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聖女なんかじゃありません!  作者: はる乃
本編第二章
18/33

【魔王復活記念祭①】



……何が起きてるの?



「ハナ様!ここは危険です!早くお逃げ下さいっ!!」



押し寄せる魔物の大群。

初めて見るソレは、何故か見覚えがあって。きっとこの身体に残る、リリーの記憶だろう。


騎士団長であるアークが、花を逃がそうと敵を倒していくが、数が多すぎるようだ。次いでクラウスが、避難する為にハナへと手を差し出す。



「ハナ!早くこっちへ!もうすぐロロ達がやって来るから、魔物は魔術師団と騎士団に任せて、ハナは早く避難を!!」



避難?そんなの―――



「必要ないわ」



そう答えた途端、花の身体が光を纏い、ふわりと宙に浮いた。

アークとクラウスが驚愕の表情で言葉を失う。花は虹色の魔力を迸らせながら、まるで歌うように、魔物達へその膨大な魔力を解き放った。




* * *




―――時は少し前に遡る。

ローゼ率いる魔物の大群が、王都へやって来る数刻前。



最初に驚いたのは、侍女のマリーであった。ベッドから起き上がれない花の為に、身支度の手伝いと朝食の準備をと部屋を訪れたマリーは、普通に室内をペタペタと裸足で歩く花を見て目を見開いた。



「せ、聖女様?!動けるようになられたのですか?!」


「マリーさん、おはようございます。はい、もうバッチリ!ご心配をお掛けしました」


「いえ、そんな!ですが、それは良うございました!!皆に知らせて参りますので、もう少々お待ち下さい!」


「はい。あの、私は適当に着替えてますね。ゆっくり報告してきて下さい」


「え?!ですが、それは……」


「こっちが衣装部屋ですよね?大丈夫!シンプルなワンピースとかにするので」


「……承知致しました。お手伝い出来ず、申し訳ありません。すぐに戻りますので!」


「はーい」



そうして、マリーからの報告はすぐに関係者へ知れ渡り、花は朝食の後、王宮にある王子所有の庭園でお茶会をしようと誘われたのだった。



お茶会には、第一王子クラウス、騎士団長アークの他に、第二王子のリアム・ジュレードも来ていた。花の魔力が回復したとの報告を受け、魔術師団副団長であるロロエルもすぐに駆けつけたかったのだが、どうしても外せない用事があった為、お茶会には遅れて参加することになっていた。


お茶会の用意がされたガゼボで、既に席についていた3人は、軽やかな足取りで歩いてくる花を見て瞠目した。

アークやクラウスは魔力が回復した事に、初対面であるリアムは聖女の存在そのものに。



3人は立ち上がり、1番身分の高いクラウスが花の傍へ歩み寄ってにっこりと甘く微笑み、手を差し出した。



(お、おお……エスコートですか。しかも、なんだかんだ言ってクラウス王子ってびっくりする位イケメンだから、こんな風に微笑まれると普通にドキドキしちゃうな)



なんてことを考えながら、花がほんのりと頬を朱に染めてその手を取ると、クラウスは感激したように目を細めた。気のせいか、目尻にキラリと光る雫が見えた気がする。



クラウスに席までエスコートして貰い、花が着席すると、他の3人も席に座った。そして、クラウスがリアムの紹介を始める。



「ハナ、来てくれてありがとう。急な回復に驚いたけれど、元気になったようで良かったよ。それと、弟を紹介させて貰うね。彼はリアム・ジュレード。私の弟で、この王国の第二王子。最近19になったばかりなんだ」



クラウスからの紹介で、花はリアムに視線を移した。クラウスと同じで、綺麗な白銀の髪に、空色の瞳をしている。クラウスはふわりとした髪質でいかにも王子様といった髪型だが、弟のリアムはサラリとしたストレートで前髪は真ん中分け。髪の長さは鎖骨あたりまである。


すっかり青年として出来上がっているが、どことなく幼さを感じて、花はにこりと柔らかく笑った。



「初めまして、花です。宜しくお願いします、リアム殿下」


「此方こそ初めまして、聖女のハナ殿。貴女の婚約者候補となれて光栄だ」


「……え?」


「ぶっ!?ごほっ!げほっ!!リアム、その話はまだ……!」



リアムの爆弾発言に、クラウスが飲んでいた紅茶を吹き出しそうになり、すんでのところで抑えるも、むせて咳き込みながら慌ててリアムの失言を窘める。


花が理解できずに首を傾げた、その時―――



王都に異変が起きた。




* * *



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