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鬼神剣客伝【改訂版】  作者: 春好 優
第1章亡国の王女たち
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第14話痴話喧嘩?

やる気出てきたぜ

あれから少しして全員が食堂に集まり食事をした。食事の際に紫苑は慣れないスプーンやフォークの使い方を横にいるテレスに教えて貰い少しだけ頬をほんのり桜よりも濃い色にしながら食事のマナーを教えて貰っていた。

この大陸に来てそこまでマナーについて学ぶこともなかったために上手く使えないのは仕方が無いのではなかろうか。紫苑は少しだけ心の中で言い訳をしていた。

だがまぁ驚くのは食事の際にクリスに言われるまで笠を被り続けていたことが驚きであるが。

どうやらこの大陸に来て殆ど野宿をしていたために笠を外すことは無かったようだ。寝ている間もなのかと思っていたら座って寝ていたようだ。その答えにその場のほとんどが苦笑いか笑い転げていた。笑い転げていた者については言う必要も無い。慣れとは怖いものだ。

そうして食事が終わった後に紫苑は執事に連れられて風呂に連れていかれた。道行く途中に何度かメイドとすれ違うのだがどれも紫苑を見る度に凝視したり2人で居るならば話し合ったりとしていた。それに気づいた時紫苑は首を傾げていた。メイド達は執事に睨まれると直ぐに消えていった。執事が言うには余り外に行かないメイドは屋敷内の男性にしか会ったことがないために免疫が少ないそうだ。だから紫苑は新鮮なようだ。この屋敷には男性は3人しかいないらしい。

風呂に入る前に束ねられた髪を解いて風呂に入る。その髪は肩までかかる程だ。後ろ姿だけ見たら女に間違えてしまいそうだろう。前を見ればギリギリ男であると理解出来る。

紫苑は体を洗い、湯に浸かると直ぐに出てしまった。カラスの行水と言うやつだ。温まるだけで疲れを癒す気は無かったようだ。

着替え場で服を来て外に出ると今度は執事ではなくメイドだった。メイドは淡々とした感じで紫苑を部屋へと案内して行った。










「こちらがシオン様のお部屋になります」


そう言ってメイドは扉の前にたった。普通の扉だ。


「かたじけない。礼を言う」


「い、いえ滅相もございません」


紫苑が礼を口にすると慣れない言葉であっだろうに、お礼と理解してメイドは頭を下げた。メイドは先程の堅物のイメージを壊し感情を露出しかけている。男性なれしていないメイドだろうか。


「そこまで緊張するな」


「い、いえ緊張などしておりません!」


「しておるではないか。部屋で休んで行くか?」


「い、いえ大丈夫ですので。お気になさらず!」


紫苑の言葉にメイドは慌てて否定する。流石に休めるわけもあるはずは無い。メイドはこのあとも仕事があるのだから。メイドは顔を赤らめている。

すると突然、紫苑の腹に衝撃が走る。


「……!?」


「あの、どうかしましたか?」


「…大丈夫だ。問題ない」


「?そうですか何かございましたらいつでもお声がけ下さい」


メイドはそう言うと足はやにその場を去っていった。少し急いでいる様子のメイドに疑問符を抱くものの忙しいのだろうと紫苑は放置した。それよりも気になることがあるからだ。

紫苑は腰にある異空間袋、鬼空之域を見る。そこには特に変化は無いものの少しだけ袋が開いていた。

袋を凝視していると袋の口が大きく開き人が一人出て来た。


「八重香よ、なぜ俺を噛んだ?…痛かったぞ」


「ふん!あんさんの心に聞いてみたらいいんとちゃう?」


八重香はそっぽを向きながら怒りをあらわにして、紫苑に嫌味気に言った。

紫苑は八重香の様子に彼女が何に怒っているか何となくだが理解した。


「すまぬ。流石に俺が不注意過ぎたよ」


「わ、分ってくれたならいいんよ。でもホンマに気をつけてや?お昼ならまだしも夜に女子を部屋に連れ込むのは誤解されやすいさかいに」


謝った瞬間に八重香の雰囲気は急降下するように軟化した。チョロいと言えばそれまでだがそこからは紫苑を心配しているのと嫉妬が垣間見える。


「心配してくれるのはありがたいが、こんなとこで出てくるな馬鹿者。誰かに見られたらそれこそ女子を連れ込んだと誤解されるぞ」


そう言って紫苑はチョップをかます。


「あう、痛いやん!それはそやけど、さては主様反省してないやろ!」


「そんなことは無い。しっかり反省はしている」


「ホンマか?ホンマにそうなんか?」


紫苑のからでチョップが痛かったのか八重香はおでこを抑えていた。しかも八重香は顔を先程の紫苑と同じぐらいに赤くしていた。顔は涙目で上目遣いに心にダメージを負いそうなぐらい動揺してしまうが何とか心の中だけで収めることに成功した。


