第25話安心
本当は2日前に投稿しようと思ってたんですが出来てなかったですね。次からは気をつけます。
あれから夜になり、野営をしているとクリスがふと起き上がった。それ自体は喜ばしいものなのだが本当に気の抜けた状態でいきなりだったために声を出して驚いてしまった。リオも同じくだ。しかし少し遠くに居た2人は何も無かったようにしている。
テレスは驚いた状態から我に返ると涙を流してクリスに抱きついた。
「いっ!?」
「あっごめんなさい!」
ボォーとしていたクリスに抱きついたは良かったが彼女が痛がるようにして声のない悲鳴をあげたことですぐにテレスは謝り離れた。
嬉しさと心配という感情が合わさり我慢できなくなり抱きついたもののクリスは怪我をしている状態だ。頭は血が出血していたために包帯が巻かれている。
血が出ているものはこれだけなので外見は痛々しいものの、見た感じの怪我はそこだけに見える。しかし体は手当する時に確認したが、バジリスクに吹き飛ばされたことであた体の上半身に大きなあざから小さいものたまで出来ていて見た目以上に重症である。頭だけでも結構なのにだ。
そんな状態を忘れて抱きついたことにテレスは恥ずかしくなると同時に反省した。
「テレス様、このぐらいの怪我は大丈夫ですよ。私を心配してくれただけでも嬉しいんですから」
クリスはニコッと笑ってテレスに微笑んだ。その様子に胸が痛くなる。
「このぐらいでは無いです!クリス、貴方は死にかけたのですよ?それをこのぐらいなど…痛かったのならもっと怒ってもいいのですからね?」
「そうですね。テレス様がそこまで怒ってくださるのは嬉しいです」
「ふん、あそこで油断するからあんな怪我したんだろ。自業自得だ」
瞬間空気が冷えた。毒を吐いてクリスを馬鹿にするルクスに2人が冷めた目線を送っていた。まるで吹雪に吹かれたような錯覚が起こる。
それはテレスとリオからの目線だった。その冷たさにルクスも冷や汗をかく。近くにいた八重香は少し離れて面白そうにことの成り行きを見守っている。
「ルクス、もう少しデリカシー持った方がいい」
「そうですよ!怪我をしたクリスにそこまで」
「いいんですよ御二方。彼の言うことは間違っていません。私があの時、油断しなければ良かったんですから…それは事実ですから」
クリスが2人を止めると先程まで極寒にいたはずの空気がまた、暖かなものに戻った。クリスの言葉に止まった2人だがルクスに見せる目線は容赦ない。その目線に耐えられなくなったのかルクスは顔を背け、言葉を発した。
「その、悪かった。言い過ぎたよ」
「大丈夫だからいいですよ」
「やめてくれ、お前が下手に出てるのは気持ち悪い」
少しだけ見える頬は赤く染っている。恥ずかしそうにそっぽを向く。それに対してクリスはポカーンとしていた。
そういえばクリスはルクスと初めて会った時から優しく接するなんてことはなかった。どちらかと言えばクリスとルクスはツンケンしていた。最初は主であるテレスを傷つけられそうになったために敵意むき出しだったし、その後の共闘の時も敬語は使って居たものの相手に気を許すようなことは無かった。なのにあんなふうに言うとは…その理由を考えればなんだか微笑ましくなってくる。
「何笑ってるんだよ」
テレスが笑みを浮かべているとルクスが怪しむようにテレスを睨むがそこで横から別に言葉が飛んだ。
「もしかしてM?」
「ちがーう!どこでそんな言葉覚えた!そんなこと里では一切使わないだろ!」
「ならなんで貴方は知ってる?」
「…企業秘密だ」
「長老たちに言いつけてやる」
「あーそれだけはやめろ!言うから、言うから!」
リオの一言に言いたくなさそうな彼は頭を下げて態度を変える。そこまで恐ろしいことなのだろうか。テレスには分からない。
年下のはずのリオに弄ばれている彼を哀れに思いながらクリスとテレスは見つめる。なにか主従関係ができかけているような気がした。
「なら言って」
「……実はな昔人間の街に遊びに行ってたんだよ」
「ふーん。人間嫌いの貴方が?信じられない」
「なんだ?それだけかよ」
「?もっと何か言って欲しいの?やっぱりM?」
「だから違うって言ってるだろ!なんだよお前、一体何があったんだよ?」
「ごめん。言いたくない」
その瞬間リオの目は明らかに暗くなった。2人の様子はテレスといたときよりも明るく、ルクスがどれほど信用されているかがわかる。同じ里で育ったのだから兄妹のようにも思えてしまうぐらいに仲が良く見える。だからまだ自分たちがリオと完全に打ち解けられていないのがわかる。
そんなリオの様子から相当なことがあったのだろうと思う。奴隷になりかけた、いや、実際になっていたのだ。先の紳士的な商人に助けられていなかったら今頃酷い目にあっていたかもしれない。テレスたちの知らないところで。
「そうか」
短い言葉だった。でもルクスは何かを察したように真顔になり、少しだけ悲しむように顔を伏せる。テレス達も考えることがあり、空気が悪くなる。しかしそこでその空気を壊してくれたものがいた。
「えっと、皆私を気遣ってくれたんですよね?ありがとうございます。そうですねこのままくよくよしているのは私らしくない」
「そ、そうだ。そんなんだったらその娘を守れないぞ」
「ふん、言われるまでもない。私はずっとテレス様をお守りする。この命ある限り」
「ふふ、ありがとうクリス。頼りにしていますよ。ですが守られてばかりはいられません!」
強い決意を込めて言えばクリスはええ!と返事をするが力強く言ったためか体が力んでしまってまた痛がてしまい、テレスはオロオロとしてしまった。
「まあとりあえず飯だ。ほら、この木の実でも食ってろ。血を作ってくれる鉄の実だ。鉄のような味がするが効果はある」
そう言ってルクスはポケットから真っ赤な木の実を差し出した。聞けばこの森にしかない貴重な木の実で血が流れすぎた時に使う薬にも使うようだ。先程、野営の準備の際に近くで見つけたようだ。そうして一行は真っ暗になった月の夜に疲れがどっと出たのか目をつぶれば一瞬のうちに夢へと流れてしまった。
暗い中で虫達は合唱をしている。今は真夏、虫達が元気になる時期だ。それと同時に獲物を求めて、色々な生き物は活発に動き出す。そこまで暑くなるような場所でもないために休むことなく、夜を駆ける。しかし危険な動物はここには近寄らない。なぜなら1人。ここを守護するものがいるのだから。強い殺気でほとんどの生き物はここには近寄らない。行けば殺されると本能で理解するのだから。しかしそれと同時に妖しい雰囲気がこの辺りを支配してもいるのだから、気にならないわけが無い。それでも行けないのはこの雰囲気が死への感じがより一層の強くしているためである。しかし、その中心に行けば誰もがその正体に驚くだろう。
(いつもの事やけど、あの子らうちの事忘れてへん?)
真っ暗な夜の中で白い毛皮をたなびかせて八重香は1人夜風に吹かれていた。




