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私が選んだ婚約者  作者: 平彩まり
第1章−幼少期
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ルイ・アレクサンドリア【2】

ルイ視点です。


「先日、パリアーテ伯爵家で行われたお茶会で大量虐殺事件が起きたって・・・」

「聞いたわ。痛ましい事件よね。」


空いている窓の外から会話が聞こえてくる。


「今回の事件は王族も被害に遭っているそうだし、少し心配だわ。」

「何でも黒薔薇貴族たちの仕業らしいぞ」

「まぁ!それは関わりたくないわ・・・」


使用人達の会話だろうか。


「それに、今回狙われているのはルイ殿下だとか・・・」

「何だって!?王城も危ないじゃないか!?」

「だって変じゃありませんか・・・?熱が下がらずもう2週間以上寝込まれているのですよ。」


そこまで聞いたところで、パタリと会話が聞こえなくなる。

閉じていた目を開けると、先ほどまで部屋にいなかったアンサーがやってきて、窓をしめたようだ。


「どうして窓を閉めたのですか・・・風が入って気持ちがよかったのに・・・」


僕がそういうと、アンサーはため息をついた。


「あまり心地の良い風ではなさそうでしたので。」


そして僕の顔を見て困ったように笑った。

アンサーは儚げだ。漆黒の瞳と漆黒の髪色。そして不健康に見えるほどに色白な肌をしている。

だが、その儚げな雰囲気と執事服がマッチして何とも言えない色気を感じる。

アンサーは他家のご令嬢やメイド達の間でも人気何だそうだ。


「そんなことはないですよ。風の声を聞くことも時には大切です。」


そういう僕の額から、緩くなった濡れたタオルを持ち上げ、冷えたタオルへと取り替える。

一日に何度この作業をされるのだろうか。

気づけばもう2週間以上経っているという。時間が経つのは早い。


「ここ1週間はユーリ達を見ていませんが、元気にしているのでしょうか?

手紙などは届いてはいませんか?」


心配なのは我が友たちだ。

この物騒な日常に巻き込まれてはいないだろうか、元気にしているだろうか。


「届いてはいませんよ。全く。殿下がこのような状態になった途端に連絡を断ち、面会にも来なくなるだなんて。」


友人とは何なのでしょうね、とアンサーは言う。

でも僕は、何か理由があるのだと確信していた。


「現在は少々物騒な日常ですし、ご両親に外出を禁止されているのかもしれませんが、手紙くらいは送ってくださってもいいものですがね。」

「僕の友人達のことを悪く言うのはやめてください。きっと何か理由があるのでしょう。

それに、こんな事態になっているのですから、無理にコンタクトをとってもらう方が僕が不安です。」


ぶつくさというアンサーに僕は少し苛立った。

確かに、僕が本格的に寝込み始めてからお見舞いに来てくれることは無くなったし、手紙も届かなくなって寂しい気持ちはあるけれど、僕は彼らを信じている。


「殿下がそうおっしゃるのであれば、そうなのでしょう。信じましょう。彼らのことを。

いえ、信じていてください。最後まで。」

「え?」

「いえ、何でもございません。さて、もう一眠りされてはいかがですか。」


アンサーの一言に僕は天蓋のカーテンを下ろす。

そしてコツコツとなるアンサーの靴音は僕のベッドから遠ざかり、部屋から出て行った。


最近、アンサーの纏うオーラや言動が変だと感じることがある。

僕が床に伏せっていて、アンサーも思うところがあるのだろう。

体調管理がなっていないのはアンサーのせいだ、などどお父上に言及されたとか。

大変な思いをさせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

小さな頃から僕の成長を見てくれている大切な人だからこそ、僕は大切にしたいと思う。


「こんな病気、早く治れよ・・・」


僕は投げやりに呟いた。

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