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私が選んだ婚約者  作者: 平彩まり
第1章−幼少期
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Act8.日常3


ルイ様のお見舞いに行ってから2日後。


やってしまいました。私はやってしまいました。


「・・・・・38度はありますね。」


侍女のジゼルが私のおでこに手を当てて熱を測ります。

ルイ様に続いて、私まで熱を出してしまったのです。


「熱なんてないもん・・・今日も訓練行くもん。」


それに今日は、アリアと街にお出かけする約束をしています。

そう言ってベッドから出ようとすると、ジゼルは体に見合わない強い力で私をベッドに戻します。

クレセントリア家で働くものは、全員武力の力を持っているのだそうです。当然ですかね。


「ルーナ様。いけません。今日はしっかりお休みなさってください。

去年とは違って、今年は武力の力もすごい伸びとなっております。今のルーナ様ぐらいでしたら熱なんて寝てれば夜には引いてます。」


そういって夏場だというのにメイドさんに持ってきてもらった厚手の布団を首まで被せられます。

そうでした。武力の力をもつ人はその力の一つとして治癒力が非常に高いです。熟練度にもよりますが。

怪我だけかと思いきやこのような風邪などにも有効なようです。便利な体です。


「本当??」


私の弱々しい声に、本当ですから寝てください。と淡々とジゼルは返し、白湯を持ってきてくれました。

白湯を飲むと体の内側から温まります。なんだか眠たくなってきました・・・。


「本当です。さあ、ぐっすりと一眠りしてください。」


そのジゼルの言葉を最後に、私は眠りにつきました。


ーーーーーーー


『出たいーーーー。


ーーーーーーここから出たいの。


もう一つの力。


出して。出して。


出してくれれば、貴女はもっと強くなれるーーーーー。』



ーーーーーーー


ハッとして目が覚めました。

今のは夢でしょうか?それにしては、私に話しかけているような感覚でした。

おでこにびっしりを汗をかいている感覚があります。

ぼーっとしていた目がピントを合わせると心配そうに覗き込んでいる顔が。

顔。


「!?」


びっくりして飛び起きると、覗き込んでいた顔と私の顔がゴツンと勢いよくぶつかりました。


「いたたた・・・もう!何するんですかルーナ!」


そこには、私のおでことぶつかったおでこを抑える、アリアがいました。


「アリア・・・?え?アリア?なんでここに??」


私は理解が追いつかずあたりを見渡しますが、ここは私の部屋です。間違いありません。

アリアが大きな声をあげたことに気づき、ジゼルがアリアの横から顔を出します。


「おはようございます。ルーナ様。お加減はいかがでしょうか。」

「まだ、ちょっと体がだるいです・・・」


私の答えに、再びジゼルはおでこに手を当てて私の熱を測ります。


「まだ少々熱がございますね。さあ、もう一度寝てください。」


起き上がっていた私をまたベッドに押し戻して布団を被せます。

そんな私をみて、アリアがふふっと笑います。


「あらら、いつも元気なルーナがこんなに弱々しくなってしまっているなんて、なんだか不思議な感じですね。」

「ええ。私も驚いております。

ですがルーナ様は治癒力も高くていらっしゃいますので、看病のやり甲斐がないのが少々残念です。」


ふふふと2人で笑いあっています。

そこの2人!!失礼ですよ!!


「ルーナ様は少々ご無理をされがちなので、たまにこうしてゆっくりされるのも大切なことなのです。」

「そうですわね。いつも男たちと一緒に駆け回っていますものね・・・。」


なんだか2人の言葉に棘を感じますよ・・・。


「今日だって私と一緒にショッピングを楽しむ約束をしていましたのに!

