英霊な美少女三人娘に愛され過ぎて困ってるんだが、最近この日常が幸せと感じるようになりました。
幽霊。
それは非科学的な存在であり、科学的な証拠が無く否定されている存在でもある。しかし、歴史的に見ても曰く付きの様々な場所で心霊現象が起こっているのも事実である。
幽霊とは違うが、妖怪というものもある。
日本ならば河童などが有名だろうか。
川遊びをしていると相撲を挑まれ、負けると尻子玉を抜かれてしまう。頭の皿の上が乾くと乾涸びたり、きゅうりが好物と言った話まで残っているほどだ。
それから未確認動物、通称UMAもある。
日本ではツチノコが有名だ。蛇に似ていて、「見つけると幸運が訪れる」などの噂話が広まると同時に懸賞金が掛けられ、今では賞金額が一億円に達しているが見つからない。
他にも妖精や精霊、竜、吸血鬼、そして神もある意味ではその存在を証明できない存在である。
さて、そんな未確認な存在が俺の目の前にいた。
「この酒も美味いな」
「これ! 妾にも寄越さぬか!」
「はいは〜い、ご飯の準備しますから片付けて下さ〜いっ」
仕事から帰って来た俺の目に入ったのは、若干透明感のある三人の美女美少女が六畳一間で寛いでいる姿だった。
「あっ! ユキムラさん、おかえりなさ〜いっ」
のほほんとした喋り方をしているのは、旧約聖書『創世記』に記されている人類の始祖と呼ばれているイブだ。
翠髪翠眼の彼女が身に付けているのは葉っぱの衣装だ。まあ、服と言っても胸と下半身くらいしか隠れていないので、俺はいつも直視出来ずに目を逸らしてしまう。
彼女は家事全般が得意な様で、いつも掃除や料理を任せっぱなしにしてしまっている。
そして作る料理は三つ星レストラン並み(行った事ないけど)に旨い。
「むっ!? ユキムラよ、良くぞ生きて帰ったな!」
この狭い部屋に無駄に巨大な黄金の椅子を持ち込んで踏ん反り返っているのが、あの有名なピラミッドを建設した古代エジプトの女王である、クレオパトラである。
長い黒髪に黄金のアクセサリーで煌びやかに着飾っている。イブほどでは無いが、着ているのは薄い布ばかりでこちらも目のやり場に困っている。
彼女は生前が女王だった事も相まって、命令口調や上から目線になってしまう事もあるが、彼女自身はすごく優しい性格をしている。
度々、知らない幽霊が彼女の奴隷として労働させられているのを何度も見た事があるが、きっと気のせいだろう。
「おかえり。一緒に呑む?」
最後に、一人だけ大人しく正座をしているのが、かの川中島の戦いで有名な戦国時代の軍神、上杉謙信だ。
彼女は黒髪黒眼のまさしく大和撫子だ。服装は白装束の上に軽い鎧を纏っている。この部屋で一番、肌を見せない服装をしている。
彼女は酒が好きで、いつも日本酒を飲んでいる。今飲んでいるのも、スーパーで大安売りされていた安酒だが、それでも嬉しそうに飲んでいた。
どちらかと言えば会話はしないタイプで、いつも無口に窓から月を眺めながら酒を飲んでいる。そんな姿がとても絵になって、とても美しいと思った。
「いや、遠慮しておくよ」
「そう」
流石に帰って来てすぐに酒は飲む気分じゃ無いので、断った。
断られた謙信も特に残念がる素振りも見せずに酒を一口、呷った。
「は〜い、ご飯ですよ〜」
「今日はカツか! くるしゅう無いぞ!」
「カツって意外に日本酒に合うのよね」
イブが作った料理を並べ、他のみんなも普通に食卓に着いた。
彼女達は幽霊の中でも特別な、いわゆる英霊扱いらしい。英雄の霊と呼ばれ、他の幽霊とは違って物に触ったり持つことも、そして食べ物を食べることも出来る。
こうして俺の部屋で生活しているのも、英霊ならではの特権と言えるだろう。
俺は霊感がかなり強い人間の様だ。
街を歩けばそこら中で幽霊を見掛けるし、なんなら会話だって出来る(怖いからやらないけど)。
