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私が選んだ婚約者  作者: 平彩まり
第1章−幼少期
12/26

Act9.見送り


ーーーーーーー


「最近、王都で不穏な動きがあるんだって?」

「なんでも、高貴な身分の方が次々と襲われているそうよ。」

「豪商や伯爵、侯爵に公爵家!」

「中には遠縁の王族の方も襲われただとか・・・」

「噂では男爵家か子爵家が関わっているだとか。」

「まぁ!私たちも用心しなくてはね。」

「ほほほ、私たちには優秀な護衛が付いていますから心配なくってよ!」

「そうですわね!ほほほほ!」


ーーーーーーー



「お父様、お母様・・・。」

「シアラ、ルーナ。すまない。今日からしばらくお父さんとお母さんはお家に帰ってくることができないんだ。」

「本当にごめんなさいね。普段ならそろそろ避暑地へ行ってゆっくりと羽を伸ばせる季節なのだけれど・・・」


お家の玄関にて。

シアラお兄様と私はお父様とお母様のお見送りをしていました。


「シアラもルーナも、しばらくは訓練所での訓練には来なくていいわ。

だからと言って、怠けてはいけないから屋敷内でしっかり訓練するのよ。それから、あまり屋敷から出ないで頂戴ね。」


お母様はシアラお兄様と私の身長に合わせてしゃがみこみ、私たちの頭を優しく撫でてくれました。

シアラお兄様は隣でぎゅっと拳を握っています。お父様とお母様の真剣だけど、どこか寂しそうな表情に私はなんだかとても寂しい気持ちになります。


なぜこのようなことになっているのか。

それは今王都内を騒がせている事件が関係しているのです。

その事件というのは、王都内にて身分の高い公爵様などが頻繁に襲われているという事件です。

中にはルイ様、王族の親戚の方も被害に遭われたという事で王都は警戒体制が取られているそうなのです。

私のお父様とお母様は騎士業、軍事業に関わるお仕事をしていますので、今日から自体が終息するまではお城に泊まり込みでお仕事をされることとなったのです。

お父様が言っていましたが、今までにこのような緊張感のある空気になったのはこれが初めてということです。


「ルーナ、できれば王城に行くのも控えて欲しいのだけれど・・・。ルイ殿下も、あれから体調を崩されたままだと伺っているわ。」


お母様が心配そうに私の顔を見ます。

先週、ルイ様が夏風邪を召されたと聞いてお見舞いに行きましたが、実はあれから2週間がたちました。

悲しことにあれからルイ様の病状は悪化してしまい、今も熱が下がり切らずお部屋に篭ったままの生活をされているのです。


「奥様、それにつきましてはご安心ください。

ルイ殿下の執事からも、登城は控えるようにとご指示をいただいており、今後は殿下の容体が落ち着くまで週1ほどのペースに落とすことになりました。」


ジゼルが私の2歩後ろに立っていますが、お母様の心配を拭うように説明してくださいました。


「そう・・・まあ、王城の警戒態勢は最大となっているから、道中を襲われない限りは問題ないでしょうけれど・・・。

ルイ殿下の体調の方も心配ね。今回の事件に一癖噛んでいるんではないかと見られているから・・・」

「アンナ。それ以上は。」

「えぇ・・・そうね。ジゼル、先ほど話した通りよ。警戒を怠らないで。」

「承知いたしました。奥様。」


ルイ様のご病気が今回の事件に関係ある??

