表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雪が降る、星が綺麗な夜に

作者: 大空 天

初の短編小説です。



ーそれは星が綺麗な、静かな夜だった。




「少し話がしたいの。」


親友からそんなメッセージが来たのは夜の10時頃。

私は風呂から出てすることもなかったので「どこに行けばいい?」と返信した。


今は12月末。

昼間ですら寒いのに、こんな夜遅くなんて比べ物にならないほど寒いだろう。


そう思い、いつも着ているものより暖かそうな上着を引っ張り出して着ていると、


「夜星公園で待っているわ。」

と返信が来た。


「すぐ行く」

と手短に返信をし、きっと物凄く寒いであろう外の世界へと飛び出した。


「さっっっむ!!!」

予想通り夜の世界は極寒の地と化してした。

明日は雪が降る予報なのでこの寒さは納得出来る。


私は出来るだけ早足で公園へと向かった。


私達にとって夜星公園とは、重要な話や相談事をする時に使われる場所である。

学生の頃は進路や部活の話、恋愛の話もしていた。

この公園は、辺りにはたまにしか使われていない集会所と空き地しかないので比較的大きな声で話をしても聞かれにくい、秘密の場所と言っても過言ではないほど相談には最適な場所だ。


(最近はここで話なんてしなかったから珍しいな、一体何があったのだろうか)


そんなことを考えていると目の前には「夜星公園」と書かれている看板があった。電灯の数が少ないので薄暗く気味の悪い印象を与える。


「久しぶりね。」


奥のベンチから落ち着いた女性の声が聞こえる。目を向けてみると、私が想像していたイメージと違う人物がベンチに座っていた。


私の記憶では腰まで伸びた黒髪、艶のある肌、若干ツリ目だけど整った顔立ちをしていたはずなのだが、今の彼女は肩まであった髪は首元までバッサリ切っており、肌の艶はあまり変わらないが、ツリ目の下には隈ができていて、疲れているようにも感じた。

何より彼女から生気を感じられなかったのだ。


変わってしまった友人を見て、驚いた。私は唖然としてしばらくそこに固まっていることしか出来なかった。



しばらく経って落ち着いた私は彼女の隣に座った。


「ど、どうした?何かあったのか…?」


しかしまだ動揺が隠せない私に「ふふ、何緊張してるの」と昔と変わらないふんわりとした笑顔で笑ってくれたのでなんだか安心してしまった。


「…私がここに呼んだのはね、あなたと私に関して大事な話があったからなの。」


彼女は俯きながらゆっくりと言葉を紡いでいく。


「×××君のことなんだけど。」

「×××…?」

×××とは私の彼氏の名前である。

私は彼氏から決して酷くはないが暴力を受けている。絶対に見えない部位に。付き合い始めは優しかったのに。


しかしその彼氏は約1年前に亡くなったのだ。



『事故死』として。



「×××君が亡くなったのは事故なんかじゃないわよ。」


「…はっ?」

最近目の調子がおかしかったからついには耳の調子までおかしくなったのだろうか。


今、彼女は、なんて言った。


「…もうじき真実を知ることになるでしょうね。今は何も言えないわ。ごめんなさいね。」


「冷やかしならやめて」


もちろん冷やかしなんて思っていないが、今更そんな話をしてなんだと言うのだ。


暫くの間沈黙が流れた。

私の体はとっくに冷えきっており、空には星は見えず、雲に覆われていた。


「あなたはあの人のこと好きだったの?」


彼女は表情も変えず平然と言う。


「…昔は好きだった。けど、今は顔も見たくない」

この気持ちは事実だ。

暴力を振った人を好きになるなんてありえない。私は彼に依存なんてしていなかったので、むしろこの状況に心底安心している。


「そう。その言葉を聞いてやっと幸せになれるわ。…星が綺麗ね」


私にはその言葉の真意を汲み取れなかった。

だって、今は雪が降り始めていて、空に星なんて見えなかったから。


「もうひとつ言いたいことがあるの」

そういうと彼女は立ち上がって私の前に立ち後ろを向いた。


「何?」


「私ね、




自殺したいの」




そう言って私の方に振り返った彼女は今までで1番幸せそうに笑っていて綺麗だと思ってしまった。



目が覚めると、朝になっておりいつも通りベットで眠っていた。

正直親友からの衝撃の告白の後の記憶はない。その行為を止めようとしたのか、はたまた冗談を言っていると思い何もしなかったのか何も覚えていないのだ。


テレビをつけて、顔を洗い、着替えて、ふと机に目をやると黒色の一通の手紙が置いてあった。


(これってまさか)


差出人を見るとやはり親友の名前が記してあった。

封を開けると写真と便箋が1枚ずつ入っていた。

写真は私と親友と彼氏が笑顔で写っている写真だった。確かこの時期は彼氏はまだ優しかった。


「一体何が言いたいんだ、君は」


どうしてこの写真を送ってきたのかわからないのでとりあえず手紙を読むことにした。

手紙にはこう書いてあった。


「あなたがこの手紙を読んでいる頃には私はもうこの世にいないでしょう。なのでここで昨日話していた×××君の真実を記そうと思います。決して警察には話さないでください。

結果的に言うと彼は私が殺しました。あなたはいつも彼から暴力を受けていましたね。その時期のあなたはとても辛そうでした。私はそんなあなたを見ていられなくなり、×××君を誘い出し殺しました。最後に彼はあなたの名前を呼んですまなかったと言っていました。

私はいずれ自殺するつもりでした。なのでそのことを昨日あなたに伝えたのです。好きかどうか問いただした時あなたは嫌いだと言いましたね。あなたがまだ彼のことを好きならこのことを昨日あの場で話そうと思っていました。しかし嫌いだと聞いて私は心底幸せでした。


私のことは一生忘れないでください。私はあなたの事が大好きでした。死んだ後は天国か地獄か、来世で会いましょうね」

読み終わったあと私は初めて親友のことを怖いと思った。そして心底気味が悪いと思った。


(何言ってんだ、まだ彼女は死んでない…そうだ、直接確認すればいいじゃないか)


そう思い、テレビを消すこともせず玄関のドアノブに手をかけた時、


「昨日の午前6時頃、○○県在住の○○さんが自宅で遺体で発見されました」


アナウンサーの聞きやすい声が嫌でも耳に入ってきた。


「う、嘘…」


私の口から零れた小さな一言は静かな部屋に消えていった。

「星が綺麗」という言葉には「貴方は私の思いを知らないでしょう」という意味が込められているんだとか込められていないんだとか…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