それがこの三人には懐かれてしまって、こうして一緒に暮らしてるわけだ。
六畳一間に四人も大人がいるんだ。
狭いったらありゃしない。
「「「「いただきます」」」」
まあ、こうして四人で食べる食事が嫌いじゃ無い自分がいるんだが。
「ギャハハハハハハハハハ!!!」
「これが無ければなー……」
週一くらいで一度は起きる、幽霊の襲撃。
もはや恒例行事となってしまって、慣れた自分が怖い。
「そいつを頂きに来たぞ!」
そいつは普通の幽霊だ。英霊では無い。しかし、複数の幽霊を喰らって力を得ている。この幽霊に纏わりついているモヤモヤとしている黒い渦は、喰らわれた幽霊の無念だ。
いつもの事だが、それがクレオパトラの地雷を踏んだ。
「あ? 殺すぞ?」
クレオパトラから殺気が漏れる。
ビシビシっと木の机が軋み、最もクレオパトラの近場にあった黄金の椅子は砕け散った。
これまでの雰囲気とは打って変わって、まるで別人の様な形相だ。
「ふ、へへへ……! 流石に英霊様は凄い殺気だなぁ! だがよ、これならどうだ!?」
次の瞬間、黒い渦が人影に変身した。
その数は軽く二十を越え、部屋中に散らばった。壁にまで張り付いて、まさしく四方八方を囲まれた状況だ。
何故かは知らないが、襲って来る奴等は俺を狙っている様だ。
人形の影が一斉に俺に襲い掛かった。
「残念だが、毘沙門天の加護は我々にあるのだよ」
しかし、それは白い影に阻まれる事となる。
虚空に現れた日本刀を繰り出し、一瞬にして謙信が影を粉々に切り裂いた。
「なっ……!」
「は〜い、動かないでね〜!」
又もや虚空から現れたのは、女神が模られた棺桶だった。それは古き時代の拷問器具である『鉄の処女』だった。
幽霊は簡単に閉じ込められた。
「は、ははは! 騙されたな!? 私は囮だ!」
と思ったら、鉄の処女の中から負け犬の遠吠えの様にほざいた。
言葉通り、囮だったらしい。壁をすり抜けて、同じく黒い渦を纏った幽霊が四体も俺に向かって襲い掛かった。
しかし、だ。
「《動くな》」
「「「っ!?」」」
「《死ね》」
「「「ッッ…………」」」
クレオパトラが命令すると幽霊達は正しく、奴隷の如く従った。
動きを止めて、最後には自らの手で命を絶った。
そこにはもう誰も残っていなかった。
まだ鉄の処女の中にいる幽霊も現実を直視できない様だ。
「それは赦さないぞ」
「妾の伴侶に手を出せば殺す。覚えておくのだぞ?」
「ふふ。おいたは駄目よぉ?」
俺に聞こえない程、小さな声で彼女達は幽霊にそう告げた。
その時、幽霊は思った。
手を出してはいけないものに手を出してしまった、と。
そして、鉄の処女は閉じられた。
「はあ、また冷蔵庫壊れたぞ」
「私が新しいの創っておくね〜」
「うむ! いつもすまないな、イブよ!」
「いえいえ〜」
「やはり戦終わりの日本酒は旨いな」
「はあ、なんか疲れて来た。俺も飲みたいな」
「勿論、いいぞ」
「妾も久し振りに呑むかのう!」
「じゃあ私も〜」
突然幽霊に襲撃されたりするのも、英霊に懐かれた男の宿命なのかもしれない。
こうして、四人の日常は過ぎて行く。
いつまでも。ずっと一緒にーーーー。
【創造主】
彼女は人間の始祖と言う事で、人間が生み出したあらゆるものを創造する事が出来る。
上杉謙信
英雄特権【毘沙門天】
・虚空からあらゆる武具を呼び出し、古今東西の武術を完全に操ることができる。
イブ
英雄特権【万物創造】
・人間の始祖であるイブは、人間が生み出した物ならば何でも創造する事が出来る。
クレオパトラ
英雄特権【女王命令】
・自分よりも格下の存在に対して、絶対的な命令権を得る。命令に逆らうことが出来ない。
前から書いてみたいと思っていた設定だったので、とりあえず短編にしてみました。
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