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その世界、不可思議につき ~異世界精霊戦闘奇譚~  作者: 銀銅鉄金
ファーストミッション‼
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21

「ああもう! 見てられんわ! 危ないからソフィアさん下がって!」

「ダメですよ! 黒川君を助けるって言ったんですから! 一緒に戦います! 帰るときは一緒ですよ!!」

「とても異世界渡航機を開けるような状況じゃないでしょ! コイツどうにかしないと帰れないんだよっ!」

「わかってますよッ! だから私も一緒に戦うって言ってるじゃないですか!」

「だからそれが危ないって────」

「やかましい。痴話喧嘩はあの世でやれ」

雫の言葉を遮ってシルバーが雫とソフィアの間に突っ込んできた。そのままの勢いで身体を一回転させ、刀を振るう。

「チッ……!」

「ちょ、かかって来いって言ってたのに自分から来るんですか!?」

雫は刀で、ソフィアはヴァルハニーロでシルバーの攻撃を受け流す。

そしてそのままシルバーは駒のように高速回転しながら雫を連続で斬りつける。

「うぉ、うぉ、うぉ、うぉ、うぉ……!」

シルバーの高速回転攻撃に対して刀で受け止めることしか出来ない雫は、ジリジリと後退させられる。

「黒川君!」

ソフィアが、駒のように回転しているシルバーに向かってヴァルハニーロの刃先を突き出す。だが当たる直前にシルバーが回転を止め、飛び退いた。

「おっと危ない危ない。もう少しで串刺しになるところだった」

言っている言葉とは反対に余裕そうな態度をシルバーが取った。

「惜しかったな。もう少しでオレを『殺せる』ところだったぞ?」

「!!」

シルバーが挑発するようにソフィアに言葉をかけた。それを聞いてソフィアがビクッとする。

(く、黒川君を助けようとして出したあの一撃……。当たっていたらこの人は死んでいた……)

そう考えるとソフィアはどうしようもなく不安な感情が沸きあがる。

人を殺す。私が。

どうなるのだろうか。今感じているこの恐怖はこのまま残るのだろうか。その後でも今まで通りの生活が出来るのだろうか。

そんなソフィアの不安感を察知したのかシルバーがニヤリと笑った。

「そんな状態でまともに戦えるのか?」

「ッ!!」

油断していたソフィアにシルバーが高速の突き攻撃を繰り出す。慌ててソフィアは回避するが、間に合わず、左腕をかすめた。

「い、イタッ……!」

痛い。

安全な訓練中では味わうことのなかった明確な痛みをソフィアは感じていた。恐怖という明確な感情がソフィアの次の行動を遅らせる。

「ほら、もう一発」

「うっ……」

再び繰り出されるシルバーの突き。思考回路が鈍っていたソフィアはまたしても回避が遅れてしまう。

そして今度は脇腹をかすめた。

「ううぅ……」

明らかに致命傷ではない傷ではあったが、ソフィアは死ぬかもしれないというほどの痛みを感じていた。恐怖心も膨れ上がった。

「ソフィアさんッ!」

慌てて雫がシルバーに斬りかかる。

「邪魔だ。オレはいまこの小娘と遊んでいる」

シルバーは雫に向けて左腕を突き出した。その構えた左腕から黒炎が噴出し、雫に向かって一直線に飛んで行く。雫は刀で防ごうとするが、相手は実体のない炎。刀をすり抜けて雫に直撃し、あまりの勢いに後ろに吹き飛ばされてしまう。

「ほら小娘。次は首を狙うぞ」

そう言ってシルバーが刀を突き出すために一度腕を引いた。

その時

「……」

「なに……?」

ソフィアがヴァルハニーロをシルバーに向かって勢いよく突き出した。虚を突かれたシルバーは命中するギリギリのところで刀で受け止めた。

「ほう……。やっと本気になったか」

シルバーはそう言ってソフィアの顔を見た。ソフィアは下を向いていて、表情は読み取れない。

「……確かに誰かを殺すことは怖いです。自分がどうなっちゃうのかもわかんないですし。……それに実際に攻撃されるってことがこんなに痛いってことだとは思いませんでした。怖いです。怖いですけど……」

そしてソフィアは顔を上げた。ソフィアの目には明らかな闘志、そして怒りの感情が浮かんでいた。

「なにもしないでただ殺されるだけなら、私は戦います!!」

「……そうか」

そう言うとシルバーは空いている左手をソフィアに向けた。

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