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私が選んだ婚約者  作者: 平彩まり
第1章−幼少期
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Act4.1ヶ月

ルーナ視点に戻ります。


あの日。

”王太子”というご身分の方の口から聞くには少々可愛らしいお願いをされたあの日。


あの日から私の生活は一転しました。


「ルーナ!よかったら今日もお父さんとお城へ行かないかい?」

「もちろんですわお父様!今支度をしておりますので少々お待ちくださいな。」


王子様はあの場で、私たちに友達になってくださいと言いました。

王子様からの大切なお話、それは私たちと友達になるというものでした。


あの瞬間のことは忘れません。

絶対あの瞬間、あの部屋の時は止まったのです!

特に長い間時を止める魔法をかけられたかのように止まっていたのはお母様方でした。

帰りの馬車の中でお母様から聞いたのですが、王城から正式に招待の文が届けば、もっと重たい重要な話であるのが普通なのだそうです。

なのでお母様方は、あまりに子供らしい、可愛らしい言葉が王子様から放たれたので、拍子抜けして一瞬思考が天まで登ってしまったそうです。

戻ってきてくださってよかった。


王子様のあのお友達宣言の後、ぬるっとアレクサンドリア王国の王妃シャーレ様がご登場され、お母様方とともに隣の小さな部屋へ移り、お茶会の開催となりました。


シャーレ王妃さま曰く、仲良しの三公爵家と私たちに奇跡の方に同い年の子を授かったのだから、小さい頃から一緒に育てていって成長を見守ろうねと、お母様方どうしで話をしていたというのに、みんなが忙しく会う機会が中々ないから強制的に引き合わせてやろう!と思い、今回の書状を送ったとのことでした。


「相変わらず貴女の頭の中はふわふわしているわね・・・。」


お母様は頭を抱えながらシャーレ王妃に言ったのが印象的でした。

シャーレ王妃はふふっとにこやかに笑って私がお土産にと持参した自慢のシェフ手作りマドレーヌを口に運び、私を見てルイと仲良くしてあげてね、と言いました。


突然話しかけられたのでびっくりして、

どきり、と心臓が跳ねたような気がしました。


それから、実際にルイ様たちとお話をして、私たちの距離はあっという間に縮まりました。

あの日を境に、私たちは王城に自由に出入りすることを許されたので、隙あらば王城へ遊びに行き、ルイ様たちと遊んだり、勉強をともにしたりするようになりました。


今日はあのお友達宣言の日からちょうど1ヶ月がたった日です。


私はあの日以降、自分だけで王城を訪ねる事もあれば、王城にてお仕事をされているお父様にくっついて登城してみたり、または騎士団の団長であるお母様のお仕事についてまわり王城に同行したりして、ルイ様に会いにいっていました。


今日はお父様のお仕事時間に合わせてルイ様に会いに行く予定です。


「お父様、準備が整いました!さあ行きましょう!」

「おっとと・・・ルーナは今日も元気がいいなぁ!」


身支度を終えてお土産のお菓子を持ったら侍女のジゼルと一緒にお父様の元へ急ぎました。

私はルイ様たちと会って遊ぶことが毎日楽しみで仕方がないのです。


お父様を急かすようにしてささっと馬車に乗ると、王城に向かって走り出します。


「今日はルイ様たちと何をして遊ぶんだい?」


お父様との馬車の中の時間では、みんなで何をしたか、何をする予定かを聞かれるのが定番となりました。

それを聞いてくれるおかげで、今日はどんなことをしようかなとワクワクが更に募ります。


「うーん・・・鬼ごっこかなぁ?」

「鬼・・・!?・・・そうかい。怪我をしないように気をつけるんだよ。」


私たちの遊びは意外にもアクティブです。

みんな体を動かすことが好きなのもあり、かけっこ競争をしたり、縄跳びをしたり、球蹴りをしたりと、とっても楽しいです。

でもお父様はもっとお淑やかにお茶などを嗜んでゆっくり過ごして欲しいと思っているそうで、楽しんでおいでとは行ってくれますが、いつも心配そうにしています。

鬼ごっこ、楽しいですよ?