「とりあえず早く入るぞ。ここでは誰か来よる」


「無視しんといてよ」


ジーと見てくる八重香の目線に耐えられず思わず目線を外してしまった。

それから八重香を無視して手を掴み強引に部屋へ入った。

部屋の中に入ると少し狭くなっており、奥へ進むと入口よりは広めの部屋だった。一人部屋である程度の広さを持つ部屋はそこまで望んでいなかったので質素な部屋でちょうど良いと思える。


「…あるじさまぁ、あのぉ?」


「ん?ああ、すまない」


八重香の弱々しい声に振り向くと紫苑がずっと手を握っていたことに気づいた。少し痛かったか?と紫苑は申し訳なく思い手を離した。しかし八重香は名残惜しそうに残念そうな顔を浮かべていた。


「反省はしておる。流石に迂闊過ぎたとお主に言われて気づいた。悪かったな」


「……なら許します。次はもっと気をつけてください」


「ああ、仰せのままに」


そこでふと八重香は考える素振りを見せた。八重香は紫苑を見るとふにゃっと笑みを浮かべた。


「主様ひとつお願いしてもええか?」


「良いがなんだ?」


「うちを抱きしめて」


「何?」


「だから抱きしめて欲しい言うてんのや!」


「わ、わかった。こうか?」


紫苑は恥ずかしさから抵抗があったものの先程の発言を思い出し抱きしめた。目のすぐ下にある八重香の頭に目線が行く。微かな何かの華の香りが紫苑の鼻を擽る。

その状態が数分続いた頃だろうか。八重香が嬉しそうに話し出した。


「ふふ、こうやってしてもらうの何年ぶりやろうな。数えたらそら……」


「八重香、それ以上はやめよ」


「あっ、ごめんなさい。無神経に」


「いやいい。それよりもそろそろ良いか?」


「うん。もう大丈夫やよ」


少し気まずい雰囲気が流れながらもそっと紫苑は意識しながら話す。残念そうにしかし申し訳なさそうにする八重香を見てこちらも申し訳なくなった紫苑は八重香の頭を優しく撫でる。すると彼女は気持ちよさそうに笑みを浮かべた。そこには人としての可愛さと言うよりかは動物の可愛さ、つまりは狐を紫苑は感じた。

少しして紫苑は頭を撫でるのを辞めると名残惜しそうする八重香を置いて床に座った。八重香はそれを見てベッドに寝ながら紫苑のすぐ近くで彼を見ていた。

紫苑は異空間袋から刀と手入れ道具を出した。元々屋敷に入って直ぐに武器となる刀だけは収納していのだ。

紫苑は黙々と刀の手入れをしていった。何年もやっているから手馴れているので作業はテキパキと進んでいく。


「見てて楽しかったのか?」


「そらねぇ。暇ではなかったと言うときます」


八重香は作業の終わった紫苑にふふっと笑い質問に答えた。曖昧に言うところは狐の性なのだろうか?

そう考えていると不意にドアをノックされる音が聞こえてきた。紫苑はそれを聞いて直ぐに部屋の入口へと向かう。ドアを開けるとそこには先程の予想通りにリオがいた。


「聞きたいことがあって来ました」


「ああ、入れ」


奥へ行く紫苑に続いてリオも進んできた。ベッドの上には既に狐に戻った八重香が居てくつろいでいた。

紫苑は部屋に一つだけあった机とセットで置かれている椅子をリオに出して座るように言う。少し遠慮気味のリオも結局は直ぐに座った。

紫苑はリオが口を開くのを待っていたが中々話す様子もなく、また静寂がこの場を支配して余計にリオの口を重くしているのだろうと思える。


「聞きたいことがあるのだろう?」


「う、うん。ひとつだけ良い?」


「気にするでない。答えられる範囲なら出来るだけ答えてやろう」


「ありがとう、なら、テレスさんは〇〇〇の血族?」


正直紫苑自身聞き取れなかった。しかしそれは昔に紫苑自身聞いた事のある言葉だった。


(確かエルフ独自の言葉で意味は……だったか)


