女王陛下
「傷痕だって本当は綺麗にしてしまうのに……声だって……」
そこまで言うと、それ以上は話さなくなった。この人も何か勘づいているのかも知れない。
「そう言えば勇者一行のパーティはどうしている?」
ローズが聞く。何だろうこの感じ……気持ちが悪くなる、冷や汗も出る……だが……気になる。
「勇者様が倒されてしまったから、今はバラバラに他のパーティーに入っているみたいよ」
「そうか、王の前でめそめそ泣いていた女も気の毒だな。慣れたメンバーから離れてしまったか」
知っている! ローズは俺の事も本当は知っている。何故だかその時そう思った。ローズは続けて話す
「その女の他にもいたな後3人だったか、大柄な男2人と、魔法使いが1人」
「はい、その者達も違うパーティーに加わっているようですよ」
話口調は柔らかいが、とげがあるみたいだ。
どうしてそんな話が出てくる? まるで俺に……聞かせているように……
「その者達は……新しいパーティーメンバーから嫌がらせを受けている。と、城に抗議に来たのだけど、
追い返しましたわ。だってそんな事は無いと聞きましたから、だって魔王を倒したメンバーなのに可笑しいじゃありませんか? 役立たずなんて事あり得ないでしょう? メンバーに貢献出来て当たり前」
そこでローズが言う。
「魔法使いも使われなくなったら終わりだな。魔道具屋にでも転職を勧めるよ。そう言ってやってくれ。魔道具が作れればだがね」
「あら、先生ったら。魔法使いはこの国ではローズ、貴方の弟子しか居られないように法律を変えたばかりですよ。忘れた訳じゃないですよね? 発案者さま。お陰でどの国よりも優秀な魔法使いばかりで助けて貰っていますよ」
「そうだったな。適材適所ってやつだ。治癒に特化した者は癒し所として、攻撃に特化した者は衛兵としてこの国を守るよう指示している。我ながら美味い事を思いついたものだ」
はあ……そうですか……で? もう用は済んだのか? 仮面越しでローズを見る。
「お茶でも一緒にいかが?」
と、陛下が言う。それに合わせる様にローズも言う。
「そうだな、この部屋も懐かしいアトリアが生まれた時のままだ」
「名前で呼んでくれる人はもうローズだけだわ……」
少し悲し気に陛下が言う、
暫くお茶を飲みながら、昔の話をして楽しそうにしていた。