魔王戦
ローズが言う。
「久しぶりだな、おまえの顔など、もう見る事はないと思っていたのだが。その顔を見ると吐き気がする」
「言ってくれるじゃないか。連れないなあ~昔はあんなに、もっと可愛かったのだがな」
そう言うと魔王は、人間の姿になる。その姿を見たローズの表情は険しくなる。そんなローズに向かって、優しい声で言う。
「ローズ愛しているよ」
ローズの表情は一層険しくなる。
「止めろ……その姿で、……その声で……私に愛を語るな!」
ローズは睨み、歯を食いしばる……その姿はとても悲しい……
「おまえは所詮、偽物だ! どんなに化けても本物には勝てない! あの人の愛はそんなに軽薄ではない!」
魔王はローズの言葉に、
「ふん! つまらん。流石に、二度目は効かないか、……せっかく、お前の愛しい者の姿になってやったのになあ、まあいい」
と姿を戻す、ローズの怒りが伝わってくる……
…こんな姿のローズは見た事はない……何て……切ない……
「私のあの人への想いをそう簡単に軽んじてもらっては困る。ここに、私の中で彼は生きているのだ。おまえには絶対に理解は出来ないだろう」
ふっと、ローズが笑ってみせる。それを見た魔王は怒りの表情に変わっていく、
「わからんな。人間の考えている事など、哀れな生き物だ。自分さえ良ければいい、強い者が生き残る。弱い者はただ強い者の言いなりでいいのだ、その方が幸せだと何故気づかん」
「そんな事はない!」
俺は怒りで震える。
「貴様は間違っている! 力で抑えつけて言いなりにさせて、それで満足する奴の方がよっぽど不幸で哀れだ!」
「また、同じ事を言うか……貴様など消えてしまえ!」
魔王から、今度は先ほどより大きな黒い塊が現れ、こちらに襲いかかって来る。
ローズが叫ぶ、
「オリハルコン!」
その言葉でオリハルコンは剣から少女の姿に変わる……
「これを首にかけろ!」
ローズが何かを投げた。それを受け取るオリハルコンの少女、それを首にかけた……眩しい光で一瞬周りが見えなくなる……光が次第に収まっていき、その光の中には少女の姿は無く……大人の女性の姿があった。その首にはローズから渡されたペンダントがあった。……オリハルコンが……成長した!?
その姿に魔王は苦痛の表情を浮かべる……
「それは…‥ユニコーンの角……何故そんな物を持っている……」
魔王が明らかに動揺している。
「貴様はこういう物は苦手だったな……」
ローズがそう魔王に言った後、俺に向かって言う。
「レグルス! その魔剣で奴を討て!」
女性の姿は消えて大きな光る剣が手元にあった! その剣に魔力を流し込みしっかりと握り直して魔王へと向かって走る、
「魔王ーー!」
魔王も黒い大きな剣を取り出し、俺と斬り合う。剣と剣が重なって火花が飛ぶ。キンキンとその音は城内に響く、その様子をリゲルは見守った‥‥‥また、この魔王と戦うとは思っていなかった……では、あの時本当は死んでいなかったって事か……くそーっ! 首を切ってもダメだと言う事か、なら、ここは……と、俺は目を閉じ剣のオリハルコンと話す、
『……お前に託そう……アイツの弱い所をお前は知っているんだよな……俺の身体を使ってそこを討ってくれ!』
『はい! マスター』
目を閉じて近づく俺を鼻で笑う魔王‥‥‥ぐさっと重く鈍い音がする‥‥‥
「な、何だと……何故わかった!」
苦しみ出す魔王、剣が刺さっているのはサルガス王の身体の胸だった。魔王は倒れ込む。
「馬鹿な……何故……分かった……」
呻き声ともとれる声で俺の剣に向かって言う、女性の姿になったオリハルコンが言う。
「そこから、魔力が出ていた」
「! わかるはずが……ない…‥‥」
魔王は尽き果てようとしていた。だが、それを認めたくないのだろう。オリハルコンは言う。
「隠そうとした……わざと、死体を遠くへ投げた、それが決め手になった」
淡々と語る……魔王へのとどめは……俺はリゲル閣下を見て頷く。
リゲルは俺の所へ来る。
「……待て……なんでも……する……だから……」
っと小さな声で命乞いをする魔王に、リゲルの剣はその首をはねた。魔王は絶命した。ローズは魔王の遺体に魔法の結界を施し封印した。
終わった……本当に今度こそ……
「リゲル閣下貴方は今日からこの国の王だ」
ローズが笑顔で言う。
「俺は次男だ、兄上が……」
「魔王を退治したんだ、お前が王だ」
と、今までの様子を見ていただろう、リゲルの兄ロランが言う。
「俺は裏方の方が性に合ってるし、それにまだ仕事が沢山残っているのでね。リゲルには無理だな私がそのまま引き継いでやるよ」
サルガス国の王はリゲルと決まった。
先に陛下は国に帰っているはずだ。王女はまだ、カノーブス国にいる。こちらが落ち着くまで匿ってくれている。俺達は帰る自分の国へ。ベネトリン国へ。