魔法のほうき
森での生活に慣れた頃、俺はローズに意を決して頼んでみた。
「ローズ、頼みがある……俺を街に連れて行って欲しい」
「お前を傷めつけた奴がいるかも知れないのだぞ、生きていたと分かったら……お前は分かっているのか? 初めから殺すつもりなら、心の臓を剣で刺せば簡単だ。だが、あの状態は‥‥‥お前に苦痛を与え、死への恐怖を煽り‥‥‥それを楽しんでいた、私にはそう見えたが、違うか?」
最後に聞いただろう笑い声が頭から離れない……
「そうなんだろう……何故そうなったのか俺自信の責任でもある……気分を悪くしないで聞いて欲しい、俺は他の人と、街を見てみたいんだ。ここが嫌いな訳ではないし、ローズには恩もある、だから、ここから離れようとは今は思っていない、ただ……。
「ただ?」
「森以外の景色が見たい」
と、真面目な顔で言ってみた。ぷっとローズは笑い出し、ひとしきり笑った後、
「良かろう。だが顔が分からない様にした方がいいだろう」
そう言って顔半分が隠れる位の仮面を渡された。額から鼻筋まである丁寧な装飾がされている。
「それを付けておけ。仮面が外れたら、そこに火傷の痕が見えるよう魔法をかけておく」
「そういえば、ローズ今日はやけにちゃんとした服装をしているんだな? 何処かに行くのか?」
ローブには鳥や花の刺繍がされている。初めて見た。これって正装ってやつか?
「そうだ、女王に呼ばれている」
少し不服そうに言う。
「お前を連れて来いと言われたよ。それにお前用のほうきもいるだろう? そのついでに城に寄る」
「待てよ! その言い方だと、女王の用事がついでみたいに聞こえてしまうじゃないか」
王族への謁見がついでって……
「うん? そうだが、問題あるか?」
「おおアリじゃないか! 王族に会うって、それなりに理由がないと認められないんだろう? どうやったらそういう思考になる?」
「そうだな、お前に言ってなかったな、私は女王の教育係として城にいたんだ。今の王は隣の国の第三王子だったかなこの国は女系が国を務める事になっている。他の国は男系の所も多いが、女王が治める国は豊な所が多い。ここもそうだ、良い王となっている」
「教育係って! そうか……俺よりもずっと年上だったな、忘れていた」
「そうだ。だから、ついでだよ」
にっこりと笑うその姿は普通の少女だ。
森を出ると馬車が待っていた。その馬車に2人で乗る、こんな豪華な乗り物多分初めて乗るんだよな、緊張してきた。すると、ある店の前で馬車は止まる。
「さあ! ほうきを選ぼう」
マジか! ほんとにこっちメインなんだ……馬車から降りて店に入る。