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鬼神剣客伝【改訂版】  作者: 春好 優
第1章亡国の王女たち
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第18話悪魔と傲慢

戦闘描写がだいぶ苦手なのでこれからもっと書いてなれるように頑張りたいですね

影の海から出るとそこには見覚えのある町が広がっていた。しかしその光景は先程とは明らかに違う点が2つはあった。1つ目は街の全て黒だということ。そして2つ目は太陽が赤いということだ。

黒い世界に赤い月、不吉という言葉が良く似合う場所である。そして何よりそこに黒い人型の何かが動いているのだから余計に不気味に見える。しかも紫苑が辺りを見渡せば地面に黒い手が落ちている。その時点で紫苑はここがどういう場所なのか何となくだが理解出来たと思う。


(ここは…おそらくは裏の世界か。光によってできる影が作り出すけ世界と言ったところか)


例えるなら鏡。床に設置されている鏡に人が立つとしよう。鏡には自分の足の下から先に、自分と全くの同じ虚像が自分と足を合わせて下に向かって伸びている。つまりは鏡にたった人間が現実世界、虚像がこの黒い世界と言えるだろう。だからここにあるのは現実世界と全くの同じものしかしここに入って来た紫苑は異端なのだろう。本当ならここに彼自身の影が動いているはずなのだから。


(俺がここに居るなら、現実でどうなっておる?)


そんなことを考えていると自分の周りに黒い人影達が紫苑の周りに集まりだした。特別に紫苑に気づいているのではなくて、紫苑の先にある手に集まっていた。人の中には手が無い人影があったのでどういうことかはある程度分かる。テレス達の影も既にないのでもう逃げたことが伺える。

紫苑が街中を見渡していると突然気配が現れた飛び退いた。気配の元はすぐ背後、完全に突然だった。


「ふふふ。やはり来ましたね。見捨てればいいものを。人間は甘ちゃんですね」


「貴様…悪魔か。…余計なお世話だ」


紫苑が先の方向を見るとそこには、人の体に髪は影のように黒く短い。本来白目であるはずの部位が完全に黒くなっている眼球を持っていた。しかし目、以外はとくに怪しい点というものは無く、人間の男と行っても言い訳はまだできるだろう。悪魔という存在自体、人間世界では伝承で残っているがそれら全て人型と言うものは一切残っていない。どちらからと言うと大きな体に牙、そして翼という本物の化け物と言うものしか残っていない。紫苑自身も悪魔を見るのは初めてだ。

リアムのように真実を見るような目を紫苑は持っている訳では無い。そんな紫苑が彼を人間ではないと思ったのはその気配からだった。紫苑は意思あるものの気配を感じ取れる。つまりは気配に敏感な方である。だから人間でないことには直ぐに気づけ訳である。だから半分は確信を持って言ったが半分は当てずっぽうな部分があった。


「ほう?私を悪魔と見破りますか。…別にかくしているわけではありませんが完璧に人の気配にしていたはずですが…貴方魔眼も持っていないようですし…何者ですか?」


「貴様ごときに言うと思うか?それよりもルーナ、拐った娘はどこだ?」


そう言って紫苑は刀に手を添える。ここは全てが影で出来たような世界。言うなれば影の楽園。何処までかは分からないが、相手は影を操る悪魔だ。油断は出来わけが無い。だから、いつでも攻撃できるようにするための準備をして相手の首を狙う。


「簡単にはこたえてくれませんね。ええっとあの娘でしたか?質問を質問で返しますが、わざわざ人質になるような人間を貴方に教えるとでも思いますか?」


「…思わぬな。それなら力づくで聞くだけだ」


紫苑はそう言うと足に力を込めて相手に目を向ける。距離は10メートルほど。


一瞬歩一


足に溜めた力で一気に地面を蹴りって悪魔に向かう。力を入れ過ぎれば相手を超えてしまうのでチカラを調整する。次の瞬間には悪魔が目の懐に入っており、そのまま刀を抜刀した。刀はそのまま首に吸い込まれるように向かっていき首は一瞬にして絶たれた。しかし先程まで生身のような体をしていたそれは一瞬にして黒い塊となって溶けだした。


