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反撃

1ラウンドと堂本の動きは明らかに変わっていた。

佐山はパンチを繰り出そうとすると、そのタイミングを前もって知っているかのように、堂本が標的から外れてしまう・・・・。


「ステップだ・・・・、無駄が無く派手でなく軽やかだ・・・・。」

筋肉質な上半身だが手足の長さが目立ち、切れのある顔立ちの亮一は、リング内のダンサーのようであった。

レフェリーの徳富は本格的なステップに、高校生離れした亮一の才能を垣間見た。

「様子をみてたのだな・・・、バカにしやがって・・・・、佐山は殺られるぞ!」


リーチで相手との距離を測り、ステップで守備範囲と攻撃範囲を往来するボクシングは、いわゆるアウトスタイルであった。

強烈な張り手のようなジャブが「ピシッピシッ」と鞭を打つ様に、佐山の顔面をとらえた。

2分間にいったい何回ヒットしたであろうか・・・・、気づいてみると顔が何発も虫に刺されたかのように腫れ上がっていた。


「カモンベイビー!カモン!」

佐山は挑発にいらいらを募らせた。

上まぶたの腫れがひどくなり、視界が三分の一程度になっていた。

「主将しっかり!左フックよ!」

セコンドのメス山猫が金切り声を張り上げる。

最後の1本、カンフル剤をケツ打たれ、破れかぶれで暴走突進してきた。


左フックが当たるまでも無く、亮一の右カウンターパンチが佐山のテンプルをとらえた。

見えないガラスにぶつかり、弾かれた様にもんどりうって後頭部からリングに落ちた・・・・。

カウントをとるまでもない。

ショックで全身が小刻みに痙攣し、股間をたちまち黒く湿らせた。

マウンテンゴリラが捕獲された瞬間だ・・・・。

窓の外にはどこから嗅ぎつけたのか、新聞部のフラッシュが激しく炊かれていた。


「・・・・・」

沙耶香は恍惚とした表情で、驚愕と不思議な喜びのような感動を覚え、ショートパンツの奥にある自分自身が熱くよだれを流し、息づくのを感じた。


佐山はそれからたっぷり1週間は学校に復帰できなかった。

その間、学校内ではこの二人の決闘の話題で持ちきりであった。

とりわけ構内新聞に掲載された佐山の無様な姿は、発行配布直後に「発禁」になるほど強烈な画像であった。


「〜ボクシング部の無敵戦艦、佐山猛、沈む!〜」という強烈な見出しの下に、失神した画像がでかでかと掲載された。

副題に「怯える美しきマネージャーと学園のニュースター」とあり、悩ましげな藤川沙耶香と猛々しくも爽やかな堂本の画像もあった。


マスコミの力とは本当に恐ろしい。

これにより、堂本は一躍学園のスター、貴公子として賞賛の的となり、沙耶香の人気は決定的なものとなった。


一方今までの学園生活で学業、スポーツと負け知らずの電車道を歩んできた佐山は、人生初の挫折に陥り、完全に飼いならされた動物園のゴリラのように生気を喪失した。

気がつくと佐山猛は、いつしか学園からその姿を消していた。

半年もすると彼の話題も朽ち果てて、堂本と沙耶香の捏造ゴシップ記事が、学園新聞の話題をさらっていた。


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