Act2.出会い1
30分ほどでしょうか。
馬車に揺られてついたそこは−−
「お・・・・っきい・・・お城・・・・」
大きな大きなお城でした。
門にいる騎士さんにお母様が何かバッジのようなものを見せ、
さらに私宛に王子様から送られてきたお手紙を騎士の人に見せると、
深く頭を下げられ、馬車ごと中へ通されました。
門を通った後もしばらく馬車に揺られ、
ようやく扉を開けられた先には、色とりどりの薔薇の花で囲まれた道が続いていました。
こんな素敵な道、絵本の中でも見たことがありません!
私が花々に見とれているうちに、
侍女のジゼル、そしてお母様も馬車から降りられ、
私も降りようとした時でした。
「お手をどうぞ。ルーナ嬢。」
ふんわりと爽やかないい匂いが鼻をくすぐりました。
そしてその香りの先を見ると、透き通るようなハニーブラウンの髪をした同い年くらいの男の子が私に手を差し伸べて立っていました。
ピシッと青い燕尾服を着こなしていて、エメラルドのような緑の瞳はそこに私を捉え、優しく微笑んでいます。
「え・・・っと・・・・」
私は思わず固まってしまいました。
何時もであれば、このようにして馬車から降ろしてくれるのは侍女のジゼルだからです。
そのジゼルといえば、頭を深く下げ、一寸も顔をあげる気配はありません。
「大丈夫よ、ルーナ。手をとって差し上げなさい。」
見かねたお母様が優しい声で私にそう言います。
目の前にいる男の子も、変わらずにっこりと優しい眼差しで私に微笑みかけています。
私は恐る恐る男の子の手を取り、体重をかけ、ゆっくりと馬車から降ります。
途中、バランスを崩しかけましたが、男の子が支えてくれて、
ふんわりと地面へ足をつけることができました。
私は、反射で、ありがとうございますと、男の子へお礼を言いました。
「怪我がなくて何よりだ。」
男の子はそんな私へさらに微笑みかけます。
ハニーブラウンの髪がふわりと風に揺れてとても美しいです。
も、もしかしてこの方は・・・
王子様・・・なのではないでしょうか!?
「はじめました。僕はユーリ。
ユーリ・ドロワと申します。」
私がそんなことを考えていると、目の前の男の子−−ユーリ様は自己紹介をしてくださいました。
ドロワ・・・と言いますと公爵家のひとつの家です。
王子様ではないようですが、由緒あるお家の御令息でいらっしゃいますし、お顔も佇まいも、何もかが美しいです。
「あ・・・・私は、ルーナ・クレセントリアと申します。」
すかさず私も自己紹介をしますが、するとユーリ様は
知っているよ、と柔らかく笑いかけてくださいました。
「僕も今日、君と同じで王太子に呼ばれたんだ。
これも何かの縁だよね!よかったら僕のことは気軽にユーリって呼んでください。」
優しく、エメラルドの瞳が細められました。
私はユーリ様の一挙一動にドキドキと胸が高まるのを覚えました。
「あ、ありがとうございます。
では、私のこともぜひ、ルーナと呼んでくださいませ」
私もユーリ様に負けじと笑みを返しながら、言葉を返しました。
すると、ユーリ様は先へ行こうと、私の手をゆっくり引いて歩き出しました。
私の歩幅に合わせて、ゆっくり、ゆっくり。
「ルーナ、もしかして緊張してる?」
時折、私に向かって声をかけてくれます。
「王太子に会うんだもんね。
僕も少し緊張しているんだ・・・
ルーナがいてくれてちょっと安心だよ。」
きっと私が緊張していることなど、ユーリ様には筒抜けなのでしょう。
気遣って声をかけてくださっているのが私でもわかります。
「えっと・・・私も、ユーリ様がいらっしゃるおかげで・・・
少し緊張がほぐれているような気がいたします。」
「そう?それは嬉しいなぁ!」
パッとひまわりが咲いたようににこやかに微笑まれました。
ドキドキが止まりません!!
そんな私達の後ろでは、侍女のジゼルが微笑んでおり、
その少し前で私のお母様と、ユーリ様のお母様らしき方が話に花を咲かせています。
お友達なのでしょうか?
そうこうしているうちに、
城の中へ案内され、大きな大きな扉の前に到着いたしました。
そこには、もう一人、私と同い年ぐらいの女の子が侍女とお母様と思われる人を携えて
お待ちになっていました。
「あら?あなた方はもしかして、
ユーリ・ドロワ様に、ルーナ・クレセントリア様でいらっしゃいますでしょうか?」
その方は、ストレートの長いブロンドの髪に、
濃紺の瞳・・・まるで星空のような瞳をした女のです。
「お初にお目にかかります。
私はユーリ・ドロワと申しますが、
あなた様は、アリア・セブンスフィール嬢でいらっしゃいますか?」
ユーリ様がその方に返事を返されました。
その方は優しく、慈愛に満ちた女神さまのような表情をされており、思わず私は魅入ってしまいました。
「そうでございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
ルーナ様も、どうぞよろしくお願いいたしますね。」
ユーリ様に向けられていたその瞳は、突如私の元に。
びっくりして一瞬固まってしまいましたが、私も公爵令嬢としてしっかりをお返事を返します。
「アリア様。ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。
ルーナ・クレセントリアと申します。
こちらこそ本日はどうぞよろしくお願いいたします。」
うん。しっかりご挨拶、できました!
お母様も後ろでうんうんと頷いていらっしゃいます。
セブンスフィール家ということは、魔力のとても強い公爵家のご令嬢様でいらっしゃいますね。
なんだかすごい方々が揃っていると改めて実感です。
一通りご挨拶も済んだところで、ここまで案内してくださった騎士の方が口を開かれました。
「それでは、王太子殿下のご準備が整いましたので、この先へとご案内いたします。」
そして、隣の両脇に立っていた重そうな鎧をきた騎士の方が2人係で重たそうなドアをあけました。
王子様・・・一体どんな方なのでしょうか。
いよいよ謁見です。
次回、王子様登場です!