「ふふ。血の気が多いようで結構ですがそれは私ではないですよ?動物では無いのですからバカ正直に突っ込んで来るのはやめてはどうですか?そんなんだから護衛対象を簡単に奪われるんですよ」


図星であった。全く反論すら出来ないことである。確かに相手の存在を気づきながら警戒はしたものの結局は油断して護るべきものを攫われてしまった。大丈夫だと思っていた。それが慢心であると気づかずに。

男の言い方は神経を逆撫でするような言い方で正直イラつくがそれでも今の紫苑の心に槍のごとく刺さるような言葉になっている。しかしそれを甘んじてウケて落ち込むほど紫苑の心は弱くはなかった。ただその言葉を受け取るがタダで傷つけられる気がないだけである。


「俺は確かに守れなかった。それは身に染みておる。俺の慢心が招いたこと。その始末は付けねばならぬ」


後悔すれど立ち止まらず。それが今の紫苑の気持ちだった。


「ふふふ、口ではなんとでも言えますよ。そうですねぇではこうしましょう。少しゲームをやりませんか?」


「げぇむ?遊戯のことか。そんなものする暇など…」


「これでもですか?」


そう言って悪魔は手を影にかざした。するとそこから銀髪の少女、ルーナが出て来たのだ。

簡単にルーナを出したことや先程簡単には教えない、と言っていたのにいきなりのことで驚いていた。その本人である悪魔は薄ら笑って感情が読めない。

その隣に捕まっているルーナはと言うと、彼女はいきなりのことで困惑して悪魔と紫苑を交互に見やっていた。


「貴様、何をする気だ?」


「ふふ。簡単ですよ。ただ単に彼女を見つけるだけでいい。」


愉快そうにそう言う悪魔に対してルーナははっとしたように紫苑の方を向いた。


「シ、シオンさん?なんでここにいるの!テレスは?一緒に逃げたんじゃないの?!」


「テレス達は先に行かした」


「なんで来たの!わざわざ来る必要なんてなかったよね?相手は悪魔なんだよ?シオンさんでも勝てないかもしれないんだよ?」


「自分より強いからなど、己より強いものが出てきてお主らを見捨てるならお主らに手を貸そうなどはなから思わぬ」


ルーナは紫苑の言葉に涙を流した。見捨てられたと思ったのだろう。助けは来ないと思ったのだろう。死への恐怖を抱えていたのだろう。それが人が助けに来たことで彼女の涙を止めていたダムが決壊したのだ。


「ふふふ。いいですねぇ。実にいい。本当に面白い茶番ですね。ただ、第三者から言わせてもらえば、娘一人守れないやつが何をほざいてているのですか?守らなくては行けない王女を危険に晒してまでね。見捨てればいいものを助けに来てまで、本当に愚かですよ」


悪魔は愉快そうに紫苑へと言葉を投げつけるが紫苑は怯むことなく相手を睨んだ。ただ、それは相手に侮辱されたからでは無い。相手への燃える闘志を示したのだ。


「…貴様の言うことは何も間違ってはおらぬ。だがな、抱えたものを見捨ててなにゆえ誇りを持てようか!!」


暗闇の中でその声は響く。決意の持ったその言葉はまるで力を持つように男の耳へと向かっていった。

同時に紫苑の目は鋭くなり相手を射抜くように捉えながら刀に手をかける。


「おお、怖い怖い。なるほど、この程度では動揺はしませんか。ふふふ、先程も言いましたが今からやるのは所詮ただの隠れんぼ気楽に行きましょう」


悪魔はルーナを含めてそう言うと影の中へと吸い込まれて行こうとしていた。


「まだやるとは言っておらんぞ!」


「もう遅いですよ。では頑張ってくださいね。ふふふ」


そう言葉を残して相手は完全に消えた。

紫苑は どうするべきか悩んでいるとどこからとも無く、空中から悪魔の声が聞こえてきた。


[さぁ、もうゲームは始まっていますよ。]


(うるさいやつめ)