話に花を咲かせているとあっという間に王城に到着してしまいます。

門をくぐり道を進むと、王城にはいくつもの塔が連なっており、その塔によって機能している役割が違うそうです。

お父様は軍事機関の総司令部にお勤めの総司令官さんなので、私がいつも行き来している王族の方の生活されている塔とは別の塔がお仕事場です。

そこは王族の方の生活塔より少し手前にありますので、いつも私より先に馬車を降りられます。


「それじゃあルーナ。仕事が終わったら迎えに行くね。」

「はいお父様。お務め頑張ってくださいね。」


そういってお父様をお見送りするのですが、お父様は中々馬車をお降りになりません。

そして数分経つと強制的に馬車の扉が開かれ、お父様の副官に当たる方がおはようございますと挨拶して登場され、お仕事場へ引きずられて行くのです。

ここまでがテンプレートというやつです。


副官の方は、仕事は山積みだ。ぐずぐずせずにさっさと来い!といつも言っています。

お父様は真面目にお仕事をされていらっしゃるのでしょうか・・・。


お父様をお見送りしたらまた馬車は動き出し、少しの間馬車の揺れに身を任せます。

そしてようやく止まり馬車の扉が開かれ、私はジゼルの手引きにより馬車を降りるとそこには、

先ほどお父様をお見送りした塔とは比べ物にならない大きさで、外観も厳かながらに華やかな装飾の施された重厚な建物がそびえ立っています。

それこそが、王族の方の生活スペース。私たちとルイ様との遊び場となっている場所です。


私が到着し、地面にちょうど足をつけた頃に、もう一台の馬車が私たちの馬車の後ろに到着しました。

もう見慣れてしまった馬車の一つです。

中から出てくる方と一緒にルイ様の元へ行くことを決め、私はその方が降りてこられるのを待ちます。


その馬車の扉が開かれるとそこから、ハニーブラウンの髪を揺らしながらユーリ様が降りていらっしゃいました。


「ユーリ様、ごきげんよう。」

「ルーナ!おはよう!今日も天気がいいね。」


ユーリ様は私を見つけると駆け足で近くへいらっしゃいり、私の手をひいてエスコートしてくださいます。

同い年だというのに、スマートなエスコートにいつもドキドキが止まりません!


「あ、もしかして今日のお菓子はパイだ!?」


ユーリ様は登城の度に私が持ち寄るシェフのお菓子が大好物です。

挨拶の次にはいつも私の持っているお菓子の中身を当てにきます。


「さすがユーリ様ですね!今日はブルーベリーパイです。

お母様が地方の騎士団の視察に行かれた際にお土産に買ってきてくださったブルーベリーを使ってシェフが焼いてくださったのですよ。」


今日のおやつの時間が楽しみですね、とユーリ様に笑いかけます。

するとユーリ様は少し顔を赤くされてうんうんと勢いよく首を縦に振りました。


「甘酸っぱいですね〜。パイだけに。」

「あまりくださらないことを仰らないでいただけますでしょうか。」


後ろでユーリ様の執事のトーマスとジゼルがニコニコ笑いながらも冷たく会話をしています。

あの二人はいつもそうです。お母様曰く、あれは犬と猿のような仲とのことです。

犬と猿?


今日は鬼ごっこしましょう!そうしましょう!と楽しくお話をしているうちに、私たちはルイ様の居るであろうお部屋に到着いたしました。

ルイ様のお付きのメイドさんがコンコンコンと3度扉をノックすると、ルイ様からお返事が返ってきて、私たちは扉の中へと進みます。


「ユーリ!ルーナ!遅いじゃないか!」

「おはようございます。ユーリ様、ルーナ!」


中へ進むとそこにはルイ様と一足先に来ていたであろうアリアが楽しそうに絨毯の上に座って2人で本を読みながら手招きしました。


「ルイ!おはよう!なんの本を読んでるんだ?」

「ルイ様、アリア、おはようございます!私たちも混ぜてください!」


あの日以来すっかり馴染んだ私たちはお互いを名前で呼び合うほどです。

アリアに関しては女の子同士すぐに打ち解け、敬称も略すほどに仲良くなりました。

王城の外でも二人で約束をして遊んだりするほどの仲です。


賑やかにお部屋の中で遊んでいると、昼食が運ばれて来ます。

気づくともうお昼の時間です。

いつもこうして時間を忘れて遊べるのはこの4人で遊んでいる時だけです。


私も一応公爵令嬢でありますし、将来を考えてお父様やお母様のお仕事に小さな時から付いていっていますので他のお家のご子息やご令嬢とお会いしてお話をする機会も多くあります。

そんな中では小さいながらに、”公爵令嬢”としての仮面を外すことなどできることもなく、いつもお母様に言われた通りの女の子を演じなければいけないので、早くお家に帰りたいなぁといつも考えてしまいます。

もちろん、お母様にくっついてたまに行く騎士団の訓練場で体を動かす時も、時間を忘れて動ける時ですが、あれは単に無になっているだけなので、4人で遊んでいる時とはちょっと感覚が違うのです。


