勇者の転職
『勇者コル・レオニス』俺はそう呼ばれていた。思い出した……俺は両親を魔族に殺され、兄弟2人で生きて来た。魔族が憎い、復讐の為に剣術を学び魔族を倒した。多くの魔族を屠ったそれだけだ。
だが、どれだけ倒しても俺の心は満たされる事は無かった。
「ローズ、初めから知っていたのか……」
「まさか、あんなにボコボコにされていて顔も腫れていた。傷が治り顔が分かった時には驚いたがな‥‥‥それでこれからどうしたい?」
ローズに聞かれる、
「勇者ってなんだ」
ローズに聞いてみる、
「私からすれば、ただの“殺し屋”だ」
‥‥‥俺は正義と信じて魔族を倒して来た‥‥‥
「私の答えに不服か?」
「俺は正義と信じて…戦って来た」
ローズはそっと目を伏せて言う。
「お前が魔族を多く倒した事で救われた人がいるのは事実で、人々に希望を与えたのも事実だ。勇者と呼ばれる位お前は強い、魔王を倒したのだからな。だが、お前はそれで満足か?」
多くの魔族を倒したが心は満たされない……
「俺は、この森での生活が好きだよ、戦う事よりずっといい…‥」
「何故お前は泣いているのだ?」
俺が泣いている? 頬を流れるものが涙だと気づく、そうか……泣いているのか…‥
「復讐は悲しみしか生まない……俺は……」
そう言ってローズの肩で顔を隠す。ローズは、
「そうだな、私もそう思うよ」
そう言って俺が顔を上げるまで暫く話はしなかった…‥気分が落ち着き顔を上げる、
「お前はこれからどうしたい?」
ローズが聞く、
「勇者は死んだ。俺はレグルスだ。貴方の弟子ですよ」
そう言ってローズに微笑む。
「そうか、ならば早速食事を作ってくれ腹が減った」
そう言って笑う、俺はいつもの様に食材を眺め考える。何を作ろうか……
その後ろ姿をローズは見つめる、
翌日も、ローズを起こす事から始まる。
「おい! ローズ起きろ! 朝だ!」
と布団をめくる、
「何故今日も裸で寝ている……何か着ろよ」
「お前も慣れてきただろう?」
布団を引き寄せながら言う。
「貴方も起きる事に慣れて欲しいなあ」
と布団を取り上げる。拗ねるローズ、
「今日も城に行くんだろう? サッサと支度しなよ!」
寝ぼけながら起きるローズ。
「ほら、しっかり起きて飯食えよ。時間に間に合わないぞ」
「少し位遅れても、問題ない……」
といやいや起きてテーブルに着く。と、またウトウトし始める、
「食べながら寝ない! 昨晩も何処か行っていたようだが、最近何をやっているんだ? 俺も手伝うから教えろよ」
そこで、はっとローズが目を開ける、
「そうだな、お前にも来て貰おう! だが、顔は見せるな仮面をちゃんと付けていけ。いいな、お前は死んでいる事になっているのを忘れるな」
「分かってますよ。今夜忘れないでくれ、俺を置いて行くなよ」
ローズは正装に着替えて家を出る。