紫苑は言葉に出すことなく、空中を睨みながら心の中で悪態を着く。

相手に文句を言ったところでどうせ聞きもしないだろうし、聞いているかすら怪しい。だから声は心にしまった。

そんな相手に本当に隠されているかすら疑わしいのだが手掛かりもあるはずもなく、紫苑は宛もなくルーナを探し始めることにした。

紫苑は初めに近くの建物の屋根へと飛んだ。文字通り飛んだ。しかもひとっ飛びでだ。高さ4回はあるような建物のはずなのだが紫苑は軽く飛び上がった。

屋根の上からは広い範囲が見えるのだがその全てが黒い。黒い中に黒い人や物があるので全てが同化して分からないものになってしまう。だがかろうじてだが赤い太陽のおかげである程度の判別は着くことが出来る。


「あーそういえば、よいものがあったな」


そうして紫苑は自身に宿る力、霊力を意識を集中させ集めるとドーム型に放った。ドーム状の霊力は全ての物を透過しながら触れた物の位置と形を教えてくれる。これはどのような力でも応用できる物で魔法で言うならサーチという物である。

そのおかげでドームにぶつかったものの情報が紫苑の頭の中に入ってきて周囲を確認できた。目で見るよりも認識しやすく、この場では1番役に立てる術であった。

そんな術で紫苑はルーナを探すのだが人の影自体が動いているためになかなかに探しずらい。ルーナに似ているものを探すがなかなかと見つからない。

紫苑はその場に留まることはなく、そのまま屋根を移動しながら目線をそのままに1歩踏む度にドームを放ち情報を得て行った。


(あの悪魔め。一体何処に…下から来るな)


なかなか見つからない気配に焦りを見せる紫苑だが、彼の足元にいきなり感じた気配にその場を冷静に飛び退く。するとそこには槍のようなものが飛び出してきていた。

紫苑は思わず舌打ちをする。油断をしていた訳では無いが影の中にいては気配がなかなか掴めない。しかもその黒い世界で見にくいのに邪魔が入る。やってられるものでは無い。だが、相手も手出ししないとは言っていない。これ自体に意味があるのかすら分からないのにこのまま踊らされていいものかと紫苑は考える。


(俺も少し鈍ったか。戦いはまだしも気配の読みが甘い。昔なら勘だけで行けたものだがな)


そんなことを考え、飛び回っていると何回か邪魔が入ったが紫苑は全て余裕で避ける。

そんな中でふと、建物の上から、下の路地裏に強い炎のような気配を感じた。一瞬だったがそれにしては強い気配だった。そのために動いていた足を止めてその場に飛び降りる。すると近くにあった箱からルーナと想われる形を感じ取り、箱に近づく。そこからはしっかりと気配も感じ、箱に耳を貸せば小さな寝息が聞こえてくる。それは明らかに影との違いを表していた。影からは人の気配もするし動く、だが生きているために必要なものがない。目はないし、息はしない。そういう違いがある。

ルーナであると確信した紫苑は迷わずに影の箱を壊す。壊した隙間からは人の素肌が見えた。


「ルーナ!」


箱の中へと手を伸ばそうとすると左から影の槍が迫り、紫苑は刀を半ばまで抜き防ぐ。紫苑は無傷だったが箱は再生をして元通りになっていた。直ぐに箱を壊すが中には何も無かった。


「ふふふ、お見事ですね。見事見つけられましたね。ですが残念。また、貴方の油断が彼女を奪いました」


「……お主は何が目的だ」


「そうですねぇ。あえて言うなら我が主の望みのために。貴方をできるだけ観察できるようにとのことでしたからね」


「そのためにあの娘を拐い、隠れんぼなどしたというのか?はなから俺が目的だというわけか?」


紫苑の問に悪魔は淡々と答える。


「ええ、そうですね」


「つまりは俺があの娘を、あの娘らをまきこだと言うことか…」


「まあまあ、そう落ち込まないで。普段のあなたならもっと冷静なはずのようですがね。自身のせいというものは堪えますか。仲間が関わるとこうも変るのですねぇ。あれですかね過去に何かありました?落ち込んでいると言うよりは焦っているという方が適切ですかね。ああ、ご安心ください。あの娘はしっかりと返しますから」