「今日のお昼はパスタだ〜!」

「トマトパスタですね、美味しそうです!」


ルイ様と私はパスタにテンションが上がります。

パスタはみんな大好きです。


「うわぁでも野菜もたくさん入ってるみたいで午後からも元気に遊べそうだね!」


ルイ様も早く食べたいと言わんばかりのキラキラの表情でパスタを見つめています。

ですが、その隣でアリアがキョロキョロと視線をせわしなく動かしています。


「アリア、どうかしたの?」


私がアリアに尋ねてみると、アリアはパスタを指差して悲痛にこう言いました。


「ナスが入っています!!!」


アリア以外の私たち3人はその言葉を聞いて視線を合わせます。

そうでした。そういえばアリアはこの4人の中では好き嫌いが多く、その中には今日のパスタにも入っているナスも含まれているようです。

嫌々と首を振るアリアですが、動いたのはユーリ様でした。


「じゃあ、僕がナスはもらっちゃおう。」


アリアのお皿の中からひょいとナスを拾い上げ、自分のお皿の上に乗せてしまいました。

こんな光景、お母様などに見られたら怒られてしまいます!!

一応この部屋の中には執事や侍女たちが待機はしているのですが、基本こちらを見てはいませんので4人でこっそりこんなことをしてもバレないのです。


「ユーリ様・・・いつもありがとうございます・・・」


アリアはほっとしたような表情でユーリ様を見つめています。

アリアの嫌いなものは基本ユーリ様がいただいていくのがもう当たり前の光景になって来ました。

ユーリ様は僕はたくさん食べてお腹いっぱいになれるからお礼なんていらないさ〜といつも笑っています。

いいのか悪いのか私にはわかりません。はい。


ルイ様がじゃあ食べようと合図をしてくださり私たちはようやくパスタをいただきます。

みんなで美味しいねと話しながらいただく料理は格別に美味しいです。

もちろん、王城の一流シェフが作っている料理だから、というのもあるかもですが。

でもうちの家のシェフだって負けてないですよ!?


この日は食事を終えた後、外でお父様にお話をした通りに鬼ごっこをして遊びました。

気づくともう日は傾いており、アリアのお迎えが来る時間となっていました。

アリアのお父様のセブンスフィール公爵様も、私のお父様と同じく王城の敷地内の塔で魔力の研究をするお仕事をしていらっしゃるのです。

そしてうちのお父様とは違いとても効率よくお仕事をこなされるようで、いつもお迎えが一番早いのです。


「アリア様、お父様のセブンスフィール公爵様がお見えでございます。」


アリアの侍女がそういうと、アリアは頬をふくらませて不機嫌そうな顔をします。

もっと遊びたいのに、と小さな声でつぶやきます。

そうするとルイ様がこういうのです。


「明日も待ってるよ」


するとアリアは笑顔になって、明日また来ますね!とにこやかになります。

これも当たり前の光景となりました。

これはアリアに限らず、ユーリ様も、私も同じようにお別れの時は寂しくなるのでみんなで約束をするのです。


「アリア、また明日ね。」

「明日は木登りしような!」


私とユーリ様からの声もあって、アリアはとびきりの笑顔で手を降って部屋を去っていきます。

こうなるといつも寂しくなって、アリアが去った後もしばらく沈黙が続きます。


続いて、私のお父様もお迎えにいらっしゃったので、私もお部屋を後にする番になりました。

寂しい気持ちでいっぱいになりますが、また明日、とアリアとみんなと約束をしたので、お父様を困らせないようにパパッと帰りの支度を整えます。


「それではルイ様、ユーリ様、また明日!

この後お二人で楽しいこと、しないでくださいね!」


そう言い残して私はお部屋を後にします。

部屋に残ったお二人も笑顔で見送ってくれます。

この時いつも、声に出さず口パクでまたね、とユーリ様が言ってくださいます。

私はこれが嬉しくていつも笑みを深めてしまうのです。


「本日も楽しそうで何よりでございました。」


お父様の迎えの馬車が付いている場所まで、ジゼルとともに歩きます。


「はい!今日もとっても楽しかったです!」


ジゼルの言葉に興奮気味で返事を返しますと、ジゼルは柔らかく笑ってくれます。


「ルーナ様、明日ですが午前中は奥様の騎士団の方への同行が決定しておりますので、

ルイ殿下の元への登城は午後からとなります。」

「えっ、明日は午後からなの??そうなのかぁ・・・」


ジゼルの言葉に私は少し肩を落としました。

お母様を慕っている騎士団の方々に会えるのはとても楽しみなのですが、ルイ様たちに会える方がずっとずっと楽しいからです。


「でも先ほど、お約束をされていらっしゃいましたので、屋敷に帰りましたら殿下に午後から行きますという文をお送り致しましょう。

そちらに用事が終わり次第すぐに行くと書き記してはいかがでしょうか。」


ジゼルからの提案に私は賛同し、帰ったらすぐに文をしたためようと決めました。


明日は何をして遊ぼうかしら。


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