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「そもそも隠し事なんかしてなんか意味あるの、って事よねん」
女子観察は止めたのか、ケインも会話に参加してくる。
「そうだよ。……ソフィアさんじゃないけど、なんにしても今はわかんないことが多過ぎる。その一方でオレたちのことが知られ過ぎてる」
「大人しくあの女の言う事聞くってのか?」
カービーが不満をあらわにしている。
「それしかないだろ。今はなにか行動起こすにしても全部裏目に出そうだし。しばらくは言う通りにしてみよう」
「僕も雫君に賛成だよ。大人しくしてた方がいいと思うな」
「オレっちも~。正直、神霊世界のリアルの規模知っちゃったら大人しくするしかないでしょ」
「オメェらがそう言うなら……。俺も黙っててやるか」
四人はほぼ同じタイミングで頷いた。
そのとき
「すいませ~ん。お待たせしました~」
「ハァ……ハァ……。そ、ソフィアちゃん、急に走らないで……」
両手に紙袋を持って笑顔で駆け寄ってくるソフィアと、その後ろから息を切らしながら付いてきているネスが現れた。
「おぉ……。精霊サマでもあのお転婆の制御は出来なかったか」
「ソフィアさんが羨ましいと思うよ最近」
雫は大きなため息をついた。
◇
「────これってなんなんですか?」
「それはこっちの世界で言うと『飴』みたいなものかな。少し柔らかいらしいが。食べてみるといい」
黒川家にて。
ソフィアはテーブルの上に紙袋の中身を派手にぶちまけていた。ソフィアの向かいの席にマーベルが足を組んで座っており。ソフィアからの質問に答えていた。
「これは何ですか? 見た目はワタアメみたいな……?」
「見た目通りのものだな。……いまさらだが何かわからずに買ったのか……」
「いや~、ネスさんにストップかけられるまで目に入ったもの片っ端からカゴに入れてたんで……。貰ったお金があって助かりました~」
「……使い切るんじゃないよ……」
マーベルは呆れたのかため息をつく。
その一方でリビングのソファに座っている、雫、勝平、カービー、ケイン、美智。こちらも思い思いの格好でくつろいでいた。
「しかし、今日はもう無理だとして残り二日間か。なかなか無茶苦茶なミッションを引き受けたね」
「なかば強制的だったけどな」
雫が疲れた様子でそう言った。
「おいおい、大丈夫かいそんな調子で」
「心配するなら大佐も来てくれよ」
「私は何も言われてないからなぁ。……なによりただ働きなんて御免さ。キミらが貰う報酬を全部私に渡してくれるなら行ってあげてもいいけどね」
「「「「それは無理」」」」
男四人がキッパリと言い切った。
「そら。だったらキミたちで頑張らないと。私も応援くらいはしておくよ」
「ッチ。薄情だなぁ」
そう言われるのがわかっていたのか、憎しみを込めずに雫は舌打ちをした。
◇
???にて
「ミサキ、シサキ。準備をしろ。そろそろ行くぞ」
「かしこまりました、隊長」「は、ハイッ! 準備万端であります、隊長!!」
ピッタリ同じタイミングで二人は返事をした。
「……何度か言ったが、オレは隊長ではない。副長だ。間違えるなよ」
長い銀髪を不機嫌そうに揺らしながらシルバーエースはそう言った。
「申し訳ございません、副長」「す、すいません、たい────副長!! ……間違っちゃった……」
またしても同じタイミングで二人が返事をする。
「……よし。今回はお前たちの研修も兼ねている。短い期間だが、オレたちの活動をよく覚えろよ」
「はい」「ハイッ!!」
シルバーエースは二人の顔を眺めながら何度か頷いた。
「オレは先に転送ゲートに行っている。急がなくていいからしっかり準備してから来い」
「了解しました。急ぎ準備を終わらせます」「あわわ……。お待たせするわけにもいかないし急がないと……」
一方は機械のようなスムーズな動きで、一方は慌てたようにせわしなく身支度を始めた。
(……大丈夫なのかこの二人)
シルバーエースは心配そうな表情を一瞬だけして、元の不機嫌そうな表情に戻った。