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0.1+α≒0 されどαは光り輝く  作者: 整備士オタワ
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ソーク・ドマジーの始まり

拙作ですがぜひよろしくお願いします!



ギリッシュ暦53年、それが俺ーーソーク・ドマジーの生まれた年だそうだ。


小さい頃のことは全然覚えていないが、たった一つ、鮮明に覚えていることがある。



たまには遠出でもしてみようということで家族で城下町まで出かけた四歳の頃のことだった。

普段城下町には魔物が入ってこないように結界が張られているらしい。


しかし、その日は偶然結界の効力が弱まってしまっていたそうで、さらに運の悪いことに兵士達ではどうにかできないような魔物が入ってきてしまった。

ーーこれはあとから聞いた話になるが、強力な魔物の侵入を知らせる警報が鳴った途端、城下町は阿鼻叫喚に包まれ、あちこちで人が叫んだり泣いたりする声が溢れていたそうだ。






当時何も知らず、家族とはぐれていた俺は警報の音がなんだか楽しげで祭りの楽器みたいに聞こえてついそちらへと向かってしまった。

そうして遠くで喧騒が聞こえる城下町で一人走って、1つ角を曲がると、



そこでは目の前で大きな鳥のような魔物が、兵士たちを風で蹴散らしていた。

これがただの風なら兵士たちも吹っ飛ばされるだけですぐ起き上がっていけるだろうが、そうではなく、

この魔物ーーグリフォンは風の刃を魔法で作り出してそれで攻撃していたのだ。

そんな風の刃に立ち向かう手段を持たない兵士たちは次々と首を落とされるか、あるいは下半身と泣き別れになって犠牲になっていく様を俺はただ呆然と見ていることしか出来なかった。

そうして兵士たちが一人、また一人と死んでいく中、途中で俺の存在に気づいたのか、

残った兵士の一人が、

「そこの少年!早く逃げろ!町の中央の銅像まで真っ直ぐに走れ!少しでもここは食い止める!」

と叫んで、グリフォンに果敢に挑み、

そして首を切り飛ばされた時、ようやく俺は動き始めることを思い出した。









ただひたすらに町の中央目指して必死に走っていたが、兵士たちの抵抗虚しく、俺の背後をグリフォンは追いかけ始めていた。

何を思ったのかさっきまで兵士たちを葬り去っていった風の刃は射程距離に入っているにもかかわらず、使わずに、やがて俺を追い越して俺の目の前に着陸した。

グリフォンが愉快そうな声を上げながら爪を振り上げた時、

俺は泣いて「嫌だ」と叫びつつも

心のどこかで「死んじゃうんだな」と思いながら俺の胸めがけ振り下ろされるとても大きな爪をただ見ていた。


その時だった。


俺とグリフォンの間に割って入って来た男が剣でグリフォンの爪を止めながら

「怪我はないか?」

と笑いかけながら言ったのは。















その後は語るまでもなかった。

風の刃も爪も全て男の鎧にかすり傷つけることなく剣で防がれて、男は確実に間合いを詰めていき、

最後には、首を一撃で切り落として終わりだった。


その先程までの兵士たちの絶望や苦戦が嘘みたいなあっさりとした戦いを男の後ろで見ていた俺はその時、

(かっこいい……)

と、

ただそのひとつのワードだけで頭の中をいっぱいにしていた。



その後、俺は、その男に連れられて戻った後、家族に勝手にいなくなったことをこっぴどく叱られていたが、

頭の中で主張し続ける

(いつか…俺もああなりたい…)

という思いで説教の内容は頭に残らなかった。


ちなみに、俺を助けてくれたその男が、俺の住んでいる国であるムーギーン王国が持つ周辺の国々の中でも高い練度と堅固さを誇る近衛騎士団の団長にして、後に「鉄壁要塞」と呼ばれるようになる男、アトーレス・フォーンだと俺が知るのはこの出来事が起きて約1週間後のことだった。












……とまぁ、とにかくこれが俺の心に今も印象深く残っていることである。

この出来事の後から俺は自分から積極的に剣の鍛錬をするようになった。

そして、

この出来事の11年後、

この国では15歳になると成人になったことの祝いを家族で祝い、そして、この国のためにどれだけ戦えるのか魔法の能力の調査が行われる。

そして当然ながら俺も例外ではなく、能力の調査を受けた。


ーー俺は既にこの時点でどれだけ鍛錬しても対して剣の腕が成長しない自分に強い失望を覚えていた。

だからこそ、

せめて剣で戦うことが出来なくても、

あるいは攻撃魔法に才能があれば、自分もああなれるはず

と、そう思い、ある種の現実逃避に走っていた。

そんな俺の情けない願いがどう影響したのか、それは分からないが、


検査官の口にした

「直接攻撃ができる魔法はあまり使えないようですが、支援魔法の才能はすごく高いです!凄いことですよ!」

という言葉で喜ぶ周りの人や家族達の騒ぎようとは裏腹に俺の心は沈んでいく一方だった。

不定期の更新になると思いますが、どうか今後ともこの拙作をよろしくお願いします

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