紫苑は深呼吸をして心を落ち着かせる。指摘されたのは癪に触ったものの紫苑自身が焦っていたのは本当の事だった。


「信じられぬな。ただ、逃げるなよ?貴様を倒しあの娘を救う」


紫苑は刀を構える。

悪魔は光のない笑みを浮かべながら攻撃的な顔をして紫苑をみやる。


「ふふふ、今度は逃げませんから大丈夫ですよ。そうそう、この世界で起こったことは現実では特に影響はありませんので気にしませんように」


突然の悪魔の告白に目を見開いてい驚く。普通は自身に有利なことをわざわざ教える必要などどこにも無い。実際に紫苑は現実世界に影響が出る可能性があったためにどう戦うかを考えていたのだから。だから警戒して思わず聞いてしまった。


「何故それを言う?有利に立てたものを」


「ふふ、簡単です。貴方の全力を見るため。さあ、楽しい時間の始まりですよォ」


そう言って悪魔は影を纏い、紫苑に襲いかかる。影を纏って巨大化した爪を紫苑目掛けて振り下ろす。


「シャドウクロウ」


紫苑はそれを刀を瞬時に抜くと直ぐに受け止める。悪魔は笑い紫苑は無表情だ。お互いの力が影の爪と刀によって競い合わされていた。しかし力は紫苑の方が上だったようで直ぐに押し返し力の強さを悪魔に知らしめた。そして直ぐにまたお互いに爪と刀での剣戟を始めた。何度も何度も撃ち合い鉄と鉄が合わさる音が響く。


「ふふ、中々の力ですねぇ。いい、実にいい。もっと私を楽しませて、くださいよぉ!」


そう言うと悪魔は笑いながら紫苑との距離を離した。十分に距離が離れたのか悪魔は手を広げて周りに10本程の影で出来た触手を出現させた。その触手は悪魔の体の一部かのように動いている。魔法で作り出したものとは、到底思えないものだ。


「さあ、踊りましょうか」


触手は全てが悪魔の傍から一気に紫苑の方へ襲いかかった。紫苑の胸を狙うものや頭を狙うもの、足を狙うもの、腹を狙うものなど全てが別々の所を狙う。正面以外に背面や横にも影は迫っており、避けることは難しかった。

紫苑はそこでギリギリのとこを避けるという選択肢を消して、迎撃のために刀を構える。そして迫る1つ目の影を弾き飛ばすとそのまま影を避けるように飛び、体を回転させながら影を紙一重に避け、そのまま刀を体の回転と共に振った。すると順番に刀によって影は弾かれてしまった。

紫苑は難なく着地して悪魔を見据える。悪魔は笑いながらこちらに来いと言うように指をクイッとしている。


「…今度こそ貴様を斬ってルーナを助ける!」


「ええ、その殺気いいですねぇ。貴方なら簡単には堕ちてくれませんよね?この舞台から」


一シャドウランス一


複数の影の槍が紫苑を狙う。周りには空中や地面から紫苑を狙う。


「瞬歩」


紫苑は直ぐに姿勢を前に向けて地を蹴った。紫苑が動き出すと同時に彼を狙った槍が発射される。

発射された槍の速さは相当なもので、音が来ると同時に刺さっていた。そんな槍が紫苑へと向かって行くのだが、紫苑の方が速かったためか槍が紫苑を仕留め損ねて地面に刺さると既に離れていたのだから。紫苑はまっすぐと進んだ。

次の瞬間には悪魔の目の前にいて刀を握った手を後ろに引き、切っ先を相手に向ける。


「鬼樹流・餓鬼喰い」


相当な速さで突いた刀は心臓に当たった。刃先が上になっていてそのまま上に持ち上げられ肩を裂いた。


「ぐっふふ、相当な速さですね。悪魔である私が目で追えないとは。ですが残念です。ここが私の領域でなければ貴方は勝っていたでしょうに」


そう言いながら悪魔は右手に槍を謁見させて紫苑に向かって振り下ろすが直ぐに紫苑は飛び退く。


「再生か。面倒だな」


「ええ、そうですね。私はまだ負けてあげる訳には行きませんので」


「そうか……なら細切れにしても生きてられるか試してやろう」


2人は不敵に笑いお互いを睨んだ。


(ああは言ったは良いが、ここでの優劣が明らか。ここは影の領域。つまりは相手の陣地。近づかなければ細切れには出来ぬ。それに動かし放題である影を動かさぬのは俺に手加減がしておるからか?影が苦手なものといえば…遅すぎたかも知れぬがやってみるか)


