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聖女なんかじゃありません!  作者: はる乃
本編第三章
32/33

【本当の名前】

更新しました!

スローペースですみません(汗)



結果的に同行者が一人増え、魔族であるローゼを加えたセナと花の三人は、既に国境を越えて帝国領内へと入っていた。


セナの身体強化と風魔法を合わせた移動方法は、めちゃくちゃ早かった。城を出てから4日程で帝国に着いてしまったのだから。

あの胃の浮く感じには全く慣れなかったが、無事に国境を越えられて良かったと花は安堵の息を漏らした。


帝国領内に入る時の入国審査では、セナが何かカードのようなものを提示したら驚く程にすんなりと入れた。その後はセナが事前に用意していたらしい荷馬車に乗り込んで、三人は今、帝都を目指して進んでいる。



「ねぇ。入国審査の時に見せてたあのカードは何?」



ローゼがセナに質問をするが、セナはガン無視である。ローゼに対してはずっとこの調子なので、毎回間に花が入るようになっていた。花は小さく溜め息をついてから、セナにローゼと同じ質問をする。



「私もちょっと気になってた。セナ、あれは何のカードなの?」


「……あれは帝国の貴族だけが持つ事を許された身分証明カードだ」


「え。でも、セナの行動って秘密にしていた方がいいんじゃないの?」


「私の家は、表舞台では特に目立たった存在ではないからな。身分証明カードを提示したところで何の問題もない。仮に不都合が生じたとしても、私の家は皇帝直属だ。なんとでも出来る」


「成程……」



―――皇帝直属。


セナの主が偉い人だとは思っていた。けれど、まさか皇帝直属とは。

花は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。


すると、セナが御者台からチラリと花を見て、花が予想したであろう事を訂正した。



「私の家は皇帝直属だが、私自身は皇太子殿下直属だ」


「皇太子……?」


「確か帝国の皇太子って、ゼノって言ったっけ。皇帝じゃないならまだマシか。良かったね、ハナ」


「え?」


「……ローゼ、気安くゼノ様を呼び捨てるな」


「あ!無視しなかった!流石に主君の事では黙っていられないって事かな。セナは忠実な飼い犬だね~」


「ちょ、ローゼ!そんな言い方……」



花が慌ててローゼを窘めようとすると、ローゼはキョトンとした顔で「違うよ」と否定した。



「俺、褒めてるんだよ?言うなれば、俺自身もカオル様の忠実な犬だもの。それだけ主君が大事って事でしょ?だから俺は好きだよ、そーゆう奴!」


「……そう、なんだ」



さっきローゼが言っていた『皇帝よりマシ』という言葉が気になっていた花だが、ローゼの口から『カオル様』と言う名を聞いて、一気に思考が此方の方に持っていかれた。


ローゼの……魔族達の主である、カオル。見た目や声もそのままに、花の兄である『花咲 薫』の魂を持った人。

花がカオルの事をローゼに訊いてみようかと悩んでいると、ローゼはそんな花の様子をじっと見て、何かを探るように問い掛けた。



「……ハナ、気になる?カオル様の事」


「え?!……あ、うん、その……」


「ハナになら、俺が答えられる範囲で教えてあげてもいいよ。カオル様の事」


「……私になら?」


「そう。だから、まずは俺の質問に答えてくれない?」


「なあに?」



荷馬車が揺れる度に、シャラリとローゼの腕にある魔法封じの魔導具から綺麗な音が出る。最初は両手をガッチリとくっつけて拘束具の役割も担っていたが、セナが魔導具に何かをした途端、ただの腕輪のようになり両手が離れて自由になった。しかし、両手が使えるようになっても、自力で外す事は出来ないらしい。


見た目だけ見ればただのアクセサリーのような、綺麗な魔導具。それを持て余しながら、ローゼは赤い紅色の瞳でハナを見つめていた。どんな僅かな情報も見逃さないように。



「ハナは、本当の名前?」


「……え?」


「本当の名前を教えてよ。教えてくれたら、俺も教えてあげる」



ローゼの質問に、自然と身体が硬くなる。質問の意図は一体何なのか。


花の蜂蜜色の瞳が揺れた。



「聖女様。……お前は、本当は『誰』なの?」



荷馬車で移動を始めてから、どれだけの時間が経過していたのだろうか。昼過ぎ頃に出発した三人だったが、気付くと空は茜色に染まってきていた。




* * *



アルファポリスにて、別小説も載せてます。

『乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!』


興味がありましたら、是非是非読んで見て下さい☆

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