城へ行く
「結構背丈があるからな、ほうきは長い方がいいだろう」
そう言って店の中を見て歩く。店主だろう人や店員らしき人も俺達が店に入ってからずっと下を向いている?
俺達にお辞儀をしているのか? ローズは気にしていない……
「お決まりになられないのであれば、職人をお呼び致しましょうか?」
えっ! そこまでしなくても……
「そうだな、呼んでもらおう」
当然と言う様に、ローズが店主に言う‥‥‥おい‥‥‥そこまでしなくても……
「お待ちを」
そう言って店の奥に行く。
「おい! ローズ、何も呼ぶ事はないだろう? ほら、あのほうきなんてどうだ?」
俺は慌てる。
「何を言っている! ほうき選びは重要だぞ、自身の半身となる物だ。妥協してはいかん」
どうしよう……困っていたら、奥から人が現れ。
「ローズ久しぶりだな、相変わらず姿だけは若いのお」
と、笑いながら結構な年齢の職人が声をかける。
「人の努力を笑うな! 私は身も心も乙女だ。そんな事より、こいつに合ったほうきが欲しい、作れるか?」
「それこそ、誰に言っている!」
ニカっと、子供っぽく笑って見せる。
「良かろう、頼んだよ。私達はこれから城へちょっと寄ってくるので、その後にまた来よう」
何だ? その、お隣さんに行って来ますみたいな言い方! 大丈夫か、不安になる……俺達はまた馬車に乗り城へ向かう。
門番も、馬車を見てお辞儀をする、ここでもか……門を抜け城が近づく、大きな柱の前で降ろされる。階段を上がる。そこには衛兵が居たがここでも同じ様に皆頭を下げる。これってローズに対してか! 何者なんだ、ローズ……
ローズは、そんな事は気にせず何処かに向かって歩いて行く。
馬車の中でローズに言われていた『お前は一切言葉を出してはならん、絶対話すな』と理由は教えてくれなかった。
両サイドに衛兵が居るドアの前に立つと、衛兵はドアを開ける前に大きな声で、
「ローズ様がおいでになりました!」
ひぇ~“様”扱いかよ……ビクビクしていると、ドアが開く、
「ローズ!」
と、綺麗な女性が抱き着く。
「こら、人前だよ」
と優しく窘める、
「だって、何か月ぶりかしら? 嬉しくて! その人が新しいお弟子さんかしら?」
「こら、お辞儀をせんか! レグルス、陛下の御前だぞ」
陛下?って! とっさに片膝を折り、手を胸に当てて頭を下げる。
「まあ、魔法使いなのに騎士の様に礼をして下さるのね」
そうなんだ。魔法使いって、どうやっていたっけ? 朧気に思い出したようにやってみた。
帽子を外し、帽子を胸に立礼をする。それを見たローズは、何かを察したようだった。
「これはレグルス。火傷が酷くてね、傷痕が残っている。顔を隠しているが許してくれ、その時喉も焼けたようでね話せないんだ」
「まあ! それは大変でしたね。ローズが治してくれたのよね。良かったわね。きっと命も危なかったでしょうに」
「そうだな、命も危うかった。もう少し早く見つけていたら傷痕など残す事は無かったのだが」