紫苑は相手見据えながら切っ先を向けて空いている左手を相手に向けた。


「さて、これで最後です。楽しい時間をありがとう」


-シャドウイーター


悪魔は周りの影で出来たとの全てを操り。紫苑の周りを囲んだ。


(やはり手を抜いておったか。…この状況、上かもうひとつにかけるかか。ならやられっぱなしというのもな、ならかけてやるか)


紫苑は手を気配の感じる場所へと向け、掌から炎を出した。それは白い力霊力によって生み出される火玉であった。


「火の相・焔火」


瞬間紫苑の掌の火玉は影へと放たれる。影に当たると同時に火の玉は爆発するかの勢いで燃え上がり辺りに熱と光を撒き散らす。

紫苑はそれと同時に駆け出し、飲み込まれる焔を追うように飛び込み、刀を横に構える。


「鬼樹流・鬼斬一閃・乱」


紫苑が右薙のように放った技は普通なら何も出ることはないのだが斬撃が飛びそのまま悪魔に飛んで行った。悪魔もいきなりのことで驚いたのか目を見開いていた。最後のあがきでか斬撃を陰で飲み込もうとしたがそれすらも飛び越えて斬撃は当たってしまった。

当たった斬撃はすぐさまに拡散するように、悪魔にひびが入ったかのように広がっていた。紫苑は一刀をもって細切れにするために斬撃を飛ばして拡散させたのだ。

紫苑はゆっくりと悪魔の方に歩きながら、崩れ去るシャドウイーターと呼ばれるものから出ると悪魔に近づいた。気配は完全に弱まっており今度こそ仕留めたと確信できた。


「ふふふ、まさかこのような技があるとは。ですが不快ですね。そのような力があるなら初めから使っては良かったでは無いですか?一瞬で倒せたものをなぜ?手加減でもしていたのです?昨日見せた黒い炎すら使わなかった。術に関してはそこまで発動が早い訳では無いようですから分かりますがね」


「手加減はしておらぬ。これが今の俺の全力だ」


「良くいいますよ。実力が安定していない人が」


悪夢が紫苑を睨む、だが紫苑は何処吹く風である。


「まあ良いでしょう。どちらにせよ貴方は私に勝った。なら悪魔として約束は守りましょう」


悪魔は指を鳴らした。指の音が響き渡ると影の中から少女、ルーナが出てきた。なんともあっさりとした私かたである。

紫苑的にはもっとなにかするかと思っていたのだが。


「ふふふ、不思議そうですね。悪魔とて色々と性格は持っておりますが約束は必ず守ります。まあ私の場合はギリギリですがね」


「口約束など守るようには思えぬのだが」


「ええ、いつもならそうですが貴方は私を倒しましたからね。私も楽しめましたしそのお礼も兼ねてね。今度は全力の貴方と戦いたいものですねけ」


「ただの勝負事なら乗ってやるが俺の友に危害を加えるなら容赦せぬぞ」


「ええ、今度は普通に殺りますよ」


悪魔はそう言って微笑むと斬撃が完全に広がったのかその場に細切れになって崩れ落ちて言った。


「最後までよう分からぬやつだ」


勝負は呆気なく終わった。しかしまだ全てが終わっている訳では無い。


「そこで俺を見ているやつ。姿を見せよ!」


実態化していた影が崩れていく中で紫苑は空中に向かってそう言った。すると空中に目玉のようなものが出てきたのだ。


「あらら見つかちゃったか〜でもそれぐらいしてくれないと困るけどね。ねえ、どうしてわかったんだい?」


「この建物俺らが無茶をしても一切傷つかなかったしこの騒ぎで誰もこなんだ。やつの仕業かとも思ったがそれらしき様子もなかった。だから第三者がいると思った」


「なるほどね」


目玉からする緊張感のない声は一切聞き覚えのない声である。どうやら先程の悪魔の親玉と言ったところか。そんな相手に刀を構えて警戒にあたる。だがそんな紫苑に相手は戦意の無い言葉を送ってきた。