心の中で意味を確認した紫苑は目線をリオへと戻した。


「あっ、ごめん。エルフの言葉は難しい?」


「いや、問題はない。お主の言う通りだ。」


「やっぱり……敬語に戻した方がいい?」


「そんなことはしてやるな。嫌なら顔か行動に出ておるだろ?」


「確かに。だけど私達の風習からしたら問題になる」


「あの娘を守るためだ。今は知る必要は無いが直ぐに知ることになるだろう」


「…分かった。我慢する」


紫苑は、嫌そうな顔をしているリオに大丈夫だろうかと不安になっていた。しかし耐えてもらわねばならない。力を制御出来ない状況で真名を知ればテレス自身の命自体を縮めることになる。普通の種族なら真名がある無いでも問題は無い。だが例外はある。霊気を扱うということはそれは人ではない事の証明にもなるからだ。人では無い訳では無い。しかし人であると同時にまた違う存在でもある。つまり人ではない存在としての名前をその身に宿しているということでもある。それはその実力が力に伴っておりなおかつ人ではない自分を認めないといけない。なんの準備も出来ていないテレスにはまず不可能な領域だ。


「質問は終わりか?」


紫苑が止まったリオに問いかける。


「うん。もう終わ…り?」


「どうした?」


「ねぇそこにいるのは神獣?」


驚いたようにリオが見ているものを、紫苑が横目にチラッと見れば白い狐が欠伸をしながらベッドで横になっているのが見える。面倒事はいらないということか。


「それに近いものだ。あれは神獣共と違い狡い奴だ。だが強い」


「?よくわからないけどわかった。……あの最後に一つだけ良い?」


「まだあるのか?」


ひとつと言っていたのに対してイレギュラーの発生で質問が増えた中でリオは紫苑を見ながら渋るように質問をしていいかの応否を問うてきた。


「うん。ごめん。けど私の眼では中々確信できない。……貴方は何なの?」


いきなりの質問に紫苑は驚いたように固まる。返そうとする言葉が見つからずに何も答えられない。


「……」


「人でもない。私たちのような妖精種でもない。もしかしたらドラゴンかもとか思ったけど聞いてた話よりも曖昧な人、貴方の持つ色が不安定なの」


紫苑は虚をつかれたように驚いていた。このような若いエルフの眼に捉えられるとは思っても見なかったことだ。エルフの目は人の特製を色で見ることが出来るのだ。普通なら紫苑は悟らすことすら差せないだろう。実際にリアムの真実の眼には何もわかることは無かった。しかし寝る前であり、相手が子供と言うことに油断して気を抜いていた紫苑は自身を相手に見せてしまった。


「なるほどな。未熟だが最高峰の目を所有するか。余り大っぴらに見せびらかすでないぞ。それと今の俺は何物でもないただの人の剣客だ」


紫苑は冷静にリオの目を見ていた。リオ自身も紫苑を見ており互いにずっと目詰めあっていた。目を離すことなく数秒あるいは数十秒時間が流れるとリオは何かを確信したのか少し笑って見せた。


「そう。心配してくくれてありがとう。そして私の質問にも」


「やけにあっさりしておるな?」


「貴方からは優しいくて後悔している人の感じがした。そんな人に問い詰めたりするほど薄情じゃない」


「そうか」


リオは満足していないようだが笑顔を向けて感謝を込めて頭を下げていた。これで無理に聞いてこないのはたまたまかそれとも狙ってか、分からないものだ。


「ありがとう。おかげでスッキリ出来た。」


リオは立っている紫苑の横を通り入口まで向かった。


「明日からはよろしくお願いします」


扉を開ける前にリオは改まった様子で頭を下げそのまま出ていった。

リオが出ていった後に紫苑は八重香の方を向いた。


「八重香気づいたか?」


「ええ、なんかの気配の後があらはったね。何時のものか分からんけど狙いはうちら?」


「分からぬ。だが警戒はしなければならんな」


そう言って紫苑はリオの出ていったドアを凝視していた。

なんか八重香さんがチョロすぎるような?狐だしもっと深い感じの怪しい感じに書いた方がいいような?

皆さんどう思います?

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