そのあとはシアラお兄様と私の頭上を飛越し、執事長のオランジェとシアラお兄様の執事、そして私の侍女ジゼルとで話が進んでいきます。


「それじゃあオランジェ、後は頼んだよ。」

「承知いたしました、旦那様。」


それじゃあと行ってお父様はシアラお兄様と私、最後にお母様のおでこにキスをしてくださいました。

これは長期任務に行かれる際などにいつもしている、私たち家族のおまじないのようなものです。

無事に帰って来れますようにというおまじないです。


「それでは行ってくる。シアラ、家を頼んだぞ。ルーナ、お兄ちゃんのいうことちゃんと聞くんだぞ。」

「いってきます!」


いってらっしゃいとシアラお兄様と一緒に、馬車へ乗り込むお父様とお母様へ手を振ります。

どうか今回も、ご無事で帰ってきてくれますように・・・。


「シアラお兄様、お父様とお母様はいつおかえりになると思いますか?」


屋敷の中へ戻りながら私はシアラお兄様に尋ねました。


「お父上達にもわからないんだ。僕にわかるはずないだろう・・・

僕は学院に通う時間もあって。ルーナは一人で屋敷にいることもふえるだろうけど、オランジェ達が守ってくれるから絶対に無茶しちゃいけないよ!」


シアラお兄様は人差し指を立てながらお話ししてくださいます。

アレクサンドリア王国では、6歳になると学校に通うことになることが決められています。

寮生活か、通学生活か選べるのですが、シアラお兄様は騎士としての訓練の他にも、我がクレセントリア家の納めている領地運営についても学ばれているので、通学生活を送っていらっしゃいます。


「まぁ・・・シアラお兄様が学校にいっていらっしゃる間は屋敷に私一人なんですね・・・

なんだか緊張してきちゃいました。」

「大丈夫だって!さあさあ、お父様とお母様が言ってらっしゃったように、訓練を怠ってはいけないよ!早速始めよう!」


不安は残りますが、シアラお兄様の後ろにくっついて屋敷の中に併設されている訓練施設へ行き、今日もこれから訓練に励みます。

そうですね。気持ちがモヤモヤしているときは、体を動かすのが一番ですよね!


ーーーーーーーーーーーーー


「ジゼル、このお手紙をルイ様宛に出してもらえますか?」

「承知いたしました。」


その日の夜、私はルイ様に手紙をしたためました。

その後の体調について、寂しくないか、今週末には3人で様子を見に行くこと。

アリアやユーリ様とは密に手紙のやりとりをしたり、お互いの家で遊んでいたりしているので、今度3人揃ってルイ様のお見舞いに行こうとお話をしたのです。


「ねえジゼル、ルイ様のお見舞いには何を持っていったらいいと思う?」


手紙と交換にジゼルが淹れてくれた白湯をいただき、一口飲みます。

ジゼルの淹れてくれる白湯は飲むと落ち着くちょうどいい温度の白湯なので、とっても好きです。


「そうですね・・・きっと先日持っていったお花がすでに枯れているかと思いますので、新しいお花はお持ちするのが良いのではないでしょうか。」

「まぁそうね!そうね・・・あれから2週間も経ってしまっているのだものね。」


お父様とお母様がお食事の後に、お二人がお部屋でお話しされていたことを私は聞いていました。

ルイ様のお風邪が、通常の風邪とは違うということ。

それは、アリアのお父様であるセブンスフィール公爵様の魔法でもどうにもならないということ。

今王都で問題になっている事件と関係がある可能性が高く、ルイ様が狙われている可能性があるということ。


何としても、ルイ様を助けなければ。

ちなみに知り得た情報はすでにアリアとユーリ様にはお伝え済みで、明日2人に会うのですが、その際には私たちにできることを考えて、ルイ様を救う作戦を考える予定なのです。


「ルーナ様。一つ忠告をしておきますが、あまり勝手なことをなさらないようにしてくださいね。」


あれれ、私何か顔に出ていましたでしょうか!?


「か、勝手なことってなんでしょうかね!?何にもありませんよ!!」


私は精一杯否定しましたが、ジゼルは呆れたようにため息をつき、いつもより鋭い目つきで私に言います。


「旦那様と奥様のお言葉を肝に命じて行動なさってくださいね。」


はーいとジゼルの言葉に返事をしつつ、私はベッドに入ります。

明日の作戦会議、バレないようにしないと・・・。

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