くの街にも既に駐屯しているだろうし顔の割れている一行で街に行っては直ぐにバレてしまうだろう。だが紫苑は何処吹く風で聞く耳を持たなかった。


「大丈夫だ。心配には及ばんよ。森の深層には行ったことがある。それに街でも見つからない方法ならあるからな」


紫苑の軽い言葉に納得出来ないのかクリスは睨んでいた。それは仕方がないことである。会った初めて会ったものを信用そしろと言う方が無茶だ。テレスとルーナの2人もお椀を持ちながらことの成り行きを見守りながらどうしたらいいのか考えているようだった。


「初めて会ったものを信用するのは難しいと思うがどうかこの通りだ!俺を信用して欲しい」


紫苑は信じてもらうために精一杯頭を下げて信用してもらおうとした。そんな中クリスは悩んだ末にテレスの方を見た。1人では決め手は行けないと思ったのだろう。テレスはその意志を察して答えた。


「少し3人で相談さして貰えませんか?」


「ああ、構わない」


紫苑がそう言うとテレスティナは他の2人を呼んで円になって話し始めた。










テレスティナside


「ねぇ、どうするの?」


円になるようにして集まった3人で最初に話したのはルーナだった。そしてその問いに対してテレスは考える。テレス自身紫苑のことを完全に信用出来ないものの信用したいと思っていた。しかしそれは簡単にはできない。

何故わざわざ自分が危険になるのを分かっていてテレス達を助けようとしているのか、それが分からない。


「あの者は悪人では無いとは思うのですがまだ会ったばかりの者を信用しろと言われても流石に…」


「そうだねぇ、でも私はあの人を信用してもいいと思うよ」


「仮に信用出来る者だとして、大森林の中央を抜けるという話を聞くのですか?」


どうすれば良いか皆が迷う。テレスはそんな中で意見の言えない自分に落ち込んでしまっていた。自分には何も出来ないと決めつけて少し気が落ち込んでいる。


「テレスはどう思う?」


「わ、私は…」


ルーナから話が回って来てもテレスは答えることが出来なかった。


(何も出来ない守られてばかりの私が意見を言うなんて、しない方がいいんだ……)


(ふん、あんさん見たいな人のために主様は手を貸そうとしておらはるん?あるじ様が可哀想やな)


(だ、誰?)


不意に頭の中に聞こえてきた声に反射的に心の中で聞き返してしまった。頭の中で聞こえた声なのでもちろん2人には聞こえていないようだった。


(うち?うちはそうやね、主様のお嫁さん候補と言っておくわ)


陽気で嬉しそうな声で聞こえてきた。


(お、お嫁さん。なるほどその主様って?)


(あんさん察しが悪いお人やね。まぁ良いわ、うちがそういう風にしたんやししょうがないな。それよりあんさんさっさと答えんでいいの?)


まるでテレスを諭すかのように優しいようなそして妖しい雰囲気で言葉は紡がれる。


(答える?何をですか?)


(そんなんあの銀髪、ルジアーナと言ってはったね。その子の問にどう答えるんってこと)


(私にはそんなこと答える資格は……)


(資格うんぬんの話ちゃうと思うんやけどな?)


相手の女性は呆れたように言った。しかしそんなことはお構い無しにテレスのネガティブ思考は続いていく。


(だって護られてばかりの私に何かをする権利なんて…)


(さっきから聞いてたら後ろ向きな話ばっかやな。そんなん聞きたないわ)


痺れを切らしたのかテレスの発言をバッサリと切るように強めに女性は遮った。


(じゃあどうしろと?約立たずの私には選択肢なんてないんです!?)


(そんなんあんさんの意見やろ?あの子らはあんたの意見聞きたがってんのちゃうの?)


(えっ?)


そう言われてテレスは2人の方を見た。2人は静かにジッとテレスの答えを待っていた。


(やっと気づいたんね。ならもうあとは自分でおやりね)


(ま、待って!せめて名前だけでも!)


(うちの名前?うちの名前はね狐月八重香よろしゅうな)


(ありがとうヤエカ様。)


てれすがふと後ろを見ると狐が走っているのが見えた。それを見て彼女が何者なのかを少し理解した気がした。


(私は気づいてなかったんだ。私を見ていてくれる人を、忘れてたんだ私を必要としてくれてる人を。なら私は答えなくては行けない。だから私は覚悟を持つ。私を見てくれる人のために。)


「すいません、少し考えていました。私の意見ですね?私は彼の提案を飲むべきだと思います」


今度はしっかりと自分の考えを伝えるようにはっきりと声を出した。


「本当に大丈夫ですか?あの方自体が信用出来てもその考えに信用を持つことは出来ません!」


クリスが言うことは最もで例え人柄が信用出来てもその人の考えがあっているとは限らない。どれだげの人格者でも間違えを犯さないことはないのだがら。だからこそ紫苑が信用出来ても彼の考えが最善かは別の話だ。


「確かに信用に値する人なのかまだ分かりません。ですが今の私たちには選択肢が残っていません。だから今は彼を信じるしか選択肢はありません!」


テレスはキッパリと自分の意見を言った。先程のように迷いでどもることも無く落ち込むことも無く自分の考えを2人に伝えたのだり


「うん、テレスの言う通りだよ。ここはやっぱりあの人を信用しようよ!」


ルーナが笑顔で賛成した。

2人は後のクリスをジッと見つめた


「テレスティナ様、貴方がそう決めたのなら私はそれに従いましょう。今の私は貴方の従者なのですから。それに私の言葉は貴方の考えの参考程度になればいいのですから」


そう言って彼女はテレスに片膝を地面に着き忠誠を誓う姿勢を取ったのです。


(ドウイコトデスカ?)


