第11話街の中
書き直し頑張ってますぜ
紫苑たちがリアの案内により街に着いた時にはまだ日は沈んでは無いものの日は殆ど傾いていた。
街は壁で囲われておりその中に入るためには門をとおる必要がある。
門には衛兵がおりジョシュ達は通行証を持っていたために直ぐに入ることが出来た。しかし紫苑たちはそれが無いために検問を受ける必要があった。
ジョシュ達は待とうとしたが何か会ってからでは大変だと紫苑が先に街に入り医者の所まで行くように説得した。しかし動ける者がリアだけということもあり、紫苑は衛兵に動けない2人を運んでもらうよう頼んだ。案の定衛兵は了承してくれた。
ジョシュ達が衛兵により運ばれて行ったのを確認すると紫苑は衛兵の方に向いた。
「怪我人を届けてくれてありがとう」
「気にするな。ところで検問は何をするのだ?」
「少しの質問に答えてお金を出してくれたら入れるよ」
「分かった。しかし良いのか?」
紫苑の言葉に首を捻った門兵だがすぐに納得したのか「ああ」と言って話し出した。
「あの3人はこの街でも実力が高い人達だからな。怪我の原因の調査を普通はしないと行けないんだが、あいにくこの街には彼らの怪我の原因を調査する余裕が無いから調査を出来ないんだ。だから気にしないでくれ」
門兵はそう言って門の先をチラッと見た。そこには門兵とは違う紋章の着いた鎧を着ていた。紫苑はそれを見て事情を察した。何故ならその紋章は紫苑たちが昨日に戦った帝国兵と同じ紋章だった。
「…なるほどな。お主らも大変だな」
「全くだ」
門兵は紫苑の言葉に率直に同意した。その後やれやれと言いながら検問が始まる。
「えーとまずはお前達の名前は?」
「俺の名は紫苑だ。後ろの3人は赤い髪がクリスでその隣の茶髪がテレスとルーナだ」
紫苑は三人の名前を愛称で伝えた。正直な話名前を短くしただけならこの3人の名前はバレてしまう可能性がある。しかし容姿を変えたことで名前が似通っていても偶然だと説明が出来る。だからこそ紫苑はそう答えたのだ。
「…まぁいいか、ではここへ来た目的は?」
門兵は怪しんだのか少し考える様子を見せたがそのことを言うことはなく次の質問を紫苑に問いかけた。
「物資の補給をしに来た」
「なるほど。では…」
その後数回の質問をされた紫苑は全てを答えた。門兵からは問題が無いと判断され許可証が配布された。
紫苑は門兵に礼を言うとテレス達を連れて街に入った。
先程の門兵との話の中で商店が並ぶ場所を聞いていた紫苑は聞いた通りの道順で進んでいく。そんな紫苑にテレスは質問をした。
「これからどうするのですか?」
「そうだな。まずはそなたらの服を買う必要があるだろう。幻術を使っているとは言えその格好で居るのは辛かろう?」
「そうだね。でも見たところお店閉まってるよ?」
ルーナの言葉に皆その場で止まり前を見渡す。門兵の言っていた場所まではすぐに着いた。
そこは間違いなく商店街と言えるような看板などが出ていて人々が和気藹々と人々が行き交っている様子が簡単に浮かんでくる。
しかしどこの店も明かりは着いておらず元々人が居ないかのように静まり返っていた。だが、それが本当に人が居ないと言うこととは違うことをそこにいる全員が理解していた。なぜなら綺麗な店もあれば汚いと言うよりかは荒らされた店が数件あった。おそらく帝国兵による略奪か見せしめだろう。おそらく後者の確率が高い。荒らされている店がほとんどないからだ。
見せしめにより住民が怖がり家の中に引きこもってしまい店が閉じていると言うなら納得出来る。
「盲点だった。まさかここまで占領が早いとは。数日もたっておらんだろうにここまで兵が多いとは…」
「ここまで用意周到だと恐ろしいものです。一体何処に潜伏していたんですかね」
冗談めかして言いながらもクリスは怒りの気配を隠す気もなく体を強ばらせ怒りを露にしている。
潜伏はまずありえないそんな量で住むほどの兵士の数が違う。
するとルーナとテレスが考えてる2人を他所にして街の様子を見ていた2人が何かを発見したようで直ぐに紫苑達に振り向いた。
「紫苑様クリス!あれを見てください!」
「誰か襲われてるよ!」
テレスとルーナの声に2人は思わず彼女たちが指差す方を見た。
紫苑たちの視線の先には帝国の紋章をつけた鎧を着ている兵士が数人いた。どうやら何かを囲って居るようで道の端で全員が笑っている。談笑などで見せる笑みではなく醜く笑っているのである。
「お前商人の息子なんだって?金持ってんだろ?寄越せよ」
「俺らこんなとこまで来てんのに手柄挙げられてないから金がそこまで貰えねぇんだよ。だからおじさん達にお金恵んでくれよ」
「そ、そんなお金無い!そ、それにお前らが来なかったら済んだ話だろ!」
どうやら誰かが帝国兵に絡まれてカツアゲをされているようだった。しかも聞こえてくる声はまだ幼さの残っているもので大人に守られるべき子供のものだった。
その声はタジタジになるほどに緊張していて子供の恐怖心が伺える。だがそれでも精一杯に抵抗見せる姿は不安ながらに勇ましい様子が伺える。しかしそれで相手は不快になったのか少年を蹴ったのだ。
流石に見過ごせないと思った紫苑は少し怒りを見せながらも落ち着いて動こうとした時に横から低い女の声が聞こえた。
「紫苑殿テレス様達を見ていてください。…少し行ってくる」
