森での生活
街ではあの勇者のパーティーメンバーだった、元仲間は部屋の中で酒を呑みながら話す。
「全く、エルナトにはびっくりだ。王様の前で堂々と、やってくれるよな、あんなに演技が上手いだなんてなあ、『勇者さまは魔王に怪我を負わされても勇敢に立ち向かって行って……(泣く)私達を庇って……うっ(泣く)」
「よく涙なんか出るもんだよなあ、まあもう居ないのは事実だからなあ」
わっはっはと、笑う。エルナトと言われた女性もふふふと、
「ちょろい、ちょろいわよ。あの王だって少し色目使っただけで、あの後別室に呼ばれたのよ。も・ち・ろ・ん、行かなかったけど、嫌よあんな爺ごめんだわ」
その頃森ではレグルスは食事の用意をしていた。
「魔法使いってわりと何でも出来るって思っていたけど、料理が苦手って……どうやって今までやっていたんだ?」
「それはだな、果実を採ったり木の実を採ったり……他の人から貰ったり……」
「それ料理って言わねえし、それにしてもこんなに深い森なのに、よくここを見つけて来るやつがいるもんだ。ビックリするよ」
「私の作る薬は良く効くんだ。君にも実証済だが?」
「良く効いてくれてましたよ。ほら! 手もこんなに動く、あの時はもうダメだと諦めていた…‥俺は貴方に恩返しがしたいんだ、こんな事で役に立っているなら嬉しいですよ」
「諦めていた……ね、私にはそうは見えなかったよ。“生きたい”君の身体はそう言っているみたいだった、だから君を見つける事が出来たのだろう、魂の叫び声が聞こえたと言ったら笑うかな」
「ローズ、貴方が聞こえた言うのならそうなんだろう。“未練があった”のだろう、それが何か分からないが、でも話を戻すが食事はどうしていたんだ?
「弟子がいる時は任せていたな」
腕を組み、何故か自慢げに言う、
「それ、自慢にしていい話じゃないよな」
「それに、今はお前が居る」
嬉しそうにローズは言う、
「……いいよ、俺がやるから、ローズ食材が底をつきそうなんだが、どうする?」
「うん、わかった、買い出しに行って来よう、ちょっと待っていてくれよ」
「俺も一緒に行きましょうか?」
とわざとらしく笑顔を作って言ってみた。
「うーん、今回は私だけで行って来るよ。ほうきで飛んだ方が早い、2人では重いとほうきが言うのでな」
「それって、弟子と行こうとした事がある言い方だな」
「あっ…まあな……だから買い物は任せてくれ」
そう言って空飛んで行く。
魔法使いか……俺も使えるみたいな事言われたな。ローズが帰って来たら魔法を教えて貰おう。
ローズが帰って来た、沢山の食材を魔道具から出す。こんなに入るものなのか収納魔法って便利だな。
「なあローズ、俺に魔法を教えてくれないか」
「良いぞ、明日にでも教えてやろう」
翌日
「おい! ローズ起きろ! 朝だ!」
「もう少し寝かせてくれ……」
「全く寝起きも悪いって、弟子達の苦労が分かるなあ……」
と布団をめくる。!! っは・だ・か!
「何故今日は裸なんだ!」
目のやり場に困る……と
「ああ、昨晩はマンドラゴラを採りに行って砂だらけになったんだ。それで水浴びをしたら寒くてな、毛布にくるまっていたらそのまま眠ってしまった」
「頼む何か着てくれ!」
「何を若蔵みたいに顔を赤くしておる。女の裸くらいでうろたえるでないわ」
「……さてはお前……」
ニヤっと笑う、
「おなごは知らんようだな」
「記憶を無くしているので覚えていません! とにかく起きて下さいよ」