「ち、ちょっと待ってくれよ。僕に君の相手をする気はさらさら無いよ」


「それを信じろと?姿を表さない相手に」


「信じるしかないね。それに僕的には今の君と戦っても面白くないだろうしね」


その言葉に反応してしまった。つまりは図星ということだ。そう言われて目玉を睨む紫苑におー怖と言って笑う男。すると先に口を開いたのは男であった。


「まずは自己紹介をしようか僕はそうだねぇ。仮にでもマーリン。傲慢のマーリンとでもしておこうか。七大罪の1人で邪神の使いだねーよろしくー。あっそうそうさっきの悪魔はカリストファっていうんだー」


余りの自然に言うマーリンだが結構な重要な情報にポーカーフェイスを決め込みながら紫苑は心の中では驚いていた。邪神とはこの世を滅ぼすと言われている神の1柱で今は封印されていると言われている。殆どおとぎ話の存在であるために紫苑も驚きを隠せないでいる。


「邪神の眷属だと?貴様がか?」


「そう言ってるじゃないか。そんなことよりさ君なんで本気出さないの?君ならあんなやつ一瞬だったよね?女の子のことも考えても何かねぇ不自然だったよ」


「ほざけ。貴様に何がわかる」


「わかるさ。君が数え切れないくらいの人たちを殺しているってことはね」


「それは…」


「違うとは言わせないよ。そんなに血の気配をさせておいてね。でもそれ以外にも君が複数の力を使うのはわかっているんだよ。さっき使ってた力は白かったし霊力かな?でも何か不安定だ。前にゴブリンに使っていた力の方が安定していたようだけど今は使わない。赤黒い炎を使えばカリストファの再生も対応出来たのにね。どうして使わなかったんだい?」


紫苑は何も言えなかった。ただ静かに相手の言葉を聞くしか無かった。しかもマーリンは先のゴブリンにも関わっていたという。


(そういえばあのゴブリンからしていたもうひとつの視線はこやつからしていたのか)


相手の言葉を聞いて考えて事をする紫苑は顎に手を当てていてどうにも考え事をしていますと言っているようなポーズをしていた。


「俺はどちらにしろ本気を出していた。終わらせられる戦いをわざわざ長引かせたりはせぬ」


これで納得してくれそう紫苑は思っていたそしてマーリンはそれを聞いて黙り込んだ。

紫苑は消えたかと思いルーナの元へ行こうとするとまたもや聞きたくなかった声が聞こえてきた。


「わかったよ。どうやら君は実力を隠している。いや使えないと言ったところかな?なら今の君に要はないかな。本当の力を出すまで見ているよ」


「おい貴様それはどういうことだ!」


男のストーカー発言に紫苑は声を荒らげ問いただそうとしたがマーリンはそれを気にせずに言葉を続ける。


「じゃあね〜あの王女様にもよろしくねえ」


マーリンのその言葉を最後に目玉は爆発して消えて行った。しかし安心するどころか不安が増すばかりである。何故クリスでもルーナでもリオでもなく王女テレスを言ったのか気になって仕方がない。しかし考えたところでどうにかなるわけでもなく仕方なしに考えを中断して紫苑はルーナの元へ行く。

紫苑はルーナを見た。ただ眠っている状態であることがどこまでも紫苑を安心させた。どうやら魔法で眠らされているようだ。

テレス達は脱出できたのだろうかと気になるところであるが今はここを出ることが先決であった。しかし先程ならまだ時間も経ってなくて帝国兵もまだ動けていない状況であったために逃げやすかったが今はもう捜索を開始していると考えられる。そのために見つからないように夜に動くべきだと考え紫苑はルーナの横で休み始めた。






数時間後

世界が闇に包まれる時間帯にルーナは目を覚ました。頭の下には少し柔らかい物が置いているけど地面の硬さも感じるぐらいには枕ではないと思えた。顔の横を見るとここ数日で見慣れた紫苑の笠が置いてあり近くに彼が居ることを理解する。

