魔族との遭遇
「さあ! 行きますか、師匠! 先手必勝ですよ」
俺はほうきに乗る。何人かが俺と並んで声をかけて来た。
「剣術もこなすなんて、変わっているな。ここにいる者は大抵“賢者”に憧れて魔法使いになっているのだが」
そうだよな、俺はイレギュラーなのだ。魔法の方が後だからな。
「君も賢者に憧れて弟子になったのか?」
そう聞かれると答えに困るが。
「俺はローズに拾われた。今の俺がいるのは師匠ローズのお陰なんだ」
一緒に飛びながら答える。
「そうか、彼女らしい……」
と思い出し笑いをする。
「いやーすまない。一時期弟子が数十人いた事があって、学校の様だった。魔術学校はあるが実戦や魔道具についてや歴史など教師より詳しいからね。あの時だって、学校へ行けと、言えばよかったのだ。だが、彼女は皆を受け入れた……」
「学校も賢者には敵わないからね。ローズに『お前達がしっかり教え、模範となれば生徒は離れん!』と 言われ教師が弟子入りした事は有名な話だも」
なる程……何も出来ない理由はそこにあるのかも知れない‥‥‥と、思うのは俺だけか? 皆きっとローズと一緒にいるだけで嬉しくてたまらないのだろう。何もしなくても率先してやってくれていただろうからな、ローズを見る。後ろから付いて来ている。何かあれば指示が出せるいい位置だ。
「ローズの弟子は今何人いるんだ?」
隣にいるやつに聞いてみた。
「さあ? 詳しくは分からないが……数百人は居るんじゃないか? ああ見えて……だしな‥…何歳か知っている者も今はいないかも知れない」
俺は……いいのか……そんな凄い人から、教えて貰っていたなど……知らなかったからと言って……あれやこれや…‥と頭に浮かぶ……う~ん……
「その顔……君、もしかして知らなかった? “賢者ローズ”は魔法を知る者なら知らない人はいないから……さっき確か、拾われたって言っていたよね? それなら、知らなかったとしても不思議ではないのか……まああの人は、差別はしないからね……」
「おっと、見えてきたよ……魔族だ……」
大きな川の向かい側に魔族の集団が見えてきた。
「この川は渡らせない、何としてもここで食い止める!」
後ろからローズの声が聞こえる。
「ここで止める! 皆力を合わせて行くぞ! レグルス! ファイアーボールを投げろ!」
ローズを見る、
「かまわん、思いきり投げていい!」
山が削れたのを思いだす……少し高めに狙いを定めて投げた。それは、激しい光の長い帯となって川の向かい側にいる魔族達を消し去っていく。地面も削れ、魔族がその溝に落ちて行く。
「やるな、レグルスとやら、えらい威力だ。剣の腕も楽しみだ」
隣の弟子仲間に言われた。