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聖女なんかじゃありません!  作者: はる乃
本編第三章
31/33

【生物兵器】

更新遅くなってすみません(汗)



セナと花がジュレード王国を発ってから2日目の朝。

ジュレード王国の第一王子執務室にて。王子二人と側近であるルイ、騎士団長のアーク、王宮魔術師団副団長のロロエルが集まって、焦った様子で今後の事を話し合っていた。


話し合いの内容は当然、聖女捜索隊の編成について。

昨日の朝の内に花が居なくなっている事が分かり、クラウス達は直ぐ様国王であるレイモンドに聖女捜索の許可を求め、何とか承認を得た。

事が事だけに、大々的に軍を動かす訳にもいかず、秘密裏の捜索となる。


クラウス達が地図や信頼できる騎士のリストに目を通していると、執務室の扉がノックされた。



「殿下、ジェレミアでございます。入室しても宜しいでしょうか」


「入れ」



入ってきたのはジェレミア・ローレンス。ローレンス侯爵家の次男で、父である宰相の補佐官をしている男だ。肩口で切り揃えられたサラリとした藍色の髪を揺らし、「失礼致します」と言って執務室内へ入ってきた彼は、持っていた書簡をクラウスへと渡した。



「何か分かったか?」



クラウスは書簡を受け取りながらジェレミアにそう問い掛けると、他のメンバーもジェレミアへ視線を向ける。



「今のところ、王宮内に魔族が侵入した形跡は発見されていません。恐らく、今回の聖女様失踪に魔族は関わっていないかと」


「うーん。ロロ、どう思う?」


「ジェレミアの言った通りだと思う。この間の戦闘で分かったが、奴等の魔力は独特だ。魔力の痕跡を見れば、奴等かそうじゃないか、すぐに分かるだろう」


「成程な。それで、ジェレミア。この書簡は?」


「帝国にいる協力者からの調書です」


「協力者、ね」と言いながらクラウスは書簡を開き、内容を見てみるみる顔色を変えた。それだけで、その書簡に書かれている事が『良くない事』だと分かる。



「…………ゼガル皇帝が聖女を手に入れる為に動いているだと?既に厳命が下された?!馬鹿な!!」


「なっ?!クラウス殿下、それではまさか……?!」



執務室内に動揺が走る。

クラウスの隣に居た第二王子であるリアムが、額に手を当て溜め息を吐いた。



「ならば、今回のハナ殿失踪は十中八九、帝国が絡んでいるに違いない」


「……厄介な!こんなに早くハナの存在が帝国に知られてしまうなんて!」



リアムとクラウスの言葉に、ジェレミアが「きっと先日の、魔族との戦いのせいでしょう。ハナ様のお力は絶大でしたから……」と、今回の件は不可抗力であったとフォローするが……


アークが唇を噛み締めて、己の拳を執務机にドンッとぶつけた。



「間違いない。くそっ……私にもっと力があったなら……!」


「そう腐るな、アーク。お前は十分強い。どの道向こうは有り得ない数の魔物を召喚していたのだ。……結果的には、聖女であるハナが出てくれて助かった」


「ですが……!」



クラウスの言っている事は、頭では理解出来る。しかし、どうしても感情はついていかない。割り切れずに、アークが苦々しく思っていると、ロロエルが静かに、しかし熱の篭った言葉を口にした。



「アークが腐るのも分かる。聖女殿の力は想像以上だった。アレは俺にも真似できない」


「何を言う、ロロ。確かに魔物達の数は有り得ない位に多かったが、お前の魔法でも……」


「無理だ。俺の魔法でも倒せるが、一般人や建物も巻き込んでしまう。あんな風に魔物だけを滅する等、どんな魔術師にも不可能だ」


「不可能、だと……?」


「……彼女は決して過去の遺物なんかじゃない。魔力さえ取り込む事が出来れば、最大の生物兵器だ」


「ろ、ロロエル!そんな言い方は!!」


「事実だよ、アーク。だからこそ、聖女殿を他国に盗られる訳にはいかない。既に帝国の手に落ちているならば、早急に奪還すべきだ。軍事国家の帝国に渡れば、我々に残る道は破滅しかない」



ロロエルの重たい言葉と真剣な瞳に、執務室内は沈黙した。

そして、あんなに綺麗に笑う彼女を、生物兵器だと認めるしかない無情な現実がいっそ夢ならば良かったのにと、誰もがそう強く願った―――……




* * *



アルファポリスにて、もうひとつ小説UPしています。

『乙女ゲームの主人公に転生してしまったけど、空気になれるように全力を注ごうと思います!!』


興味のある方は、是非是非そちらも読んでみて下さい。宜しくです。

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