起きたばかりで何かわからなかったルーナは次第に自身のみに起きたことを思い出していた。ルーナは影の男に捕まった後に何か魔法をかけられて眠らされてしまった。つまり自分は誘拐されていたということだ。それを踏まえて紫苑さんがいるということは助かったということだが自分のせいでこの街に長居させてしまっていると思うと申し訳なかった。

まだ少し寝ぼける頭を抱えながら体を起こし周囲を見渡すと木の板などが散乱していて直ぐ近くに紫苑が座っていた。一体ここで何があったのか、気になるところではあるのだが気にしている暇はあるのかは分からない。


(テレス達は居ないってことは先に行ったのかな?それなら早く合流しないと)


そんなことを考えてくると不意に声をかけられた。


「起きたか。体は大丈夫か?」


声をかけたのは紫苑である。というか紫苑以外にいるわけが無いのだが。

紫苑の方向を向きながらルーナは笑顔を浮かべながら答えた。


「大丈夫だよ。ありが とう紫苑さん助けに来てくれて。すごいね紫苑さんは、悪魔を倒しちゃったんだ」


テレスは最後までお礼を言ったのだか実際に声を出すと震えていた。それが疲労によるものか恐怖によるものかは分からない。けど今ルーナの心は安心感でいっぱいであった。帝国兵にすら勇気を持ってして反抗していたルーナは今初めて涙を流していた。

怖かったのだ。テレスを助けるために帝国兵に立ち向かった時も今回のように攫われたことも何よりも死を実感する場面であったのに経験がないルーナが涙を流さない方がおかしかった。

そんなルーナに紫苑は優しく抱きしめた。今のルーナには今までで1番暖かく感じることの出来る抱擁であった。

ルーナが泣き終わると恥ずかしくなり直ぐに紫苑の腕の中から逃げていった。何処ぞの狐がいたら嫉妬していたかもしれないが。


「では早くここから出ようか」


「うん。早くテレスたちと合流しないとね」


そう言ったルーナに紫苑は微笑みながら刀を地面に振るう。斬られた地面はくっきりと開き水面のようなものが出る。紫苑はルーナに安全のために札を貼って「少し苦しいぞ」と言ったあとにそのまま潜り込む。最初とは違いどうすれば良いのかはわかっていたので直ぐに進んでいく。上へ上へと進んでいくと薄暗い光のような光が現れた。紫苑は迷わずにそれに飛び込んだ。飛び込んだ先はどうやら路地裏のようだった。


「ぷはー。もう!言って直ぐに入るなんてひどいよ!少しは待ってくれてもいいのにぃー」


「すまぬ。そう怒るな。急いでいだよ」


「それとこれとは別!心の準備ってものが欲しかったんだよ!」


怒った様子を見せながらもルーナは楽しそうにしている。どうやらそこまでは怒っていないようだ。ルーナの怒りも収まると直ぐに外に出るために動く。

最初とは違い目指すのは外壁でそこまでは裏路地など狭い通路を通り帝国兵に出くわさないように紫苑が先頭になって進んでいた。道中紫苑がルーナにテレス達が先に言った経緯を話しているとお腹のそこから笑いだしそうになってしまっていた。

そうこうしているといつの間にか外壁に着いていた。外壁は高く周りには入口のような場所は見当たらなかった。どうやって行くのかと思っていると紫苑が失礼と言ってルーナをお姫様抱っこして飛んで行った。比喩ではなく文字通り。段々と壁の頂上まで近づくと空が近くなったような感覚が出来て夜空をすごく美しいものに感じた。

どうやって飛んでるのかと思っているとどうやら空中を蹴っているようで原理は分からなかったが空中に足場を作っていたようだった。

壁を超えると今度は落下来ていきそのまま落ちていたので悲鳴をあげそうになった。あそこまで近くに感じた空は元通りになっていて少し名残り惜しい気分になっていた。

紫苑はルーナを下ろすと直ぐに森の中へと入って行く。それに続きルーナも森へ。

目的地は紫苑だけが知っていて何が起こるか分からない森へ入るのも躊躇われる。それでもルーナはテレスと再会するためにこの先へ進み出すのである。

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