第20話すれ違い
姿もいつの間にか元に戻り、テレスが霊気の修行を初めて3日、彼女の霊気の操作が格段に上がっていた。霊気を使い弾を作って高速で動かしたり、空中に浮いたり、光を出したりと色々とできるようになっていた。普通初めて使う力を感じることは天才で一日で出来るか出来ないかという問題である。それを一日もしないうちに感じ取り、しかも操っているのは、才能を霊気という力に極振りしてしまっているようなものである。そのために他がダメだと言わても納得出来る程の才能だ。
そんな才能溢れるルーナにリオは驚きを隠せなかった。勝手は少し違うものの半分は同じ力とも言える霊気を直ぐにあそこまで使えることは凄いと単純に思っていた。ただ1つだけ問題があった。
「んー、難しいものですね。なかなかに変換ができません」
そう言って苦笑いするテレスは今あることに挑戦していた。普通ならまだしなくても良いはずだが成長具合が早すぎるためにリオが次の段階に向かうことにするかと質問をするとテレスは目を輝かせてやります!といったので次の段階に向かった。
その次の段階と言うのが属性変換だ。魔法でも火を出すのにも魔力をそれに合して属性を火に変えなくては行けない。それにも才能と言うのが必要で適正属性というものがある。魔法なら努力をすれば全属性の変換が出来ないこともないがそんなことをできる人など限られている。普通の属性で8個、属性関係ない魔法が4種類存在する。その中でも普通の人でも2属性までだ。エルフの扱う理力も勝手は違うがこのような感じだ。
だが、 属性変換に精霊の扱う霊気というものは少し違う。精霊に子供という時代がある訳では無い。自然の中で精霊神によって生まれた存在。最初から知恵、知識が宿っている存在だ。そんな存在たちは生まれたときから1つの属性だけを扱う。炎の精霊が水や風を操れないように霊気とは1度属性が決まると決して他の属性に変換できないのだ。言い方を帰れば属性が最初から決まっている。逆に理力は霊気の影響を受けて、自然の力を扱うのに長けているが、しっかりと霊力の方の特徴もあり、属性を一つだけに縛られるということは無い。
属性が決まっているということは直ぐにでも霊気の属性変換ができるはずなのだがその様子が一切ない。
(霊気を持っている時点で普通とはちがうし、例外ってこと?)
とそのようなことを考えてリオは一応理力を例に見せながら属性変換を教える。よく良く考えれば霊気が属性を持っていないのが例外である証拠。あそこまで操れるならな必ず出来るとリオは思って3日、なかなかに出来ないでいた。あそこまでの才能があるなら直ぐに出来そうなものなのだが無理なようだった。テレスは最初よりと少し落ち込んでいた。それを白い狐である八重香を抱いてその悲しみを癒している。少し嫌そうにしながらも仕方なさそうに鳴きながら黙ってテレスに抱かれている。八重香はここ数日、リオかテレスに抱かれていて、ほとんど自由が無くなっている。時々嫌がり、最後尾にいる時もあるがほとんど諦めている。そんな彼女はずっと隠れながら危険な魔物が近づくと追い払っていたりする。
どうすればいいかと考えていたリオは自分ではなく。エルフの長老ならの何かわかるかもと考えた。
「私に教えられるのはここまでみたい」
「はい。この数日、ずっと教えて貰っていたのにごめんなさい」
「ううん。そんなことない。霊気を人間が持っている時点で普通じゃない。だから里に言って長老に聞いてみよう」
そこで主が落ち込んでいるのを察知した騎士が直ぐに励まそうと近づいた。
「そうですよテレス様!必ずその力を扱えるようになります!魔力でもそう簡単にできないことを貴方はできたじゃないですか」
「ふふ、2人ともありがとうございますね」
テレスは嬉しそうに微笑んだ。
「もしかしたら長老なら何かわかるかも。距離も、もうそこまでじゃないし直ぐに着くと思う」
リオは道を示そうと前を歩こうとした時、突然クリスが方を掴んだ。
「どうし「動かないで、何かいます」…」
シン、と周りが静かになり、八重香が唸って威嚇をする。耳を傾けると何かを這いずる音が聞こえてきた。それは巨大で長いもの。そう考えると突然、3人の目の前に周りの小さな木々をなぎ倒して、大きな樹の間をすり抜けて1匹の蛇が出てきた。だが、それは巨大で、恐ろしい殺気をはなっていた。3人の頭に過ぎったのは自分が丸呑みにされる光景。一瞬のうちにこの生物のやばさを理解した。
巨大蛇がこちらを眺めならゆっくりと口を開けて一瞬のうちに3人に大聞く開かれた口が迫ってきた。
最初に動いたのはリオだった。その身に宿る理力を使って植物を操り、蛇の侵攻を邪魔したのだ。しかしそれでも少ししか遅らすことは無理だった。
次に動いたのはクリスだった。剣を抜刀して巧みに蛇の歯に絡ませてその華奢な腕に宿る筋肉と魔力による強化で完全に防ぎきった。そして少し顔を上げて大蛇を確認しようとしたときだった。
(あかん!見たら死ぬで!)
