表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女なんかじゃありません!  作者: はる乃
本編第二章
21/33

【魔王復活記念祭④】

前半、佳乃と薫の過去話。短め。



『お兄ちゃん……』


『大丈夫だ、佳乃。お兄ちゃんが守ってやるから』



子供の時は、兄さんがいつも私を守ってくれた。私が小学2年生、薫兄さんが小学6年生の時に、私のお母さんと薫兄さんのお父さんが再婚。

私達は兄妹になった。


最初は両親も幸せそうだったのに、それは徐々におかしくなっていって、私が3年生になる頃には、両親は喧嘩ばかりしていた。

父さんはまだ良かった。普段は仕事に行っているし、生活費はちゃんとくれた。その他は何もしてくれなかったけど、何もしてこなかったから。家事は私と兄さんとで分担してやった。

……問題は、お母さんの方だった。


彼女はお酒が入ると人が変わってしまい、私に対して怒鳴り散らしたり、暴力を振るったりした。いくらお酒を止めてと言っても、家に誰も居ない時に飲んでしまうから無駄だった。しかし、兄さんに対しては嫌味を言うだけに留まっていた。彼女の中では、好き勝手していいのは実の子である私だけだったのだろう。


集中的にやられる私を、兄さんはいつも守ってくれた。お母さんは間に兄さんが入ると、少しだけ正気に戻るようで、大体そこで引き下がったから。『私が悪いんじゃない!!』と言いながら。


そんな両親が、何故いつまでも離婚せずに居たのかは分からない。


私が高校生になった時に、そんな最悪の状態の両親は、珍しく一緒に出かけて行って事故に遭い、2人ともそのまま逝ってしまった。



――私は心底安心した。


こんな風に思うのは間違っているのかもしれない。相手がどんな人間だろうと、死んでしまった事に対して安心するだなんて。けれどあの人達が……お母さんが居なくなって、私は初めて息が出来るようになった気がした。

その頃には、兄さんももう就職していたし、私もバイトをしたりして、2人で生活するのに何の支障もなかった。やっと訪れた平穏。まだ時折、悪夢に魘されたりもしたけど、そんな時は兄さんが傍に居てくれたから。



『また怖い夢を見たのか?』


『……ごめ……、兄さん……』


『謝るな。大丈夫、お前はずっとずっと俺が守ってやるから』


『……私、いつも守ってもらってばかり。これからは、1人でも何とか頑張るから』


『何言ってんだ。佳乃、俺はな、俺は、お前が居てくれたから……』



優しい表情、優しい声音。

いつもいつも、惜しみ無い愛情を注いでくれた人。薫兄さんが居なかったら、花咲佳乃は生きていけなかっただろう。


大好き。

薫兄さんが居てくれて、本当に良かった。


なのに―――






「魔物達を一掃したのはお前か?」



……どうして?



「見たところ、普通の人間に見えるが……」



そっちは敵側なんじゃないの?



「ローゼ、本当にコイツがやったのか?」


「……っ!!」




―――なんて冷たい目。



兄さんは、あんな目で私を見たりなんかしない。


だけど……


だけど、分かる。

あの顔も声も、兄さんのもの。

あの人の魂は……



私の大好きな、薫兄さんだ。




* * *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