それはクリスの声であったが最初に会った時のように怒気を含ませ口調も荒くなっている。彼女はどうやら気が荒ぶると口調も荒ぶるようだ。
怒りを持っていたはずの紫苑も仲間が同じようにいかっている姿を見ると急に怒りは冷め始め呆然としてしまった。あそこまで怒る女性を紫苑は久しぶりに見たためでもあった。
ゆっくりと近づいていくクリスに固まっていた2人が先に動き出した。
「「紫苑様!」」
その言葉にハッとして自分で陥った金縛りの様なものを解いた紫苑は八重香をその場に残してクリスを追った。と言っても目と鼻の先と言えるほど近く本の10数メートルの距離である。
相手方との距離を詰める中でまたも兵士が少年に手をあげようとしていた。
「くり「その子から離れろ!外道め!」」
紫苑が止めようとした時、クリスは既に拳を構えたときで既に遅かった。クリスの言葉にこちらを向いた1人の帝国兵の頬に無慈悲にも吸い込まれるようにクリーンヒットしてその男は唾と歯を撒き散らしながら吹っ飛んだ。仲間も突然の事で呆気に取られてしまい固まって先程の紫苑と同じ状況になっていた。そこでクリスはまもう1人の帝国兵に拳を叩き込む。今度は顔面の中央で鼻が陥没して鼻血を出して飛んで行った。
紫苑自身止めようとしたのは騒ぎが大きくなると思ったためであるが正直な話その姿には良しと思ってしまった。だが流石に手が早い。切れたクリスは暴れ馬のようだ。
「なっなんだお前は!」
最後の1人がそう言うと剣を抜いてクリスに叩き込もうとしたのだがそこに間髪入れずに相手の正面につめて紫苑が入った。そしてその振り上げた腕を掴みクリスのいる方向とは別の方向に投げ込んだ。投げ飛ばされた男は見事に地面に叩きつけられ大きな音を立てるとピクっとなるもその後は動かなくなった。
それを見て大丈夫と思った紫苑はクリスの方を向いた。
「お主切れると周りが見えなくなる性格か…」
「すまない。だが見てられなかった」
「仕方がなかろうて。俺も1人だけならそうしておる。それよりも速くその童を連れて離れよう。このままでは危ない」
「わ、わっぱ?」
「子供のことだ」
「なるほど。では少年よ行きますよ」
殴ってスッキリしたのか彼女の口調は元に戻っていた。そしてクリスは帝国兵が飛んだことにより顕になった少年の手を掴み連れていこうとした。しかし少年は全てが一瞬のことで困惑しその手を振りほどいた。そして紫苑たちの方を向いた。
「えっとあのありがとうございます。助けてくれて」
不器用に頭を下げながら少年は言った。突然の事で驚いているはずだ。ん怖かったのか先程の反抗してた時と違い弱々しい。感謝するのに強すぎてもあれなのだが。
「気にしないで良い。それよりも1人で帰れるか?」
「1人で大丈夫だ、です」
「気にしないでいいんですよ?」
「家は近いから」
俯きながら言う少年に覗き込む形で話すクリスはだいぶ顔が近かった。そのためか少年は顔を赤らめてそっぽを向きながら答えた。クリスは首を傾げていたが。
「そうか。なら気をつけてな」
「気をつけてくださいね」
そう言って2人とも少しの心配はするものの長居は出来ないしテレス達を守らねければならないのだから仕方がない。少年もそうすると直ぐに立ち去って行った。
「すみません。いてもたっても居られなくて」
「気にする必要はありません。私の騎士が正義感が強い人で誇らしいですから。ですが次からはいきなり行かないでくださいね」
「ええ、気をつけます」
後ろに振り向きいつの間にか来ていたテレス達にクリスは頭を下げて謝った。それに対して気にするような様子もなく叱っているようで嬉しそうなテレスをルーナは楽しそうに見ているがそこで何かを思ったのか口を開いた。
「それにしても宿屋どうする?ここら辺の場所はなかなか取れないよね?」
「確かにそうですね。どうしたものでしょうか?」
帝国令が倒されたとあっては兵士達がここら辺を捜索するだろう。それに加えて見せしめがあったとなれば誰も帝国兵に逆らった人を誰が助けようと思うのだろうか。居なくもないだろうが快くとは行きにくいだろう。それに全員が迷惑はかけられないと思っている。
その中でシュンとしているクリスはなかなかシュールだ。
「姉ちゃん達泊まる場所に困ってるの?」
「はい。どうしたものかと考えております」
「なら家に来なよ!姉ちゃんたちならパパも家に入れてくれると思うし」
「でもそれでは……あなた帰ったのでは!」
「兄ちゃん達に頼みたいことがあったから戻ってきたんだ」
えへへと笑っている姿は先程の固くなっていた時とは違い素の少年のままであるとわかる。
「頼みとは?」
「それはうちに来てから話すよ。それよりも兄ちゃん達俺のせいで泊まる場所なくなっちゃったんだろ?だからお礼をしたくて…僕の家なら広いから兄ちゃんと姉ちゃん達全員泊まれるよ?」
「だが迷惑ではないか?お主のご両親も困ってしまうだろ」
「そんなことないよ!兄ちゃん達ならパパも喜んで泊まらしてくれるよ」
紫苑は後ろにいる3人に目線を向けた。どうするべきか一存では決められないために目線を送った。すると3人は目線を合わしたあと頷いてくれた。どうやら賛成ではあるようだ。紫苑自身も長居は無用と思い少年に視線を戻して了承することにした。
「なら甘えさせてもらおうか」
「うん!じゃあ着いてきて!」
そう言って少年は走り出し紫苑たちはそれを追いかけて行った。