Act12.黒薔薇貴族
短いです。ほぼ会話文だけです。
「聴きました?ここ最近の王都で起きている事件のこと!」
「えぇ!小耳に挟んでおりますわよ・・・物騒な・・・。」
お昼時の王都。
多くの令嬢たちが集うお茶会。
小鳥たちの耳障りな囀りが絶えないようだ。
「何でも、例の犯罪組織が犯人だとか・・・」
「そう!そうなのよ!スターライト伯爵夫人が先日襲われたでしょう?
その時に見たんですって!頸に掘られた”黒薔薇の刺青”を!」
「まぁ!?最近また動きが活発になってきているとききましたわ!」
「そうですのよ!では今回の一件も”黒薔薇貴族”の仕業ってこと?」
手に持った扇子で口元を隠し、恐ろしい、悍ましい、と令嬢たちは口々に言う。
「何ですの?”黒薔薇貴族”って?」
「まぁ貴女知らなくって?有名よ。」
「大悪魔導士サタン・ローゼリアのことを支持する人たちのことよ!」
「サタン・ローゼリアって・・・数十年前にセブンスフィール家によって封印されたのではなくって?」
「そうよ、封印されたわ。でも、彼のことを慕っている人物たちが、サタン・ローゼリアの封印を解こうと今でも活動をしているというのは有名な話よ。」
「そうですわ。殺傷、殺人、臓器売買、奴隷の売買・・・洗いきれないほどの罪を犯しているそうよ・・・恐ろしい・・・」
「まぁ恐ろしい・・・」
「武力、魔力、知力、全ての力が揃っていて、精鋭揃いだそうよ。」
「でもなぜ”黒薔薇の刺青”だけでその黒薔薇貴族ってわかるんですの?」
「サタン・ローゼリアは手の甲にそれはそれは美しい黒い薔薇の刺青をしていたそうなんですの。
それをリスペクトして、また、仲間であることの印として、サタン・ローゼリアを支持している者は全員体のどこかに黒い薔薇の刺青を入れていると聞いたわ。」
「そうなんですの・・・でもこんな平和なお茶会には現れませんわよね!」
「当たり前じゃない!ここには優秀なガードマンや専属の護衛がいるのだから!」
小鳥たちはチュンチュンと大声で笑う。
こんな世界は許されない。
こんなに緩んだ、こんなに無意味な世界は許されない。
サタン様が支配された世界こそが有意義で、素晴らしい世界だ。
かつてサタン様は語った。
人は敷かれたレールの上を歩いている。
敷かれたレールに沿って歩き、行き着いた先に幸福が待っている。と。
レールから歩みを外したものが創り出す世界は愚かで、怠惰で、欲にまみれた、不純物が創り出す何の面白みもない世界だと。
嗚呼、今の世界は貴方様の仰る通りの世界になってしまった。
「小鳥ちゃん達、最後のお茶を楽しむといい。」
サタン様。必ずお助けします。
そして、再びこの腐った世界に粛清を。