「私の誇りはあなたと共に。我が忠誠を貴方に捧げます」


クリスは自身の剣を地に刺してテレスの前に跪き誓いの言葉を述べた。それは騎士の忠誠の儀式であった。

それは自信の主と認めた人に対して行うものであった。

テレスはどうすれば良いかわからず思わずルーナの方を見たが笑顔を向けられるだけであった。おそらく自分では決めろと言っているのだろう。


「ありがとうございます。貴方の忠誠は確かに受け取りました。そうそう今決めたのですがクリスティン、いいえクリス私は貴方を愛称で呼ぶので貴方も私をテレスと呼んでください」


「あ、じゃあ私はルーナって呼んでね」


テレスの最初の言葉に笑顔を向けて答えたクリスであったが最後の部分で固まってしまった。何故なら騎士として主を愛称で呼ぶなど無理なことであった。なかなかできるものでは無い。特に忠誠を誓った相手になら尚更だ。それにルーナも一緒になると別段と難しい。


「む、無理です!流石に主を呼び捨て、しかも愛称で呼ぶなど…」


「これは命令です。テ・レ・スと呼んでくださいね?」


「ではテレス様と。流石に呼び捨てはご容赦を」


「まぁいいでしょう」


「ねぇ、私は?」


「ルジ、ルーナ様」


流石に呼び捨ては無理だったようだが主であるテレスの圧により愛称のまま様をつけてどうにかしたようだ。それに納得して嬉しそう親友コンビは笑顔を浮かべる。

少し話しが脱線しながらもテレス達は決断を紫苑にどうするかを言いに行った。










「八重香め要らんことを言っておらんだろうな?」


相談をするために少し離れたところにいる3人の中で少し暗い雰囲気を出していたテレスに助言をするためなのか向かって言った八重香の行動を心配しながら紫苑は座って待っていた。

紫苑が心配しながら様子を伺っていると八重香が走って帰って来た。


(ただいまぁ)


「何をしておった?」


(そんな心配しんでもただ様子見してただけやん)


呆れたように言っているが雰囲気は楽しそうで何か言ってきたことは確実であると分かる。しかしそこは信用して何も言うことは無かった。


彼女達が相談をしている間紫苑は八重香を撫でながら待っていた。気持ちよさそうに膝の上を八重香は転がる。

そうしていると少し話が脱線しているのではないかと思うような声が聞こえて来て本当に大丈夫かと心配してしまう。するとまたクリスが弄られているのか遠目から見ても分かるぐらいに顔を赤く染めていた。

少しして彼女達の意見はまとまったのかこちらに近づいてきた。


「私達はその提案を呑みます」


それを言ったのはクリスでは無くテレスであった。先程よりも凛々しい顔立ちをしていて決意が決まったような様子が伺える。一体何があったのかと思ってしまう。


(八重香よ、今回は大丈夫で良かったぞ。)


「了承した。ではまず俺の名は天鬼紫苑と申す。気軽に紫苑と呼んでくれ」


紫苑は頭を下げながら自己紹介をした。名乗っていなかった名を彼女達の決心が固まったことで名乗ることにした。


「分かりましたシオン様。私の名前はテレスティナ・アレフテストと言います。テレスとお呼び下さい」


金髪ロングの少女のらテレスが自己紹介をした。優雅にお辞儀する姿はボロボロの姿であってもその気品が垣間見える。

率直で丁寧な子だと印象を受ける。


「私の名前はね、ルジアーナ・ルベリオス。気軽にルーナって呼んでね?シオンさん」


銀髪ショートの少女のルーナが自己紹介をした。こちらは少しぎこちないものの元気で明るい雰囲気を醸し出している。

元気で明るく活発な印象を持つ少女だ。


「私はテ、テレス様の従者であるクリスティン・アルセフトと申します」


桃色の髪ショートの女性が自己紹介をした。普通のお辞儀であったもののそこからは若いながらの気高さを感じさせるものであった。

先程と違い愛称で呼んでいる姿は慣れていないからかぎこちないものの頑張っているようだった。それだけ親しくなったということだろう。


(しかしこの者は普段は真面目な者と言う印象だが、1度崩れるとダメになるな。今は良いがそのうち…だな。)


そんなことを思いながら紫苑は普通に挨拶を交わす。


「ああ、よろしく頼むよ皆」


紫苑はそこで直ぐに寝ようと言いたかったのだが説明しないといけないためにそれをしなかった。真剣な表情をしてテレスを見る。


「直ぐにでも寝て明日には街に行こうと言いたいのだが」


紫苑のその言葉に何かと3人が疑問を持ったようで首を傾げたり、紫苑をジッと見たりと反応はそれぞれだ。


「テレスよ。お主は自分の持つ力を理解しておるのか?」


横にいたクリスとルーナがテレスを見る。しかし質問をされた本人も何か分かっておらず困惑している。それもそのはずでテレスには先程の力を行使した記憶を持っていない。そのために自身の力を一切と理解していなかった。


「分かっておらぬようだな。なら俺が大体のことは教えてやろう」


そう言って紫苑は彼女らの知らないであろう知識を説明することになった。


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