でも早く治って、また遊べるようになってほしいですわ。

あ、そうですの、私お見舞いの品を持ってきたのです。こちらをあとでルーナに渡しておいてください。」


え、直接私に渡せばいいではないですか!?・・・と思いましたが、睡魔がまたやってきて、意識を保っているのも限界のところです。


「素敵な代物ですね。あとで必ずお渡ししておきます。」

「よろしくお願いします。

ルーナは外を駆け巡るのもいいですが、少しは本でも読んで武力の力以外も磨くことをしたらいいなと思いますの。

ルーナからは、なんとなくですど、私と同じ魔力の力を感じるような気がします。」


魔力の力?私に?それはないですよ。

そんなもの私の体の中に感じたことなど一度もありません。


「なるほど。セブンスフィールの大魔導士一族の力をもつアリア様がお感じになったのですから、きっとそうなのでしょうね。」

「勘だけれどね。だけど魔力の力を引き出すのってとっても大変なんです。

私たちの一族のように元から強い魔力を持っている人はそうでもないのですが、内側に力を秘めているタイプの人はとてもね。」


アリアが私の布団の上をゆっくりトントンと叩いてくれています。

心地がいいです。


「私たちは、この国の王太子様の友人。そのことの意味は履き違えてはいけないとお母様にいつも諭されるのです。

私たちは有力者。友人でありながらも、ルイ様をお守りすることも兼ねられているのだと。」


私たちが、ルイ様を守る・・・?

そんな役目が?


「だからこそ、私はルーナにも、ユーリ様にも、ルイ様自身も。

一緒に成長していきたいなと思っているのです。」


アリア、そんなこと考えていたんだ。

私、そんなこと考えたこともなくて、ただみんなで遊ぶのが楽しくて・・・。


「でも、かしこまってみんなで勉強するより、今みたいに自然にいられるのが私も楽しいから、このままでいいんです。

私が少し導ける部分があるのであれば、少し手を貸してあげようとは思ってますがね。」

「そうでございましたか。アリア様は聡明でいらっしゃいますね。ルーナ様とは大違いです。」


ジゼル!?なんてこと言っているの!?

私はまだおきていますよ!!


「ルーナはルーナで、みんなを外へ遊びに誘ったりすることで、身体能力の強化だとか、体力作りに無意識に貢献しているから、それでいいのですよ。」


アリア、ちゃんと見ていてくれているんですね。

とっても嬉しいです。


「そうですよ、ルーナ。私はちゃんとあなたを見ています。

早く寝て、よくなってくださいね。」


アリア、私の心が・・・・


私の意識はそこで途切れました。

長いことアリアとジゼルが話していたように思いますが、次に目が覚めた時はもう外は真っ暗になっており、アリアも家に帰ったとのことでした。

わざわざお見舞いに来てくれるなんて、本当にアリアは優しいな。


起き上がり、灯りの点いているベッドサイドを見ると、キラリと何かが光りました。


”早くよくなってね。 アリアより”


そこには、簡単に記されたアリアからの手紙と、金色に縁取られた長方形の薄いステンドガラスの板のようなものが置いてありました。

ステンドガラスには私の好きなベルフラワーが陽の光を浴びるように美しく描かれており、朝露と思われる花びらの上の雫がダイヤのような透明な宝石を埋め込む形で表現されています。

とても美しいです。

手にとって灯りに照らして見惚れてしまいました。


「それは”しおり”ですよ。」


そこへ、起きたことに気づいていたであろうジゼルが水を持って来て教えてくれました。


「読みかけの本の間に挟んで、次読むときにまたそこから読めるように印をつけるものです。」

「しおり・・・私全然本とか読まない・・・」

「だからですよ。体を動かすのもいいですが、レディとしての嗜みも忘れないでという思いを込めた見舞いの品だそうです。

素敵ですね。」


ジゼルに教えてもらって、再びしおりに目を落とします。


「このきらめいているのは・・・」

「魔力石でしょうね。私に魔力はありませんが、微力に感じ取れます。

こう言った魔力石は作り手の願いが込められています。

もしかするとこのしおり自体、アリア様がご自身の魔力を込めて作られたものなのではないでしょうか。」


アリアが、私のために作ってくれたもの・・・?


「こんなに素敵なものを・・・

私、何をお礼にしたらいいでしょうか!?」


「そうですね・・・まずは体調を万全にして、

次こそアリア様とのショッピングをすっぽかさないようにすることが大切かと思います。」


ジゼルはまたも淡々と答えます。


「違うよー!!!

そういうことじゃなくてね!?」


そういうとジゼルは、珍しく微笑み、体調がよくなったら一緒に考えましょうねと言いました。

アリアの好きなもののリサーチとか、これから楽しみが増えるなぁと思い、軽い夕食をいただくことにしました。

この辺で日常話は一旦ストップです。次回から幼少期編の山場へ踏み込み始めます!

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