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聖女なんかじゃありません!  作者: はる乃
本編第二章
20/33

【魔王復活記念祭③】

今回は少し短め。



ジュレード王国の王宮はとても広い。王族達が住まう宮殿の他に、騎士団の宿舎に鍛練場、魔術師が勤める西塔、大臣達の勤める東塔、使用人達の住居棟、いくつかの庭園に神殿、厩舎等々……他にも様々な施設があるが、第二王子であるリアムが転移の宝玉で移動した先は、魔術師達の勤める西塔だ。


西塔の前に現れたリアムは、塔には入らず、その裏手にある訓練場へ真っ直ぐに向かった。重結界が施された訓練場内部へ入る為には、内部に居る者の許可が必要になる。リアムは訓練場前に置いてある連絡用魔導具へ手をかざして、自身の魔力を注いだ。すると問題なく魔導具が起動し、程なくしてロロエルがそれに応じた。



『リアムか?悪いが、今立て込んでいるのだ。新型魔術の結果が知りたいのだろうが、それは後で教え……』


「ロロ、緊急事態だ!今すぐ魔術師団に出陣を要請する!」


『なんだと?……了解した、すぐに向かおう!』


「ああ、頼んだ!」



こうしてリアムがロロエルに出陣要請をしていた頃、庭園にはローゼが現れ、アーク達が魔物達と対峙していた。


まもなく花が魔物達を一掃してしまうのだが、この時の彼等は知る由もなく、ただ必死に人員と魔導具の準備を急いでいた。



* * *




(―――何だ?)



深い森の奥にある魔族達の居城にて。


魔王――カオルが、自室にあるソファーで横になって寛いでいると、急に胸の内がざわざわとざわめき始めた。

カオルはゆっくりと身体を起こし、周囲に視線を走らせて「誰かいるか」と、不機嫌とも取れるような声で呼び掛ける。

すると、すぐに目の前の次元が歪み、カラトスが現れた。片膝を床について、頭を垂れながら「お呼びですか」とカオルに応じる。



「妙な感じがする。カラトスは何か感じないか?」


「そうですね。確かに何か胸騒ぎが……」



―――2人がそう話している時に、『ソレ』は起きた。



「「?!」」



ジュレード王国の王宮から、王都中に駆け巡った『何か』。その『何か』は魔物達を一瞬で消し去ってしまった。

それは明らかに、今のジュレード王国ではあり得ない事だった。



「馬鹿なっ……!今の腑抜けた人間共にこんな力がある訳ないっ!!」


「……そうなのか。なら、この事態は異常なんだな?」


「はい。……魔王様が封印された後は、魔物達も弱体化し、それに合わせて人間達も徐々に。しかし、先程の力は例え千年前でも……」


「…………」


「カオル様?」



カオルは右手に魔力を集中させ、ぐるりと大きく円を描いた。すると、円の中の時空が歪み、ジュレード王国へと繋がるゲートが出来る。



「ローゼ達の回収に行く。大丈夫だとは思うが、今の馬鹿でかい魔力が気になるからな」


「なっ!か、カオル様自らですか?!蘇ったばかりの御身に、万が一何かあったら……っ!!」



瞬間、カラトスの動きがピシリと固まった。カオルからの殺気に気圧されたからだ。侮っていた訳ではない。魔族であるカラトスは、千年前から魔王の側近を務めていた為、魔王の実力は分かっている。しかし……


千年も封印され、数日前に復活したばかりの魔王が、目覚めてすぐにその力を発揮出来るとは思っていなかったのだ。だが、今目の前で殺気と共に黒い魔力を迸らせる魔王を見て、それが思い違いであったと悟った。



「申し訳ありません、出過ぎた事を言いました。いかなる罰でも」


「……いや、いい。罰もない。だが、次は怒るからな」


「…………はっ。」



怒る、という単語に少しだけ拍子抜けしたカラトスだが、二度と間違いは犯さないと固く心に誓った。


そうしてカオルとカラトスはゲートを潜り、ジュレード王国へと降り立ったのだった。




* * *



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