その声が聞こえた瞬間にそのまま顔を背けた。しかしそれが隙になってしまいそのまま飛ばされてしもう。
大蛇がそのまま鋭い牙でクリスを襲った時に、テレスに捕まっていた八重香はその腕から飛び出し大蛇の前に立った。
(一体何処から出て現れたんや?いきなり現れたさかいに対応出来んかったわ。それにしてもこいつ。なんか目に持っとんな)
テレス達の前にたった八重香は結界を張った。その結界は相当なようで大蛇が追撃をしようとした瞬間には見えない壁に当たるように止められてしまった。
「こ、この蛇は一体…」
「そ、その蛇多分バジリスクだと思う」
「バジリスクって確か蛇の王のことですよね?その牙は全ての生き物を殺す毒を持ち、目を合したものを殺すと言うものだったはずです」
「うん。それであってる」
(道理で嫌なものが目に集まってるわけやわ)
通れない壁にイラつきながら暴れるバジリスク。しかし八重香の結界は相当なもののようで壊れる素振りすら見せない。そんなために警戒はしてもそこまでの慌てぶりはない。しかし危険であるのもまた事実であった。
(でもまぁ、あれぐらいやったうちだけでも殺れんことも無いなぁ)
八重香は誰には、その場にいる人間に察知されずに内心でニヤリと笑う。それを察知してなのかバジリスクの動きが固まった。
「何やら動きが止まったようですね。今のうちです。ここから離れましょう!」
「は、はい!」
クリスが振り向いて2人に言う。テレスは直ぐに応え、リオは頷く。
(仕方あらへんか。護衛やし戦っても意味あらへんし)
八重香はしぶしぶ反対方向に行こうとする3人と一緒に行く。その間にも結界が壊れることも無く、その場に残り続けて蛇の王を足止めする。八重香の意思がない限りは結界が無くなることは無い。それほどに八重香もまた強かったということになる。
八重香は力があるが闘争心が強い訳では無い。どちらかと言うとやらなくてもいいことはそこまで積極的にやることは無い。軽い面倒くさがりというわけでもある。やりはするがそこまで積極的という訳では無い。主が関わるから好戦的になっているわけである。まぁなんやかんやで面倒見がいいほうではあるが。
八重香の好戦的になっている思考にも気づかずに3人は走り続ける。後ろからバジリスクの耳をつんざくような声が響いて来るのも無視して前に進み続けた。
走り続ければいつしか終わりが来るものだがある程度走った3人はテレスの限界が現れ、リオからも限界と言う声が上がったために止まり後ろからの気配を見て追ってきていないことを確認して休息を取る。クリスと八重香以外の2人は止まると直ぐに膝を着いて座り込んだ。全力疾走を前触れもなくした為に仕方の無いことだ。一人は亡国の姫でもう1人は少し前まで奴隷。体力がないのは仕方がないと言えるが。この自然でそのようなことを言えることは無かった。それでも2人は走れていた方だ。
2人が限界まで走ったことにより休息をとっている間、クリスは周りの安全を確認するために動き出した。がその時、八重香の唸り声を聞いて直ぐに警戒を強め。剣に触れる。
「誰かいるんですか?」
「キュー。キュキュ」
鳴き声を発しながら頷く八重香を見て辺りを見渡す。
八重香は動物のために信じなさそうであるがクリスはここ数日で見た、八重香の力をある程度は知っている。結界を張ったり、言葉を理解したりと普通ではないことは紫苑が召喚したと聞いた時から理解していたようですんなり信じられたのだ。
そうして警戒している1人と1匹の姿を見てテレスたちも疲れた体を無理やり動かして警戒する。できるだげ2人の邪魔にならないようにしながら。
そうしているとガサっとなる木々の葉の間を見るとなんとなしか人影が見ることができた。
「誰だ!そこにいるのは!」
木々の間にいる人影にクリスが叫ぶ。もしかしたらエルフであるかもしれないと思ったからである。すると直ぐに応答があった。
「ここは我らエルフが護る森である!それを知っての侵入か!」
若い男の声であった。しっかりと声変わりした後の声であることが伺える。そんな相手はどうやらテレス達がこの森に理由もなく来たと思ったからであるようだ。でもそれも致し方ない部分もあり、エルフに近づく人間など、奴隷のための狩りというようなものである。ずっと若い姿でいるエルフは人間にとってはとても価値があるのだ。
そのために警戒を取るのは仕方の無いことだ。
「はい!分かっております!ですがわたした「やはりか!貴様らはまた我らを捕まえに来たのだな!」ちはって違います!私達は」
「問答無用!」
何か勘違いされたようでエルフの若い男は姿を見せないままでそのまま自分の中で解釈をして、怒ってしまっている。しかも聞く耳も持っていない。これは何処ぞの騎士と侍のやり取りとデジャブであるのは気のせい…のはず。
そんな中で男の怒声とともにスパンと風を切る音と共に鏃がテレスの前に向かって来た。どうやら男は殺す気であるようである。
「キャッ!」
そう言ってテレスは目を閉じるが一向に衝撃は来ない。代わりに聞こえてきたのはバキッという音だった。恐る恐るテレスが目を開けるとそこには剣を抜刀して矢を切り落とした騎士クリスと、テレスを守るように立って目の前に結界を張る八重香がいた。
ミスった。八重香さんいると大体の敵には勝っちゃうじゃん。自分の首締めに行っちゃってるけど頑張りやす!




