再会
男女共学の進学校、スポーツもさかんな誠心学園高校で彼はたちまち注目の的となった。
身長は180cm後半、混血児独特の風貌とその瞳に女子生徒は釘付けとなった。
しかし彼は幼少からそういった女の粘りつくような気配と視線が大嫌いであった。
「あのそっけない感じ、冷たいようなところがいいのよ。」
と返ってその態度は逆効果となった。
学校での勉強は彼にとっては単なる復習でしかなかった。
大学の数学科レベルの学問知識があったので、微積分の入試問題くらいでは歯ごたえがない。
同じクラスに東系大学医学部に合格確実とされていた佐山猛は、堂本亮一が転入してきたために、学年で初の2位に甘んじることとなった。
佐山は歯軋りした。
勉強でトップから転落した記憶はいままでに一度たりともなかったからだ。
しかも堂本のような風貌がことのほか癪に障った。
佐山は背丈もほぼ堂本と変わらないのだが、その生まれもっての容姿が彼とはかけ離れていた。
広く張り出した額の下に細く小さな両眼、エラは張り出し将棋の駒のようであった。
末広がりのひしゃげた鼻と、分厚くまくれあがった下唇が、彼の欲望と迫力を表現していた。
佐山はボクシング部の主将で、インターハイ・ライトヘビー級のチャンピオンであった。
そのボクシング部に堂本が入ることを知ったとき、佐山はどれほど喜んだかは言うまでもない。
何しろ合法的に堂本を血祭りにあげることができるのだから・・・・。
「這いつくばらせてやる・・・・」
負けず嫌いの佐山は、堂本が入部する前日の晩、16オンスのグローブを磨きながら、暗い自室で佐独り言のようにつぶやいた。
「さ・・・・佐山。おまえは佐山猛・・・・。」
堂本は一瞬眼を疑ったが、この風貌はまぎれもなかった。
「おまえがメキシコくんだりからやってきたために、すべてが台無しになった!、オレは今日このチャンスを演出するために、どれだけの犠牲を払ったかわかるか?」
サングラスを外し海へ投げ込むと、苛々した様子で二本目のシガーに火を着けた。
佐山は肩から吊るしているショットガンをおもむろに構えて堂本へ向けた。
「ガシャン・・・」という音で弾は装填された。
さすがに彼は観念しかけた・・・・。
メキシコ育ちの彼は、銃の持つ圧倒的な、非常なまでの威力を十分に理解していたからだ。